質問コーナー 過去のやりとり(2000年9-10月)
質問
●2000/10/29 神戸市東灘区の松浦さんのイシガニ?についての質問
●2000/10/27 川崎市のカンザエモンさんの生ゴミから発生するアブについての質問
●2000/10/26 青森県のたくやさんの刺すカメムシについての質問
●2000/10/25 天理市の堀内さんワタにとって綿の役割についての質問
●2000/10/25 奈良女子大学文学部附属小学校5年月組の大山遼さん、尾上文さん、中嶋研人さん、平井裕香さんのメダカの卵の大きさについての質問
●2000/10/25 大阪市阿倍野区のaaaさんの秋に咲くサクラについての質問
●2000/10/25 茨木市の加村隆英さんの謎の植物についての質問
●2000/10/23 奈良市のみちこさんのヤママユガについての質問
●2000/10/22 広島県福山市のKIKKOさんのバラに来るハチについての質問
●2000/10/22 大阪市阿倍野区の難波さんのダイコクコガネについての質問
●2000/10/21 千葉県の山本雅史さん鹿嶺高原の石についての質問
●2000/10/20 奈良県大和高田市の駒沢珠樹さんのアンモナイトの軟体部についての質問
●2000/10/18 神戸市の松浦さんのガの幼虫についての質問
●2000/10/17 屋久島の持原道子さんの鳥の剥製作成法とマムシの卵胎生についての質問
●2000/10/17 大阪市大正区のハッチさんのスズメガの幼虫についての質問
●2000/10/13 大和郡山市の久冨さんのガの幼虫についての質問
●2000/10/6 千葉市のM.Oさんの昆虫の幼虫についての質問
●2000/10/5 和泉市の小田川平さんのカメムシについての質問
●2000/10/2 三重県のカイトさんのカタツムリについての質問
●2000/9/29 尼崎市の菊原有梨さんのガチョウとアヒルの違いについての質問
●2000/9/28 東京都の佐野さんのヒマワリにつく青虫についての質問
●2000/9/25 西宮市の飯田寿祥さんの土から出てきた奇妙な物についての質問
●2000/9/16 柏原市の浜崎章広さんのトンボの標本の作り方についての質問
●2000/9/13 横浜市の渡部さなえさんのアゲハに寄生する虫についての質問
●2000/9/12 大阪市住之江区の蘭丸さんの木と草の違いについての質問
●2000/9/10 大阪のふもとさんの触ると腫れる毛虫についての質問
●2000/9/10 貝塚市の加賀直哲さんのヤマネについての質問
●2000/9/10 岡山県加茂川町の山本 卓さんの枝についた傷についての質問
●2000/9/9 静岡県浜松市の和栗春菜さんのメジロのヒナの飼育についての質問
●2000/9/8 伊丹市の匿名希望さんヘチマに来る昆虫についての質問
●2000/9/5 箕面市の栗園さんのイチョウの葉に擬態したガについての質問
●2000/9/1 奈良市のみちこさんの謎の植物についての質問
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質問への回答
●2000/10/29 神戸市東灘区の松浦さんからの質問
西宮の甲子園干潟の底生動物を探しています。先日写真〈添付)のカニを見つけました。甲羅、つめなどからイシガニかなと思うのですが、自信がありません。同定して戴きたくお願いします。ご多忙のところ厚かましいのですがよろしくお願い致します。
【山西学芸員の答え】
イシガニの最後の脚は遊泳脚で平たいのですが、写真では通常の歩脚の形をしているので、イシガニではありません。甲羅の側縁の鋸歯の数や額角の形状から、最近日本に入ってきて急増しているチチュウカイミドリガニではないかと思われます。
お手元にNature Study誌のバックナンバーがあれば、1997年7月号をご覧ください。見分け方も含めた詳しい記事が載っています。
●2000/10/27
川崎市のカンザエモンさんからの質問
私は、昨秋からベランダに布で覆ったトロ箱を置いて、台所の生ごみを腐葉土で発酵させ、それをまた生ごみの発酵材として用いる、という処理方法を試しております。ご近所の賛同者にもお勧めしていました。
ところがこの夏、我家と賛同者宅一軒でほぼ同時に熟成中の生ごみから、体長2cmくらい、全身が黒いアブのような昆虫が多数羽化するという事態が発生し、この賛同者の夫人などはショック状態で、思わず殺虫剤をスプレーしたそうですが、何度スプレーしてもこの虫が死なないため、トロ箱に近づくことさえ難しいありさまだそうです。我家のトロ箱からは、成虫の他に体長同じく2cm、幅5mmの黒いさなぎも多数見つかりました。
私は現在も、腐葉土による生ごみ処理を続けておりますが、この方法を広めるには今回のアブ事件が最大のネックになりそうなので、アブ防除策の確立を迫られております。今回、同定ともし可能ならば生態について教えていただきたく、お尋ねする次第です。標本を郵送致しますので、よろしくお願いします。
【茂似太の脚注】
メールでのやりとりをして、さっそく標本を送っていただきました。
【松本学芸員の答え】
お送りいただいた虫はアメリカミズアブです。畑のわきの野菜のくずを捨てているようなところでよく発生しています。市街地から山地まで普通にいるアブですので、おそらく生ゴミの匂いに惹かれてやってきた雌が産卵し、発生したものと思われます。
対策としては、すき間をなくして、親が外から卵を産みにこれないようにすることが考えられますが、好気性発酵をさせるということですので、密閉するのは難しいかもしれませんね。発生期が決まっていればその時期だけ手を打つということも可能ですが、この虫は気温の低い冬以外は何度も発生を繰り返しますので、それもむつかしいです。どれほど効果があるのか分かりませんが、ホームセンターなどにあるウジの発生を抑える薬品を使ってみるのも手かもしれません。
個人的にはハエが生ゴミを分解してくれているという、ごく正常な状態であって(ア
メリカミズアブが帰化昆虫なのが気に入らないのですが)、殺虫薬を使うほどのこと
ではないと思います。
ヒトを刺すアブは、アブ科のウシアブの仲間です。アメリカミズアブはこれとは別のグループで、ヒトを刺すことはありませんので心配はいりません。ただし幼虫、蛹、成虫ともに見た目にはインパクトがありますから、不快害虫にはなり得ます。
●2000/10/26
青森県のたくやさんからの質問
山の中で仕事をしていると、手に激痛が走り、見てみると2センチくらいの虫がいました。いろいろ調べてみると、どうやら「ホソハリカメムシ」みたいなんですが、このカメムシは刺したりするんでしょうか?
