質問コーナー 過去のやりとり(1999年10月-12月)
質問
●1999/12/23 東京都大田区の加納哲哉さんのゾウについての質問
●1999/12/18 京都府の川本さんのハマグリの寿命についての質問
●1999/12/14 東京都葛飾区の瀬戸知子さんの人間の進化についての質問
●1999/12/5 東京都の柴田義和さんのダイオウイカについての質問
●1999/11/27 岡山市のみぃちゃんの姉さんのクワガタムシについての質問
●1999/11/25 大阪狭山市立北小学校1年生さんの謎のガの幼虫についての質問
●1999/11/24 貝塚市のHNさんのゴキブリについての質問
●1999/11/18 枚方市のかずえさんの水晶の採取地についての質問
●1999/11/10 大阪市のたかやまさんのミミズの鳴き声についての質問
●1999/11/9 和歌山県美里町の新田英美さんの大腸菌についての質問
●1999/11/9 大阪市の匿名希望さんのナメクジについての質問
●1999/11/8 長野市のK.Nさんのマダラカマドウマについての質問
●1999/11/8 長野県の辰巳浩太さんのヘビの脱皮についての質問
●1999/11/1 札幌市のなおさんのプラナリアについての質問
●1999/10/29 屋久島の小原比呂志さんのハリガネムシについての質問
●1999/10/25 神戸市のT.K.さんのブタクサハムシについての質問
●1999/10/24 尼崎市の長谷川納さんのドジョウの本についての質問
●1999/10/23 松原市の泰地泉帆さんの西除川のサギについての質問
●1999/10/19 千葉県の安達まゆみさんと長谷川裕子さんの蚊についての質問
●1999/10/15 大阪の斎藤さんの謎の虫についての質問
●1999/10/15 山口県のKFさんの屋根裏のイタチについての質問
●1999/10/6 神戸市の河田弘樹さんの巨大ゲジゲジについての質問
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質問への回答
●1999/12/23 東京都大田区の加納哲哉さんからの質問
ずいぶん前ですがテレビで、ケニアのエルゴン山という山の麓に住むゾウが、土を食べるという習性があるというのを見ました。理由はその土地に塩分などのミネラルが少ないために、補給しているのだとか。少し興味を持ったので詳しく知りたいと思い調べていますが、どこから手を付けていいのやら分かりません。以下のことをご教示下さい。
1:そのゾウは、塩分を補給していると説明されていましたが、塩辛いという味覚を感じているのでしょうか。動物には味覚があるのでしょうか。
2:他の動物でもそのような現象が報告されていますか。
3:もっと詳しく知りたいのですが、ケニアエルゴン山のゾウに関して(あるいは他の動物での類例に関しても)、その生態を記録したり、報告した本や論文のような物があれば紹介して下さい(英文でもいいです)。
【樽野学芸員の答え】
動物はすべて、生きていくために塩分が必要です。ところがゾウのような草食動物は、食べ物だけからでは、塩分が不足することがあります。そのような時、ゾウは塩分を含んだ土や岩を食べます。アフリカのような乾燥地帯では、地表近くの土がかなりの塩分を含んでいることがあります。ケニヤのエルゴン山で食べられているのは、土ではなくエルゴン山が噴出した火山岩ではないでしょうか。ここでは洞くつがあって、ゾウはその中へ入って行き、岩を食べることが知られています。
1.塩辛いという感覚があるかどうかはわかりませんが、塩分(といっても塩化ナトリウムとは限りません)が含まれていることを感ずる何らかの味覚があるのでしょう。
2.草食動物ならあります。土を食べられない動物園では、岩塩をなめさせています。
3.専門的とは言えませんが、以下の本があります。
・同朋舎出版発行.イアン・レッドモンド著.「ビジュアル博物館 42 象」2800円
エルゴン山のキトム洞穴については、以下の本に短い解説があります。
・Simon & Schuster 発行.Jeheskel Shoshani 編."Elephant".12,000くらい?
