SF関係の本の紹介(2025年分)
【★★★:絶対にお勧め、★★:けっこうお勧め、★:読んでみてもいい、☆:勧めません】
●「対怪異アンドロイド開発研究室」饗庭淵著、KADOKAWA、2023年12月、ISBN978-4-04-114369-8、1650円+税
2025/5/5 ★
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●「不機嫌な青春」壁井ユカコ著、集英社、2024年10月、ISBN978-4-08-771882-9、1800円+税
2025/5/1 ★
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●「イヴの末裔たちの明日」松崎有理著、創元SF文庫、2025年3月、ISBN978-4-488-74503-5、860円+税
2025/4/24 ★
5篇を収めた短編集。
「未来への脱獄」は監獄でのタイムマシン作り。「ひとを惹きつけてやまないもの」は、ビールあんごうを解こうとするトレジャーはんたあと、ビール予想を解こうとする天才数学者を描く。表題作はAIの発達で人はベーシックインカムで暮らす未来、主人公はある治験のアルバイトに手を出す。「まごうかたなき」は、人々が貧しくソバを作って暮らす未来、主人公は名を上げるために決死の妖怪退治に名を挙げる。「方舟の座席」、地球規模の災害の中、軌道ステーションに退避できた主人公の決断。
帯には運命の分かれ道での決断を描く、とあるけど3篇は何かに取り憑かれて一生を棒に振る、といった物語。「未来への脱獄」はタイムマシン、「ひとを惹きつけてやまないもの」は数学の予測と暗号、「まごうかたなき」は女性。
「ひとを惹きつけてやまないもの」と「方舟の座席」は、同じ地球規模の出来事を別の場所から描いている。そして、表題作と同じロボットが出てくる。すべて同じ世界線という可能性があるかも。
なぜかクラシックな雰囲気漂う表題作が、平和で好き。そもそも表題作と「未来への脱獄」以外は、宇宙人っぽいものなどが出ては来ても、さほどSF感がない。
●「羊式型人間模擬機」犬怪寅日子著、早川書房、2025年1月、ISBN978-4-15-210394-9、1600円+税
2025/4/23 ☆
語り手が仕えるのは、男性が死の間際にヒツジに変身する一族。大旦那様がヒツジに変わったところから物語が始まる。
ヒツジに変わると、それを屠って、一族の者で食べるという儀式が行われる。その準備を進めつつ、若かりし頃の大旦那様、その同世代、その上の世代のことや、過去に行われた儀式が語られる。
つごう5世代、あるいはそれ以上が、語られる。謎めいていて、象徴的で、印象的な作品だけど、SFとしての満足感は少ない。
●「生命活動として極めて正常」八潮久道著、KADOKAWA、2024年4月、ISBN978-4-04-114791-7、1550円+税
2025/4/17 ★★
7篇収めた短編集。
「バズーガ・セルミラ・ジャクショ」。ネットでの個人の評価システムが統合され、電子決済に紐付けられ、そのシステムを使わないと支払いが出来なくなった世界。いわば、そのシステムが社会を支配する怖さ。みたいな話。国家の力が失われるところも面白い。
表題作は、とある企業が舞台。不条理な犯罪行為が、システムの中で問題なく支障もなく処理されていく。それが日常的っぽくて怖い。
「踊れシンデレラ」。童話のシンデレラを、体育会系のバトルモノとして語り直された感じ?