捕まえて口の部分を見てみると、ゾウムシみたいな太くて折れ曲がった口をしてました。職場の人間に聞いても、誰も刺されたことも無いしそんな話し聞いたことも無いといいます。教えてくださいお願いします。
【松本学芸員の答え】
カメムシの仲間には、サシガメとかクチブトカメムシといった捕食性のものがいます。これらは他の昆虫を捕まえ、鋭い針のような口器を突き刺してで体液を吸い取るという生活を送っています。こういったグループでは身を護るために場合によっては、口器を使うことがあります。指で捕まれるとか、袖口から入ってしまい上から押しつけられるといった場合です。
これらの虫が獲物を捕まえるときには、最初の一刺しで毒液(消化液)を送り込んで獲物を殺してしまうのですが、人が刺され場合には、激痛がはしります。ホソハリカメムシのような体型ということから、おそらくサシガメの仲間ではないかと思います。
ほかのカメムシは主に植物の汁を吸う植食性ですが、ごく稀に腕などにとまった場合に間違って口器を突き刺すことがあります。ただしこちらは激痛というほどのものではありません。
●2000/10/25
天理市の堀内さんからの質問
ワタを栽培して、実と言いますか。実がわれて、まさに不思議なワタを目にして、これがワタなんだと感動もしたのですが、疑問が起こりました。
このワタ(綿)は、人間にとってはいろいろ意味のあるものですが、植物(ワタ)にとっては、どんな意味があるのか。風に飛ばされるには、ちょっと飛びにくそうだし。動物にくっつき虫としてくっつく。それもそうでもないような。
それから、もうひとつ疑問が、開いたあと雨が降ると、カビがきて、たぶん、種もやられてしまうのでは、と思うのです。植物(ワタ)にとって、あのふわふわした。ワタは何の意味があるのですか。
【岡本学芸員の答え】
ワタの綿毛が植物にとってどんな役割を果たすのかという問題は、あまり真剣に考えたことはありませんでした。
リドレイという人の有名な種子散布の本(1930)には、風散布の項に出ています。しかし、栽培ワタの種子を見ると、本当に風散布の役に立つのか、疑問に思われる気持ちは納得できます。仮に、これは栽培化による変化で、野生のものでは毛はもっとまっすぐに伸びているとしても、あのようなヘナヘナの毛では風を利用するのに適しているとは思えません。
van der Pijl (1969) という人の、これも有名な種子散布の教科書があるのですが、これには「ワタ属や Ochroma属の種子の毛の生態に関しては、風による散布と水による散布とどちらが重要であるのかに答えるためには観察が必要である。Stephens
(1966)は浮遊と耐塩性に関する実験を行って、G. darwinii(ガラパゴス固有のワタ属植物)は海流によってガラパゴスに到着したかもしれないが、それより遠い太平洋諸島のワタ属の種については確実ではない、とした。」とあります。
ハワイなど太平洋諸島には、固有のワタ属植物が分布しているところがあります。中には、ハワイのワタのように、毛がなく(毛を失って)水に沈む(ようになった)ものもあるのですが、もとは海流散布によって島にたどり着いたものと考えられそうです。
すべてのワタ属植物の生態を調べたわけではないので、現時点では van der Pijlのように言っておくのが賢明だと思いますが、水流散布の方が有力であると私は思います。裂開した果実から飛び出すのは、風の力によった方が良さそうですが。
ところで、ネコヤナギの種子(いわゆるネコのことではありません)もふわふわした毛に包まれています。種子はワタとは比較にならないほど小さいので風に運ばれますが、水にも運ばれます。水に運ばれた場合には、毛は川岸のいろんなものにひっかかる役目も果たします。川岸に定着して発芽するのにも役立っていると思われます。
●2000/10/25
奈良女子大学文学部附属小学校5年月組の大山遼さん、尾上文さん、中嶋研人さん、平井裕香さんからの質問
私達がやっている理科学習では、「生き物の不思議を探る」をテーマに、今年の5月から3つのグループに分かれ、研究してきました。その中の一つにメダカを研究したグループがあります。
今日そのグループの発表で、一つの疑問がうかんできました。その疑問とは,「メダカの卵は成長するとふくらむのか?」です。
知恵を絞って考えてみたのですが、2つの意見しか出てきませんでした。その上反対の意見がでてきました。1つは、「鶏の卵がふくらまないように、ふくらむことはない」と言う意見です。もう1つは、「子どもができたら人間の子宮がふくらむように、メダカの卵もふくらむのでは?」という意見です。いくら話し合っても結論がでません。
私達では真実をつきとめることが困難なので、データがあれば、教えて下さい。
【波戸岡学芸員の答え】
受精後か未受精かで、答えは変わります。鶏の卵とか、子宮とかが質問の中にあるので、受精後のことだとすると、「卵はふくらみません」というのが答えです。