●1999/12/18 京都府の川本さんからの質問
私の記憶違いかと思うのですが、はまぐりの寿命が実は80年くらいある、と何かで読んだのです。そんな無茶な、と思って、ウェブ上でいろいろ調べてみましたが、はまぐりの寿命について書いてあるところが見つかりませんでした。本当にはまぐりがそんなに長生きしたりするものなんでしょうか?また、貝の仲間の寿命は一般的にどのくらいで、その中で寿命が長いと思われるものはどんなものでしょうか?
【石井久夫学芸員の答え】
ハマグリは、2年で3.2cm、4年で4.4cm、5年で5.5cmになり、6年以上の寿命があるだろうと書いた文献がありました。おそらく何十年も生きることはないと思います。貝のなかま(軟体動物)の寿命ですが、おそらく数年から長くて10数年の種類が多いと思います。一年という短い種類もいます。長い寿命の代表的な貝は、渓流にすむカワシンジュガイで、百数十年生きた例も知られています。
●1999/12/14 東京都葛飾区の瀬戸知子さんからの質問
人間の進化に興味を持っています。(これから人類学を専攻しようとしている者です・・・)以下のような疑問を持っているのですが、答えていただけますでしょうか?よろしくお願いします。
・ 新?進化論について
人間が猿から進化する過程で、陸上から海に戻りそれからまた陸上に上がって人間に進化していったという説が最近?出たそうですが・・・。その説は誰によって発表されたもので、どういった内容なのかもしご存知でしたら説明していただけたらと思います。
・ 二足歩行と脳の発達について
人間の二足歩行はどのようにして人間の脳を発達を促したのでしょうか? 詳しく教えていただけますでしょうか?
【和田学芸員の答え】
・ 新?進化論について
この説が発表された論文は、
◎A. Hardy, 1960. Was man more aquatic in the past ? The New Scientist,
17 March 1960: 642-645.
です。ハーディ自身はこの後とくにこの説に関する論文は書いてないらしいのですが、何度もいろんな人に取り上げられています。
最近では、昨年、
◎エレイン・モーガンの「人は海辺で進化した〜人類進化の新理論〜」どうぶつ社
という本が出版されました。原題は「 The Aquatic Ape --- A Theory of Human
Evolution (1982, 1989)」だそうです。日本語版に付けられた”新しい”という副題のせいで、新説と思った人がいるかもしれませんが、決して新しい説ではありません。
この説は、研究者の間では、あまり真面目には受け取られていないようで、人の進化について研究者が述べた文章にこの説が登場することはまずありません。Hardy
(1960)もモーガンの本も読んでいないので、内容を紹介することはできません。興味をお持ちならモーガンの本を読んでみて下さい。
・ 二足歩行と脳の発達について
通常考えられている直立二足歩行の影響とは、
・体を支えるため、骨盤などの形態が変化した
・両手が歩行から解放され、手を使った運搬や道具使用が可能になった
・視点が高くなった
といったところでしょうか。手を使ってさまざまな事をするようになったことが、間接的に脳の発達を促したかもしれませんが、直接的に直立二足歩行が脳の発達を促したという考え方は知りません。
脳の発達は、集団での狩猟・採集といった社会生活において、言語を使ったコミュニケーションの必要性などの中で発達してきた、という見方の方が一般的ではないかと思います。
●1999/12/5 東京都の柴田義和さんからの質問
頭足類、とくにダイオウイカは深い深海でどうやって配偶者を見つけるのでしょうか?
