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みなさま,はじめまして.
 この博物館は大阪市立自然史博物館といいます.「自然史」という言葉に耳慣れないものを感じた人もいるかもしれません.いったい何のことでしょう. 自然史というのは英米語でいうナチュラル・ヒストリィ (Natural History)の直訳です.明治時代には博物学と訳されていました.この古い訳語は広く自然界にある,おびただしい事物に関する知識を集積する学問,という意味です.

 今日,科学技術の異常な発達は,それが必ずしも私たちに幸せばかりをもたらすとは限らない,ということがわかってきました.よりよい未来を築くために,とりわけよりよい身近な環境を維持するためには,狭い専攻分野のことしか考えていない専門家にまかせきりにはできません. 市民の一人一人に,自然界の構造や諸関係についての幅広い知識が要求されます.とりわけ,人間の生活が自然と強く結びついていること,その結びつきは人間の歴史とともに変わってきたこと,人間そのものが自然の進化の中で生まれてきたこと,をよく知る必要があります.

 広く自然に関する知識を集めるだけの学問だったナチュラル・ヒストリィを,現代の人類に重要な学問−−人間の自然との関わりを発達史的見地から理解する学問−−として再建しよう,そういう意志のもとに自然史と表現したわけです.

 私たちは,人間との関わりの中での自然発達史を理解していくことこそが,科学を市民のものとし,そして私たち自身の未来を保障する道だと考えています.

 大阪市立自然史博物館はこうした目的でつくられ,展示をはじめとした諸活動もこの線に沿って展開されています.

 このホームページは私たちの博物館のほんの一部を紹介しているものです.博物館の活動や展示にふれるきっかけになれば幸いです.

1986年の「展示解説第10集」の日浦勇氏の文章を一部改編して用いました.