卵のもとになる細胞は、卵巣内にある卵原細胞というもので、直径が大体0.012〜0.014mmくらいです。これが、体細胞分裂(染色体の数が変わらない、ふつうの分裂)によってどんどんどんどん増えます。その後、この卵原細胞は、細胞内に受精後の卵の発生に必要な栄養を蓄えて、大きくなり卵母細胞となります。排卵直前、直後の”たまご”の大きさは直径1.2mmくらいになっています。受精にそなえて、染色体が半分になる減数分裂は、魚類では(メダカも)排卵前後の時期に起こります。
受精直後に、卵膜と細胞の本体の間に囲卵腔と言うすき間ができますが、卵自体の大きさはほとんどかわりません。以後、受精膜(囲卵腔が出来たあとの卵膜)の中で、発生が進み、成長し、魚の形をした胚(卵内にある生物の本体)は受精膜を破って外に出てきます。これがふ化です。
このように、排卵までは卵は成長するが、排卵、受精後は大きさかわりません。
以下の図書が参考になります。1は学校にはおすすめの本です。
1.メダカ学全書.岩松鷹司著.大学教育出版,1997.ISBN4-88730-287-8 C3045,9975円(税込)
2.メダカの生物学.江上・山上・嶋 編.東京大学出版会.1990.ISBN4-13-060151-2 C3045, 6180円(税込)
●2000/10/25
大阪市阿倍野区のaaaさんからの質問
今日、10/25ですが、この秋にでもサクラの花見ができるところはありませんか?話によれば、日本でそのような特殊なサクラがあり、それは秋に咲くようなことを聞いています。何か情報をお持ちであれば、返信下さい。
【岡本学芸員の答え】
狂い咲きで秋に咲くサクラの木は、いろんな種類でみられますが、それはその株のその年の状態に左右されるもので、毎年みられるものではありません。夏に葉を落とすような出来事があった場合に、秋に花が咲くことが多いと思います。
毎年、秋に咲く桜としては、ジュウガツザクラがあります。10月から12月に咲き、冬の間も少数の開花がみられますが、4月に最も多く開花します。ヒガンザクラ系で小型の花をつけるコヒガンザクラの一品種です。
●2000/10/25 茨木市の加村隆英さんからの質問
大阪府茨木市の追手門学院大学で見なれぬ植物に出会いました。場所は,建物の北側で,直射日光はあまり当たらないところです。数年前に花崗岩の石組みが造られて,ハイビャクシン類が植えられました。問題の植物はそのハイビャクシンの間から生えています。手持ちの図鑑類を調べてみましたが,正体が分かりません。
主な特徴は次のとおりです。
・植物体全体の高さは約45cm
・花は左右相称で幅10mm,花弁は4枚 (または4裂),雄しべは6本
・葉は互生,複葉で小葉は3枚,小葉の長さは最大35mm
・果実は長さ約50mm で,熟すと裂ける
【岡本学芸員の答え】
私にとってはじめてみる植物でしたが、調べてみた結果、Cleome
rutidosperma DC. であろうとの結論に達しました。フウチョウソウ科のクレオメの仲間です。熱帯西アフリカ原産でカリブ海地方に持ち込まれ、今では、東南アジア熱帯でも時に見られる、というような植物のようです。
もしこの種であれば、種子に特徴があります。直径1.5mmぐらいのアンモナイトのような形で黒っぽく、基部に白い付属体があります。
●2000/10/23 奈良市のみちこさんからの質問
窓枠にとまっていた蛾です。名前やそのほかなんでも教えてください。
【金沢学芸員の答え】
これもヤママユガ科でヤママユという種類です。大阪市内(南港)でも記録がありますが、やはり周辺の市町村の低山地に多いガです。
●2000/10/22 広島県福山市のKIKKOさんからの質問
バラを育てています。写真のハチ?を何度も見かけます。長い触覚で葉っぱの表裏を調べている様子。寄生バチかと思うのですが・・・。本、図鑑などで調べてもよくわかりません。本当のところどうなのでしょう??
【松本学芸員の答え】
写真のハチはヒメバチ(科)という寄生バチの仲間で、ヒラタヒメバチというグループの
ものです(細かくいうとPimpla属かApechthis属のどちらかです)。このグループは主にチョウやガの幼虫あるいは蛹に卵を産みこみます。
バラの葉に何度もやってくるということですが、この理由はいくつか考えられます。まず、このハチは寄生バチなので寄主(産卵する対象)を探していることが考えられます。この仲間のハチの♀は寄主のいそうなところ、つまり葉っぱの裏や巻いたところ、枝先、木の幹のくぼみ、落ち葉の間などを歩き回って幼虫や蛹を探します。よく見ると触角を盛んにふるわせて寄主の手がかりを探しているのが分かります。ただ写真を見るとこの個体は♂なので、寄主を探しているわけではなさそうです(♀は腹部の末端に腹部の半分程度の長さの産卵管を持っています)。
♂がしばしば見られるのは、エサを摂りにきていることが原因と考えられます(もちろん♀も集まってきます)。このグループのハチは野外では主にアブラムシやキジラミなどの排出物(甘露)に集まって、これをなめとっています。ジュースや砂糖水のようなものが葉にかかっていても同様で、いろいろなハチが誘引されます。ご自宅のバラはそういう状況ではないでしょうか?