またなにを食べているのか教えてください。
【山西学芸員の答え】
ダイオウイカは、特に暗黒の深海域に生息するわけではありません。ふだんは光の届く範囲を泳いでいて、発達した視覚で相手を見つけると考えられます。食物については、他のイカ類と同様に魚などを捕食していると考えて差し支えないでしょう。曖昧な言い方ばかりですが、何分目撃例が少なく、生態面についてはほとんどデータが無いのが現実のようです。
●1999/11/27 岡山市のみぃちゃんの姉さんからの質問
この夏にクワガタを捕まえました。まだ生きているようです。冬はどう過ごしたら良いのでしょうか。
【初宿学芸員の答え】
クワガタムシのうち、オオクワガタ、ヒラタクワガタ、コクワガタなどは長命な種類で、成虫で冬を越します。越冬させる時に気をつけなければならないことは、(1)冬は空気が乾いているので、乾かないようにすること。飼育ケースのフタにビニールかラップをかぶせるとよい。(2)暗く涼しい場所に保管すること、があげられます。ときどき朽木マットが乾いていないかチェックし、もし乾いていれば霧吹きなどで湿らせます。がんばって、来年まで飼育してください。
●1999/11/25 大阪狭山市立北小学校1年生さんからの質問
校庭のすみで捕まえた幼虫です。図鑑等で調べたのですが、一致するものがありません。ぜひ、この幼虫の名前を教えてください。
【金沢学芸員の答え】
写真は不鮮明で特徴が写っていません。昆虫の種類はとても多く、もし鮮明に写っていたとしても、写真だけで昆虫の種類を決めることは不可能です。しかし、せっかく送っていただいたのですから、少しコメントします。
これは、幼虫と蛹の形から,蛾の幼虫だとわかります。校庭のすみから捕まえてきたということから、地面におりて蛹になる蛾の可能性があり、スズメガ類などが該当します。スズメガ類の幼虫であれば、お尻の先にトゲがありますが、残念ながら写っていません。蛹の写真では蛾類の蛹だとわかるだけです。
もっとつっこんで、想像力でカバーすると、幼虫がつかまったあたりにキョウチクトウはありませんか。キョウチクトウがあって、その葉がかなり食べられていたら、キョウチクトウスズメの幼虫の可能性があります。そう思って幼虫の写真を見ると、キョウチクトウスズメの前蛹(蛹になる前の幼虫)の特徴が見られるような気がします。蛹の外形も近いような気がします。
キョウチクトウスズメの蛹は、体長約55mmで、体色が赤っぽい茶色で,口吻のあたりに黒い線と側面に黒点があります。キョウチクトウスズメだとすれば、貴重な記録になります。大阪狭山市では初記録です。私も近大付属病院のあたりを探しましたが、見つかりませんでした。
キョウチクトウスズメは、東南アジア、インド、アフリカなどに分布するスズメガの一種です。日本のものは偶産と考えられていましたが、最近は和歌山県あたりで毎年発生しています。今年の10月になって大阪府で発生していることがわかり、現在分布を調べています。
【大阪狭山市立北小学校1年生さんの返事】
詳しい説明をしていただき、ありがとうございました。写真の幼虫は、キョウチクトウの近くで捕まえたものです。そして、キョウチクトウの葉を食べていました。昨年までは、見たこともない幼虫です。
【再び金沢学芸員の答え】
この幼虫は、間違いなくキョウチクトウスズメの幼虫です。貴重な情報をありがとうございました。
●1999/11/24 貝塚市のHNさんからの質問
申し訳ありませんが、教えていただきたいことがあります。ゴキブリを飼育している又は、実験しているところはないでしょうか(尚且つ実験を見学させてもらえるところが嬉しいです)?