「老ホの姫」。爺さんばかりの老人ホームでの人間関係、そして、姫を巡る闘い。
「手のかかるロボほど可愛い」。観光地の寂れた博物館に入ったら、あるポンコツロボットに出会った。確かにそれは恥ずかしい。
「追放されるつもりでパーティに入ったのに班長が全然追放してくれない」。班長に見る目があって、適材適所をよく分かってたって話。
「命はダイヤより重い」。ダイヤは命より重い話。電車の運転の奥深さが、少し分かる。
不思議な設定の世界、よく分からない行動動機を持った人々、なのに違和感なく読めて、どの作品も印象的。とくに気に入ったのは、最初の2篇。
●「パンダ・パシフィカ」高山羽根子著、朝日新聞出版、2024年10月、ISBN978-4-02-252016-6、1800円+税
2025/4/13 ★
複数のアルバイトをこなして暮らす主人公。同じように複数の仕事をこなし、頻繁に転職を繰り返す同僚たち。少し親しかった元同僚が、転職の面接でしばらく日本を離れることになり、その間、飼ってる動物の世話を頼まれる。物語は、どことも知れない海外にいる元同僚と、主人公とのメールのやり取りを中心に進んでいく。そのやり取りの中で、なぜか人間社会とジャイアントパンダの関わりの歴史が語られる。
色んな話題が出てくるが、パンダがやたら詳しく語られるのに、それ以外は誰もが知ってる名称が語られず、でも何のことか分かる形で指し示される。そもそも飼育している動物の種名も明らかにされない。そして、謎のあずかりさん。密かに活動しているらしいネットワーク。
生物多様性の保全関連や、外来生物問題に関わる記述が出てくるけど違和感はなかった。
●「推しはまだ生きているか」人間六度著、集英社、2024年10月、ISBN978-4-08-771871-3、2000円+税
2025/4/9 ★
5篇を収めた短編集。
「サステナート314」。限られた空間で、完全なリサイクル社会。そこで生まれた世代は不満を募らせる。宇宙船を目的地ではなく地球に戻そうとする運動が起きる中、せめて親友の死体を外に運び出そうとする。
表題作。文明崩壊後の東京で、ライバーの配信だけを生き甲斐に生きていた主人公。が、突然配信が止まり、推しの元へ向かってみると。
「完全努力主義社会」。その人の能力に応じた努力量で評価される社会。優秀な戦士として生み出された主人公は、報われない侵略者との戦いに駆り出される。
「君のための淘汰」。寄生体の助言と協力のもと、婚活戦線を戦い、ついに勝利。と思ったら。一番楽しく読める。
「福祉兵器309」。生物多様性に乏しい星に植民した人々。あるキッカケで、化け物になってしまうのを狩るのが福祉兵器。微生物いないのに、農業成立しないんじゃ。というのばかり気になった。
暗い結末が多い。なぜそんな状況になったのか、さっぱり解き明かされず、モヤモヤするのも多い。謎解きより、変わった状況を描きたいのかも。
●「ラブ・アセンション」十三不塔著、ハヤカワ文庫JA、2024年11月、ISBN978-4-15-031583-2、980円+税
2025/4/9 ★
出だし、「遊星からの物体X」か「不滅のあなた」かみたいな短いエピソードから始まる。その後は、軌道エレベーターを舞台に繰り広げられる恋愛リアリティーショーが描かれていく。出演する女性12名と女性スタッフ目線で物語は進んでいく。軌道エレベーターを舞台にしてるものの、全然SFっぽくはなく、テレビショーの裏側をえがくドラマのよう。参加者の駆け引き、脱落者のコメント、番組としての演出。最初のアレはどうなったのかな、と思い始めた頃に、隠された秘密が徐々に明らかになっていく。
リアリティーショーに、ミステリ要素とSF要素が混じって楽しく読める。
●「はじまりの青 シンデュアリティ:ルーツ」高島雄哉著、創元SF文庫、2024年3月、ISBN978-4-488-78503-1、760円+税
2025/4/4 ☆
アニメとゲームで展開されるシンギュラリティの前日譚とのこと。
親友同士の4世代の年代記。一人ずつを主人公に、21世紀末から約120年にわたる物語。なぜかみんな狭い世界で、救世主的な働きをするローカルな英雄。
温暖化の進む世界で、科学技術で環境をコントロールしようとして、失敗するところから物語は始まった。らしい。丁寧には語られないし、何がどう暴走したのかも判らないまま。ブルーシストが建物やヒトには影響するのに、生態系は何かしらの残っているらしいのは不思議。その性質を研究してるようでもないし。生物的な存在になれる理屈も不明。
アニメの設定を引きずり、ネタバラシも出来ないからなんだろう。後出しの都合のいい理屈で、よく判らないけど、事態が打開されるのが気持ち悪い。世界の謎解きが一切行われないのも、モヤモヤする。SF好き向けになってないと思う。アニメとゲームにハマった人に向けた小説。