他にも♀が羽化した(する直前)で、それに誘引されているということも考えられます。
●2000/10/22 大阪市阿倍野区の難波さんからの質問
この写真のカブトムシのような昆虫ですが、何というものでしょうか。子供向けの昆虫図鑑が手元にありますので調べてみましたが、これに似たものがなく、はっきりとはわかりません。ダイコクコガネというものが一番似ていると思うのですが、胸のツノがこんなには突き出していないようです。
【初宿学芸員の答え】
ダイコクコガネの仲間で間違いないです。いくつか種類があって、それ以上ははっきりしませんが、上翅のスジの感じからミヤマダイコクコガネという種類ではないか、という感じがします。カブトムシと同じく、オスにだけ長い角があり、その長さは個体によって様々です。
●2000/10/21 千葉県の山本雅史さんからの質問
息子が長野県鹿嶺高原にキャンプにいったときに拾ってきた石です。表面に直径1mm以下の粒状の黒い点々がついており、なんとなく渦巻き状になっているようにも見えます。生物(卵)ではないとおもいますが、気味が悪いです。これは何でしょう?
【川端学芸員の答え】
写真を見ただけでは、まったく答えられません。
地質図などから判断すると、鹿嶺高原(上伊那郡長谷村非持)自体は三波川帯の結晶片岩という岩石からできていて、化石が含まれていることはまずありません。しかし高原の東側の川沿いには、戸台層という白亜紀の化石を含んでいる地層がみられます。どのあたりで拾ったかということで、写真に写っている岩石が何かということも変わってきます。
もう少し写真が鮮明で、対象物がきちんと撮影されていれば何かということが少しはわかるかとは思うのですが、送られた不鮮明な写真ではどうしようもありません。あえて言えば、写真で見る限りは岩石は結晶片岩とは違い、戸台層の砂岩の可能性の方が高そうです。実物を見てみないことには、それ以上はわかりません。
●2000/10/20 奈良県大和高田市の駒沢珠樹さんからの質問
アンモナイトの化石を見ていてよく思うのですが、軟体部に関して、何か解かっている情報は無いのでしょうか?軟体部が化石に残りにくい事は私にも想像がつきますが、バージェス頁岩のような例もある事ですから。もしかして、何か情報があれば、文献等をご指南願います。
【川端学芸員の答え】
お書きになってるように、生物の軟体部は通常は化石としては残りにくく、多くの場合殻の部分だけが化石として保存されます。これは、生物が死んだあと堆積物(土砂など)に埋められるまでや、埋められてからも腐肉を食べる動物やバクテリアなどの様々なレベルの分解者によって軟体部はほとんどが分解されてしまうからです。わずかに残っていたとしても、化石になる過程の続成作用によって化学的に分解されてしまいます。そのため。軟体部が化石として保存されるのはいろいろな条件と偶然が重なった結果で、非常に貴重なものです。バージェス頁岩はまさにそのような希有な例の一つであって、大変貴重な情報を私たちに残してくれています.
アンモナイトの軟体部については、同じ頭足類のなかまで現生のオウムガイの体制を参考にして描かれています。バージェス頁岩に含まれている化石のように軟体部の様子が調べられるような化石はほとんど見つかっていません。
わずかですが、化石の保存状態が非常に良好なことでしられているドイツのゾルンホーフェンやホルツマーデン産のジュラ紀のもので、外套膜や腕の痕が産し、4〜5対の腕に鈎、あるいは吸盤と思われるものが付着しているのが見つかっています。またゾルンホーフェンでは地層に残されたアンモナイトの足のずり痕から、触腕の数は10本以上と考えられています。そのほかに、消化管やえらと考えられる部分が保存された化石もしられています。
軟体部の残る化石については、築地書館 古生物各論 第3巻無脊椎動物化石・下によります。復元図としては、川島書店 古生態図集・海の無脊椎動物 福田芳生著 も参考になると思います。
●2000/10/18 神戸市の松浦さんからの質問
小さな庭を耕して野菜などを植え楽しんでいます。ところがこの虫が白菜、アオシソ、大根、サツマイモにつきます。芽生えを狙いますからなすすべもありません。 せめて名前を知りたいと思い図鑑を見ますが、幼虫が載っていません。厚かましいお願いですが、名前を教えていただきたいのです。
【金沢学芸員の答え】
写真から判断すると、セスジヒトリ(ヒトリガ科)の幼虫です。大阪市周辺と高松市周辺で記録がありますが、神戸市にもいるはずです。多食性で多くの種類の草本を食べますから、野菜も食べるでしょう。
●2000/10/17
屋久島の持原道子さんからの質問
私の会社には、ときおり動物の死体が持ち込まれます。先日は死んだアオゲラを頂き、剥製にしようと作業中です。哺乳類は、皮を剥ぎ食塩とミョウバンで処理し毛皮標本(?)にはしたことがあります。鳥は扱ったことがありません。もうひとつ、マムシが冷凍保存してあります。鳥の標本作成方法とヘビの保存方法を教えていただけないでしょうか?
また、マムシの生態、特に卵胎生について知りたいのですがご存知でしょうか?