ゴキブリの繁殖時期や、一度どれくらいの卵を産むのか? 寒さに弱いと言われているが、どれぐらいの寒さに耐えられるのか? 寒いところに行った場合はどうなるのか? 等なども教えてもらえると、嬉しく思います。
【金沢学芸員の答え】
見せてもらえるかどうかわかりませんが、各製薬会社の研究施設ではたいていゴキブリを飼っていますし、神戸大学農学部でも飼育しています。なんのために見学するのかわかりませんが、それほど熱心であれば、よく民家にいるクロゴキブリや飲食店街にいるチャバネゴキブリを捕まえて、飼育すれば簡単に生活がわかるでしょう。エサは、人間が食べるもので間に合います。
ゴキブリの繁殖時期は春から秋で、卵は卵鞘というケースの中に入っています。卵鞘の中の卵数は、クロゴキブリで22〜28個、チャバネゴキブリで18〜50個です。耐寒性は種によってかなり異なると思われます。ほとんどの昆虫は適温より寒いと活動が鈍り、動かないでじっとしています。その内、消耗して死んでしまいます。チャバネゴキブリは、日本産のゴキブリ中、最も耐寒性がなく、−5度に24時間さらすと死亡すると言われています。近縁のモリチャバネゴキブリは、本州の低山地の林床でたくさん見られますので、かなり耐寒性が強いと思われます。
●1999/11/18 枚方市のかずえさんからの質問
私は小学生のころ(約10年前)に学校の先生に連れられて水晶採取に行った事がありましたが、それが何処だったかさっぱり覚えていません。最近もう一度行きたいと思っていますが、なにも手ががりがありません。おそらく関西の近場だとは思うんですが、唯一覚えているのは、穴の近くに岩場があってすごくキレイな水が流れていたことくらいです。その穴では小さな六角形の水晶を見つけることができました。
同じ場所でなくて結構ですので近場で水晶採取ができる場所もしくはその場所が載った本などがあればご紹介ください。よろしくおねがいいたします。
【石井陽子学芸員と中条学芸員の答え】
以前、柳生へ水晶を採集しに行ったことがあります。沢の右岸側の斜面に穴があって、その下のガレ場で水晶を採集しました。大変小さい物でしたが、とてもきれいな物がとれました。書かれている状況に大変よく似ているような気がします。
最寄り駅は関西本線JR笠置駅で、そこから南へ延々と東海自然遊歩道または打滝川沿いの道路を歩きます。柳生の集落に入って、柳生郵便局の少し先で西へ曲がり峠を越え、田圃の奥の沢を登ると、その途中に先ほど書いたような場所があります。目印が無いので地図を見ながらでないと案内するのはちょっと難しいです。
載っている本は,ないようです。笠置周辺の鉱物採集コースなら、
・「京都五億年の旅」法律文化社
にのっています。
その他、当館にある鉱物採集の本としては、
・「地球の宝探し 全国鉱物採集ガイド」 日本鉱物倶楽部編 海越出版社
があります。これ以外にも大きい本屋には、何種類か鉱物採集のガイド本があると思います。また、
・「鉱物採集フィールドガイド」 草思社
には、石英(水晶も石英です)の採取地として、滋賀県大津市〜栗東町の田上山が載っています。
なお当然のことですが、鉱物採集や化石採集はその土地の所有者の許可を得て、かつ採集後は石を散らかしたままなどにしないことが大事です。また安全面にも十分の注意をはらってください。
●1999/11/10 大阪市のたかやまさんからの質問
ミミズが鳴くという友人がいます。そんなことはないと思うのですが、なぜ鳴かないのかうまく説明ができません。詳しく教えて下さい。よろしくお願いします。
【山西学芸員の答え】
ミミズには鳴くための発音器官がありません。したがって鳴くことができません。土の中に棲むケラ(昆虫)の鳴き声が、ミミズのそれと間違われるようです。
●1999/11/9 和歌山県美里町の新田英美さんからの質問
学校で、水質調査をしています。水質調査のなかでも、大腸菌のことを調べているんです。そこで、お願いがあります。大腸菌の種類を、教えてほしいんです。
【佐久間学芸員の答え】
大腸菌の数を調べる水質調査は温泉や公衆浴場・海水浴場などで指標として「ふん便性大腸菌群数」が使われるようです。特定の培養条件の元で発生した大腸菌のコロニーの数を指すのでしょう。このあたりの方法については保健所などに聞いてみて下さい。