●「時空争奪」小林泰三著、創元SF文庫、2024年4月、ISBN978-4-488-77501-8、800円+税
2025/3/31 ★
6篇を収めた短編集。著者の死去を受けて、傑作選として編まれたという。なぜ、クトゥルーやレンズマンを入れたのかなぁ。時代は感じられるが、今となっては古い読み手しか判らないような。
「予め決定されている明日」、大勢の算盤人が、算盤を用いて、分担して膨大な計算をこなし、ある世界をシミュレーション。そのシミュレーション世界とコンタクトして…。
「空からの風が止む時」、徐々に重力が減少している世界、やがて重力が無くなることを予測して、生き残りのための計画が発動する。そして明らかになる世界の真実。で、終わるのかと思ったら、そんなネタまで投入するとは。
「C市」、科学者を集めて、クトゥルー神と対決するつもりが、失敗する話。クトゥルーが流行った頃があったなぁ、という懐かしさが味わえる。
「時空争奪」、河川争奪ならぬ時空争奪。物語にするために、無理のあるコミュニケーションが生じてると思う。
「完全・犯罪」、タイムマシンを使って完全犯罪を試みたら、とても面倒なことになる。このパターンは新鮮で面白い。
「クラリッサ殺し」。レンズマン・バーチャル・ワールドというバーチャルリアリティ・アミューズメント施設に入ってみたら。著者がレンズマンファンなのはよく分かる。今時の読者はついていけるかなぁ。
●「裏世界ピクニック10 あり得るすべての怪談 」宮澤伊織著、ハヤカワ文庫JA、2025年3月、ISBN978-4-15-031590-0、820円+税
2025/3/29 ★
いつも通り、3篇を収めた短編集、というていだけど、一つの長編。
1篇目、カイダンクラフトのアプローチに、裏世界が反応し始める。2篇目、有能な魔術師さんが登場。裏世界との対峙の仕方が、少し明らかになる。3篇目、久しぶりに2人で裏世界探検。認識の書き換えといった理論武装してるのが初期とは違う。
●「時の果てのフェブラリー」山本弘著、創元SF文庫、2025年1月、ISBN978-4-488-73708-5、1100円+税
2025/3/27 ★
著者の死去を受けて、未完の続編「宇宙の中心のウェンズデイ」を付けて、再販。
徳間デュアル文庫版を読んだ時も、スポット近くの重力異常地帯の描写は面白いけど他がなぁ、という感想だった。今回読んでも同じ。確かに重力異常地帯の描写は面白い。そこはハードSFかも知れないが、ファーストコンタクトシーンはファンタジー。チョムスキー文法云々はガジェットにもなってない。超能力少女の使命感もよく分からない。
●「惑星カザンの桜」林譲治著、創元SF文庫、2025年2月、ISBN978-4-488-61711-0、820円+税
2025/3/17 ★
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●「小説」野崎まど著、講談社、2024年11月、ISBN978-4-06-537326-2、1950円+税
2025/3/15 ★
たぶんSFではない。むしろファンタジー。でも、生命とは何か、宇宙とは何かが判るので、やはりSFなのかも知れない。とか思いながら読み進めると、最後にああSFダァ、となる。
主人公は、小さい頃から小説を読みまくる。家庭で読み、学校で読み、怪しい先生のとこで読む。そして、いつも一緒の友人が一人。
この著者だから期待値が高め。それを裏切ることなく、ドキドキしながらドンドン読める。
●「暗号の子」宮内悠介著、文藝春秋、2024年12月、ISBN978-4-16-391926-3、1700円+税
2025/3/13 ★★
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●「藍を継ぐ海」伊与原新著、新潮社、2024年9月、ISBN978-4-10-336214-2、1600円+税
2025/3/11 ★
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●「一億年のテレスコープ」春暮康一著、早川書房、2024年8月、ISBN978-4-15-210358-1、2200円+税
2025/3/4 ★★
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●「まるで渡り鳥のように」藤井太洋著、東京創元社、2024年11月、ISBN978-4-488-01847-4、1900円+税
2025/2/2 ★★
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