【和田学芸員の答え】
鳥の仮剥製の作成については、
◎「小鳥の剥製の作り方」本田晋著、ニューサイエンス社
を参照していただくのがいいと思います。皮を剥いで、防腐処理をして乾燥させるのは哺乳類と同じですが、いくつか違いがあります。鳥の羽は完全にぬらしてしまうと、元に戻しにくいので、洗いません。したがって、剥皮の時には、羽根を汚さないように注意します。
両生爬虫類は、10%ホルマリンで固定した後、70%エチルアルコールで保存します。
マムシはご指摘の通り、卵胎生です。卵が子宮内で孵って、幼体が産まれます。日本産の爬虫類の中では、他にヒメハブとコモチカナヘビが卵胎生です。
ただし、一口に卵胎生と言っても、いろいろなタイプが含まれます。マムシは、卵ができて、それが腹の中で孵ります。ところが、一応卵殻は作られるものの、それが退化して、胎盤のようなものを形成する種もあります。こうなると、胎生との境目が曖昧になります。そのため、卵胎生と言う言葉は使わずに、卵ではなく幼体を産む場合をすべて、胎生と言うこともあります。図鑑によっては、マムシは胎生と書いてあると思います。
●2000/10/17
大阪市大正区のハッチさんからの質問
先日ベランダで紫色の芋虫が歩いているのを発見しました。表面は紫色で光沢があり、おしりに角が1本ついていました。体長は5-6cm、直径は1-1.5cm位で日なたから日陰に移動して動かなくなりました。その後、ライラックの植木鉢に戻しました。必要なら公園に持っていこうと思います。下手ですが絵を書きましたので添付いたします。おわかりになられましたら、何の幼虫かお教え下さいます様、宜しくお願い致します。
【金沢学芸員の答え】
お尻の角の存在からスズメガ類の幼虫とわかりますが、図からは幼虫の種類はわかりません。手がかりとしては、どの種類の植物の葉を食べていたかが重要です。ライラックであれば、モクセイ科なので、サザナミスズメ、シモフリスズメが有名ですが、体色などの特徴が合いません。いずれにしろ、ほとんどのスズメガ類の幼虫は、老熟すると土中で蛹になります。
●2000/10/13
大和郡山市の久冨さんからの質問
学校の中庭にクスノキがあります。そこで、幼虫を見つけました。ところが、何の幼虫か分からないのです。教えて頂けないでしょうか。クスノキということから、アオスジアゲハではないかと、推測しています。
もう一つ教えていただきたいことがあります。幼虫や卵についてカラー写真で詳しく説明してあるような図鑑はあるのでしょうか。アオスジアゲハも1齢幼虫と5齢幼虫では、かなり違いがあり、成長の様子がよく分かる図鑑がほしいなあと、思っています。もし卵や幼虫などにも詳しい図鑑事典がありましたら、教えて下さい。
【金沢学芸員の答え】
ヤママユガ科のシンジュサンの幼虫です。ニガキ科のシンジュ、ニガキ、ミカン科のキハダを食べている幼虫がよく見つかりますが、クスノキの記録もあります。
蝶の幼虫の若齢と終齢、卵、蛹、成虫の各写真が掲載されている図鑑としては、保育社の原色日本蝶類生態図鑑(1〜4)が最も手頃でしょう。蛾は種類が多いので、最近のものでは、講談社の日本産蛾類生態図鑑しかなく、掲載されている写真は十分ではありません。
●2000/10/6
千葉市のM.Oさんからの質問
先日家の中で昆虫の幼虫らしきものが死んでいました。体長1cm程度で、茶色い小さい頭があり、体は白く、脚(?)らしきものがたくさんありました。その脚らしきものからは、数本づつ毛が生えていました。なんの幼虫の可能性があるのでしょうか?。
また、幼虫の鑑別点などについても、アドバイスをお願いいたします。
【金沢学芸員の答え】
これだけの情報では、蝶・蛾かハバチの幼虫らしいとしかわかりません。蛾の幼虫の可能性が高いでしょう。
種類が多く、見つかる可能性が高いのは、蝶・蛾、甲虫、ハチ、ハエの4グループです。それらを見分けるためには、まず幼虫の脚数を数えます。例外がありますが、脚が全くなければハエです。カブトムシのように、胸部だけに3対あれば甲虫です。3対(胸部)+4対(腹部)+1対(尾端)があれば蝶・蛾で、3対(胸部)+6対以上(腹部)であれば、ハバチの幼虫です。これで大まかに見分けられますが、シャクトリムシ類(胸部3対+腹部2対)のように例外があります。
●2000/10/5
和泉市の小田川平さんからの質問
よく家のベランダにカメムシが飛んできます。なぜカメムシは臭いのですか?日本全国に住んでいますか?海外ではどんなカメムシの仲間がいますか?カメムシを飼うにはどんな餌をあげればいいのですか?白菜、キャベツ、レタスは食べますか?飼うと臭くなくなりますか?
【金沢学芸員の答え】
ベランダによく飛んでくるカメムシは、マルカメムシという種類だと思います。つかむとくさいにおいを出すところをみると、やはりくさいのは外敵からのがれるためでしょう。でもあまりくさくないカメムシもいます。
マルカメムシは日本全国に生息しています。クズなどのマメ科植物の茎などで汁を吸っています。マルカメムシは飼ってもくさいでしょう。
海外にもたくさんカメムシ類がいます。多すぎて紹介しきれないくらいです。
●2000/10/2
三重県のカイトさんからの質問
今日、2才になる息子がカタツムリを触って遊んでいました。それから、その手で指しゃぶりをしてしまいましたが大丈夫でしょうか?
