44巻(1998)1月号

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遠くまで飛んだ火山灰

石井陽子


図1 姶良丹沢火山灰(AT).写真に写っているものは全部火山ガラス. 図2 大山倉吉軽石(DKP).白い粒(または透明な粒)は長石,黒くて細長いものは角閃石,うす茶色で透明な粒はしそ輝石.
 火山の噴火の時には,溶岩が流れ出たり,軽石や火山灰が空中に噴き上げられたり,火砕流が流れたりします.写真に写っているのは顕微鏡で見た火山灰です.火山から噴き出したもののうち,細かい粒(2mm以下)のことを火山灰と呼びます.地層に含まれる火山灰を水で洗って顕微鏡で観察すると,きれいな鉱物や火山ガラスが見られます.

 写真1は,およそ2万5千年前に鹿児島の姶良カルデラでおきた噴火の火山灰で,京都の大原で採取したものです.(AT(姶良丹沢)火山灰と呼ばれています.)また写真2の火山灰は,鳥取県の大山火山の約5万年前の噴火でもたらされたもので長野県の野尻湖の近くで採取しました.(DKP(大山倉吉軽石)と呼ばれています.)

 地層を観察していて火山灰層が見つかると,その地層がたまった時代がわかることがあります.大きな噴火があると,火山灰が広い範囲(場合によっては日本全国)に降ります.写真1のAT火山灰は,鹿児島で噴出して,遠くに行くに従って地層の厚さは薄くなりますが,なんと東北地方にまで分布しています.他のいろいろな研究でAT火山灰がたまった時代が約2万5千年前だとわかっているので,AT火山灰が見つかれば,遠くはなれたところの地層どうしを比べることができるのです.(同じことはDKPでも言えますが,AT火山灰ほど広く分布していません.)どちらの火山灰も,地質調査や旧石器の遺跡の発掘をするときにたよりにされます.

(いしい ようこ:当館学芸員)