近所の奥さんから、カタツムリは菌を持っており、その菌は死に至るぐらい恐ろしいと聞いて心配しています。
【山西学芸員の答え】
菌ではなく「広東住血線虫」の感染による死亡例が今年、沖縄で発生しています。カタツムリはアフリカマイマイです。線虫は、ヒトに寄生する回虫のなかまです。
一般に、野生の生きものには何が付いているかわからないので、素手で触った後は、よく洗うことが必要です。その習慣づけができていない幼児に触らせるのは危険です。
●2000/9/29
尼崎市の菊原有梨さんからの質問
私は今、小学5年生で、英語を習っていて、『ガチョウのペチュニア』と言うおしばいをやっています。それで、今日、先生や、友達が「ガチョウって、アヒルと同じなの?」と言いだすの
で、みんな、ウーンと悩んでしまいました。それでお願いです。アヒルとガチョウのちがいを教えてください。英語の友達もその答えを待っています。どうかお願いします。
【和田学芸員の答え】
ふつうのガチョウは、ハイイロガンというガンの一種を家禽化したものです。またシナガチョウは、サカツラガンというこれまたガンの一種を家禽化したものです。いずれにせよガンを家禽化したのがガチョウです。これに対してアヒルは、マガモを家禽化したものです。英語なら、ガチョウはグース(goose)で、アヒルがダック(duck)になります。
というわけで、ガチョウとアヒルは、違います。分類学的に言えば、どちらもカモ目カモ科の鳥ですが、亜科のレベルで違っています。
●2000/9/28
東京都の佐野さんからの質問
先日、ひとから貰った花束の中のヒマワリの花の裏に、2~3cm程のアオムシが1匹くっついていることに気がつきました。数日後花がしおれてきたので、新しいヒマワリを買ってきてそちらに移すと、気に入ってくれたのか、黄色い花びらや中の茶色い花の部分を交互にモリモリ食べ
始めました。そして大量のフンを残し、茶色い花の中にまる2日かけてもぐっていきました。かわいい喋々になるのを楽しみにしていたのに、今ではすっかり姿が見えなくなってしまいました。いったいどういうことでしょうか。春まで出てこないつもりなのでしょうか。ヒマワリが枯れてしまったら、どうしてあげたらいいのでしょう???
【金沢学芸員の答え】
これらの情報だけでは、種類がわからないのですが、少し推定してみたいと思います。ヒマワリだけを食べるアオムシの話はあまり聞いたことがありません。しかし、ヒマワリも食べる可能性があるアオムシの筆頭は、ヨトウガの幼虫です。
ヨトウガの幼虫(ヨトウムシ)は、野菜の有名な害虫で、野菜はなんでも食べ、タバコなどの特用作物、エゾギクなどの多くの花も食べます。昼間は株元や地中にかくれ、夜間に茎、葉、花の上にのぼって暴食します。花の裏にいたのが昼間で、もりもり食べたのが夜であれば、合うような気がします。
ヨトウムシは約1月で土中にもぐって蛹になります。土を入れていなければ、それに似た茶色の花の中にもぐってもおかしくありません。ヨトウムシであれば、羽化するのは9〜10月ですから、これから成虫が出てくるかもしれません。蛹になっていれば、ヒマワリが枯れても大丈夫です。そのヒマワリをポリ袋か、虫かごに入れて、成虫が羽化するのを待ちましょう。成虫が羽化したら、よく観察して、図鑑でヨトウガの成虫の写真と比較すれば、種名がわかります。
越冬蛹でも、室内においておけば、暖房の影響で春になったと勘違いして1〜2月に羽化します。
●2000/9/25 西宮市の飯田寿祥さんからの質問
この度、ベランダの園芸の土の中から今までに見た事もない奇妙なものが出てきて、それが何なのか全く見当がつきません。最初はありふれた小石かと思い、次には鳥の卵の化石かとも思いまたドングリの磨耗したものかとも思いました。
手にとって振ってみると、中でカタコトと音のするものがあります。水に浮かべて見ると浮きます。但し比重は可成り重くやっと浮いている感じです。外殻には年輪状のうすい縞模様が見えます。また、細長い方の一端には芽が出てきそうな模様の部分があって僅かに脹らんでいるようです。全体の形は偏楕円体ですが、側面の一方にのみ僅かな窪みがあります。また上と下では僅かに色相が異なります。
長い間生きて来ましたがこんな不思議で奇妙な物体には始めて出会いました。もし何か判れば教えて頂けるでしょうか。
【岡本学芸員の答え】
記載・図等から、次の2種のうちのどちらかであることは。確かであろうと思います。
ハスノミカズラ(Caesalpinia globulorum)
シロツブ(Caesalpinia bonduc)
どちらもマメ科ジャケツイバラ属の植物で、熱帯に広く分布しています。琉球列島には分布しています。海岸近くに生える大型のつる植物で、種子は莢に入った状態あるいは裸の状態で海流散布されるものと思われます。記載等を参照すると、シロツブの可能性が高いような気がします。
このような植物の種子が、どのような経路で園芸の土にまぎれこんだのか、ちょっと分かりません。
●2000/9/16 柏原市の浜崎章広さんからの質問
コヤマトンボを捕まえました。標本を作りたいのですが、作り方がわかりません。専用の「はり」が必要だと聞きました。標本の簡単な作り方を教えて下さい。
【金沢学芸員の答え】
トンボの標本は、わりと簡単に作成できます。柔らかいうちに昆虫針(なければ、まち針でもOK)を胸部の横に刺して、発砲スチロールの刺します。ハネをとめ紙(文房具屋さんで硫酸紙を買って,三角紙やとめ紙を作っておく)でおさえて、まち針でとめます。虫がつかないように、防虫剤の入ったタンスや書棚の中で乾燥したら、採集ラベル(どこで、いつ、誰が採ったか書いた紙)をつけて、標本箱に保存します。
きれいに展翅したいのであれば、胸部の背中側から昆虫針を刺して、溝を掘った発砲スチロールに刺して、チョウと同じように展翅します。展翅板を使ってもいいです。
この方法では、乾燥して古くなると、腹部が落下することがあります。それを防止するために、柔らかいうちに、乾燥したイネ科植物の茎を口から腹部の先端近くまで挿入しておく場合もあります。近頃では、かたいテグスを使うようです。
標本が多くなると、大きな標本箱が必要になりますから、多くのトンボ収集家は、チャック付きポリ袋を使っています。トンボが柔らかい内に、厚紙(裏に、どこで、いつ、誰が採ったか書いておく)を入れたチャック付きポリ袋の中に入れておきます。乾燥したら、チャックをしめて、菓子箱の中に縦に入れて、保存します。チャック付きポリ袋の中に乾燥剤、箱の中に防虫剤を入れておけば完璧です。
●2000/9/13 横浜市の渡部さなえさんからの質問
先月から、アゲハの幼虫を2匹飼いだしました。1匹がようやくサナギになり、一安心していました。昨日ふと見るとサナギから、体液らしき透明の汁が出ていて、虫ケースの下に、体長1.5〜2cm位の白いうじ虫らしきものが2匹這い回っていました。サナギの色は黒ずんで、もう死んでいるようです。これはいったい何の幼虫なのでしょうか?
【松本学芸員の答え】
おそらくヤドリバエという寄生性のハエの幼虫だと思います。これだけでは、種まではわかりませんが、アゲハチョウに寄生した記録のあるヤドリバエには、ブランコヤドリバエExorista
japonica (Townsend) があります。ヤドリバエであれば、しばらくすると体が固くなって囲蛹と呼ばれる、小豆のような蛹になるはずです。寄生を受けた幼虫や蛹は内部を食べられていますので、羽化して成虫になることはまずないでしょう。
寄生バエの寄生は、幼虫が比較的小さい頃に始まるので、蛹になってから取り除いたりすることはできません。
●2000/9/12 大阪市住之江区の蘭丸さんからの質問
先日、知人と雑談中「木と草とを分類する時の基準は何か」についての話になりましたが、よく解りませんでした。あまりに基本的な質問で恐縮ですが、御教授いただければさいわいです。
【岡本学芸員の答え】
木と草を区別するのは難しく、定義しようとする人はみんな苦労しています。岩波「生物学辞典」第3版の定義を挙げてみます。
・草本:木部があまり発達しない草質または多肉質の茎をもち、地上部は多くは1年で枯れる植物体をいう。しかし地下部が発達して二年生・多年生のものや常緑葉のものもある。木本の対語。
・木本:茎および根において肥大成長により多量の木部を形成し、その細胞壁は多く木化して強固になっている植物。草本の対語。地上部は多年生で、高木と低木に分かれる。
木のキーワードとしては、「肥大成長により(多量の)木部を形成する」「細胞壁が木化して強固」「地上部は多年生」などがあげられるでしょう。木本は形成層(単子葉類は除き)の活動により、内側に木部を、外側に師部をつくり、年々肥大成長していきます。木部の細胞壁は木化(リグニンという物質を蓄積)し、植物体を支える強固な体をつくっていきます。当然、地上部は永く生き続けます。
しかし、草本も肥大成長しないわけではありません。形成層による肥大成長をはじめながらも、冬になって枯れてしまう、というのが多くの草本の現実です。細胞壁もまったく木化しないわけではありません。草本は地上部が1年で枯れるということについても、暖かい地域に行けば様子が変わってきます。日本では冬に枯れてしまう同じ仲間の植物が、何年も枯れずに残り、木のような草のような姿で立っている、ということがよく見られます。というようなわけで、木か草かというのは、程度の問題ともいえます。マメ科やバラ科などの大きな科は木も草も含んでおり、系統的にもそれほど本質的な区別ではありません。
●2000/9/10 大阪のふもとさんからの質問
昨日、公園を散歩して帰宅後、頭に変な虫がついていました。今朝、起きますとなんと両腕にじんま疹が発生。救急病院にいきましたが、結局原因わからずのじんま疹との診断。
その昆虫の外形は毛虫そっくりですが、色が毛の先は緑ですが内側は黄色でした。まだハレひかないため、毒性がある昆虫か教えていただきたいのですが。
【金沢学芸員の答え】
蛾は種類が多いですから、毛虫そっくりで、毛の先が緑で内側は黄色というだけでは、種類がわかりません。
さわったことではれる毛虫の代表はチャドクガ、キドクガ、ドクガの幼虫ですが、特徴があいません。大阪市内に多いヒロヘリアオイラガの幼虫は、他のイラガの幼虫と同様に、さわると激痛がします。
●2000/9/10 貝塚市の加賀直哲さんからの質問
ニホンヤマネの体長、体重と天然記念物に指定された訳を教えて下さい。
【和田学芸員の答え】
ニホンヤマネの大きさは、頭胴長68-84mm、尾長44-54mm。体重は、夏は14-20gだが、冬眠前には34-40gになるといいます。
ニホンヤマネは、哺乳類のなかで、齧歯目(現在はネズミ目ともいう)ヤマネ科ヤマネ属(Glirulus)に属します。ヤマネ科には16種含まれ、アフリカとユーラシア大陸に分布します。ヤマネ属(Glirulus)には、ニホンヤマネだけが含まれ、日本固有種です。日本に固有の分類学的に珍しい動物なので天然記念物に選ばれたのだと思います。
●2000/9/10 岡山県加茂川町の山本 卓さんからの質問
先日、山の中を歩いておりましたところ、下の写真のような木の傷を見つけました。彫刻刀の丸刀で削ったような傷が、1m程度にわたって、細い小枝についていました。高さは地面から50cmぐらいから上に1mぐらい続いていたと思います。
昆虫や鳥のしたものなのか、あるいは人為的なものなのかすらも分かりません。大きさは指と比べていただければ分かると思います。自然の生物にこのような傷をつけるものがあるのかどうか教えていただければ嬉しく思います。
【樽野学芸員の答え】
傷の幅から、リスかウサギがかじった跡のように思います。傷つけられていた枝の地上からの高さを考えると、リスの可能性が高いと思います。
●2000/9/9 静岡県浜松市の和栗春菜さんからの質問
今年の五月に近所の方が、ヒナを拾ったのを引き取りました。とりあえずクモやバッタをやったり ビスケットや蜂蜜で育ててました。今は九官鳥用のすり餌を食べさせてます、でも足が萎えちゃってるようなんです。ひざで歩く事はできるようなんですが、ゆびを自分で開けないので
いつも親指を握っているからなのか 親指も変形しているようで親指の爪がUの字状態で切るのが大変なんです。あと、羽根もなかなか 生えそろわないんです、何か栄養が足りないのでしょうか?
育てていくうちに目のまわりが白くなり、メジロかな?と軽く考えてました。ところが先日ニュースでメジロの密猟について知り、ネットで調べた所、無断で飼ってはいけない鳥だと知りました。これからどうすればいいのでしょうか?
【和田学芸員の答え】
拾われたのがメジロだと仮定して返事します。
市街地近くで繁殖する鳥の内、ヒヨドリ、メジロ、スズメなどは、ほとんど飛べない内にヒナが巣立ちします。地上近くを無様に移動して、親鳥のあとをついていき、餌をもらいます。この期間は、地上に降りていることも多く、人が近づくと親鳥は逃げてしまいますので、ヒナが落ちているように見えます。そして、人が簡単に捕まえることができます。こうした形で、親からちゃんと世話をされているのに、人間に”拾われて”しまうケースが多発してしまいます。人間は善意なのですが、これは鳥にとっては誘拐と同じです。もし鳥のヒナが落ちているように見えても、怪我をしていない限りは、拾わないで、そっとしておいて欲しいです。今回の質問の鳥についても、このような”誘拐”であった公算が高いと思います。この次から、もし知り合いが鳥のヒナを拾っても、まず元の場所へ返すようにしてください。
メジロのような昆虫食のヒナを育てる時は、メジロやウグイス用のすり餌やミールワームを主に用います。また眼や脚が正常に発達するためには、ビタミン剤も必要とされます。この鳥の場合は、ビタミンなどが不足したために脚が正常に発達しなかったのではないかと思います。羽根が生えそろわない理由はよくわかりません。よほど栄養条件が悪かったのでしょうか。
いずれにせよ、このような状態での野生復帰は無理だと思います。放すのは簡単ですが、すぐに死ぬでしょう。したがって、少しでも長生きさせたければ、死ぬまで飼うしかありません。
怪我した鳥を保護することは、緊急避難的な措置として、とくに許可がなくても問題にはされませんが、長期間にわたって飼育するには許可が必要です。さいわいメジロは、一家庭に1羽までは、都道府県知事の許可があれば飼育できるはずです。入手からの経過を説明して、許可申請をすればいいと思います。くわしくは静岡県の担当部署にお尋ね下さい。
●2000/9/8 伊丹市の匿名希望さんからの質問
へちまに来る昆虫は、どんな昆虫たちがいるか、教えてください。
【金沢学芸員の答え】
ヘチマはウリに近い仲間なので、ウリにつく虫はたいていヘチマにもつきます。ウリキンウワバ(ガの仲間,葉を食べる)が有名ですが、ワタヘリクロノメイガ(葉を食べる)もヘチマにつきます。ウリを加害するカブラヤガ(苗を根本から食い切る)、ウリハムシ(甲虫の仲間、葉を食べる)、ネギアザミウマ(葉に寄生する)、ミドリメクラガメ類(カメムシの仲間、吸汁する)、アブラムシ類(吸汁する)もヘチマにつくはずです。また、野菜類の共通の害虫であるヨトウガ(葉を食べる)、ハスモンヨトウ(ガの仲間,葉を食べる)もヘチマを加害するでしょう。
ヘチマに来る昆虫を調べるのなら、ヘチマを植えて、そのヘチマに来る虫の行動を観察し、捕まえて標本を作って、自分で名前を調べたり、博物館できいたりする方が確実で、ずっと勉強になると思います。そういう努力をしましょう。
●2000/9/5 箕面市の栗園さんからの質問
8月29日、万博テニスコート側の銀杏並木の下の地面に銀杏の葉に良く似た蛾を見ました。
銀杏の小葉に酷似しており、最初見つけた人は動くその姿を見て、銀杏の葉を蟻かなにかが引きずっているのかと思ったそうです。その場は、これは銀杏の葉の擬態であり、私どもは誰も知らなかったけど、少し詳しい人に聞けばすぐ分かるだろうという感じでそのままにしてしまいました。後日、昆虫などに詳しい方がたに質問しても「その様なものはいないはずだ」とか「似ていると思い込んだだけでは」とかいわれました。銀杏の葉の擬態とされている蛾はいないのでしょうか。
【金沢学芸員の答え】
「銀杏の葉に擬態した蛾」の話は残念ながら聞いたことがありません。ハネ全体が緑色ということから、シャクガ科のアオシャク類の可能性があります。アオシャク類は種類が多く、実物がないと種類を特定することはできません。
●2000/9/1 奈良市のみちこさんからの質問
植物の名前を教えてください。5月の終わり頃 写しました。
【岡本学芸員の答え】
写真がもう一つ鮮明でないのですが、クロバナロウバイだと思います。アメリカ原産のロウバイ科の植物です。特徴を確認してください。
・葉は対生、ロウバイの葉と大変よく似ている。
・花は枝先につき、紫褐色で、多数のガク片(あるいは花弁)のようなものが螺旋状に配列している。
・雄しべの先端に白い突起物があり、雌しべは壺状になった花托に包まれている。
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