大腸菌の種類といってもどのような形で種類を考えているのかで答え方が変わります。大腸菌といった場合にはEscherichia
coliという学名を持つ細菌1種を指します。大腸菌に近い細菌にどのようなものがあるかなどについては学校や図書館で例えば「生物学辞典」(岩波書店)などを調べてみて下さい。
また種ということではありませんが、大腸菌には少しずつ性質の異なるたくさんの株(Strain)があります。こうした違いにより、病気になった場合の症状も異なるようです。例えば、病原性大腸菌、細胞侵入性大腸菌、毒素原性大腸菌、腸管出血性大腸菌などのグループに分けられることがあります。株にはそれぞれ大腸菌K-12株などのように名前がついています。O-157もそのような名前の一つです。
●1999/11/9 大阪市の匿名希望さんからの質問
ナメクジは身近にいる(最近あまり見なくなったのは寂しい気もしますが)生き物なのにいろいろ知らないことに驚いています。
質問ですが、卵を産むのか、生むのは何時(季節は)なのか、どこに生むのか、ナメクジがどうやって子孫を増やしているのかを教えてください。
【山西学芸員の答え】
ナメクジは、温かい季節に卵を産んで子孫を増やします。数は数10個程度です。物陰などの湿った地面に産みます。
●1999/11/8 長野市のK.Nさんからの質問
築8年になる家に住んでいます。3年ほど前から寒い時期になると、毎晩風呂場にマダラカマドウマが2〜3匹いるのです。部屋にも時々出ます。床下を点検すると20〜30匹以上いるのです。気持ち悪いのです。発生の原因や駆除方法について教えて頂けませんか。
【金沢学芸員の答え】
冬にマダラカマドウマがたくさん越冬する家に住んでおられるとのことで、とてもいい環境なのでうらやましいです。
カマドウマ類は、比較的涼しく、湿度の高い場所に好んで生息します。床下、地下室、洞窟、朽木の下などに多く、寒くなると、洞窟などで集団で越冬します。不快感を与えるだけのおとなしい昆虫です。
駆除は必要ないと思いますが、気持ちが悪くてがまんできないのであれば、カマドウマ類が出入りする隙間をなくすことです。カマドウマ類が好む環境をなくすと、人間にとってもすみにくい環境になります。山地の林縁にお宅があるんじゃないでしょうか。そういったところでは、カマドウマ類がたくさんいるのはしかたありません。
●1999/11/8 長野県の辰巳浩太さんからの質問
昨日、裏の小屋で1メートル50センチくらいの蛇の抜け殻をみつけました。ヘビは、なぜ、そして、いつ脱皮するのか教えてください。
【和田学芸員の答え】
ヘビの脱皮というのは、うろこの外側の層がはがれるために生じます。ヘビの皮はつながってはがれますが、トカゲなどはバラバラになってしまいます。
うろこは、人間を含む哺乳類の皮膚や皮と同じような物ですので、人間の皮がはがれる(つまりあかのこと)のと同じことです。つまり、うろこ(あるいは皮膚)の下の層が成長して、新しいうろこ(あるいは皮膚)が出来てくると、表面の古いうろこ(あるいは皮膚)がはがれ落ちるのです。
脱皮の回数や、いつ脱皮するかは、種類や年齢、どのくらい食物を食べたかなどによって変わってくるので、一概には答えられません。
●1999/11/1 札幌市のなおさんからの質問
プラナリアは食べられるでしょうか。食べられる場合の食べ方や味、食べられいといった場合は、その害毒に付いて教えて下さい(例えば胃の中で分裂・増殖してしまう可能性等)。
【山西学芸員の答え】
食べてはいけない、というものではありませんが、小さくて、数を集めるのも手間がかかるので、食料としての利用価値がなく、誰も見向きもしないのでしょう。味はよく知りません。生で食べるのはやめた方が良いと思います。
●1999/10/29 屋久島の小原比呂志さんからの質問
秋になると路上で死期を待つかのようによろよろするカマキリ類をよく見かけます。轢かれたものなどの腹からは例のハリガネムシが這い出してきたりしていますが、一方で渓流の水溜りなのでも見かけますし、イワナに寄生していることもあると聞きます。このハリガネムシの生活史とはいったいどういうものなのでしょう?
また、カマキリの路上飛び出し行動が、寄生虫によるコントロール〜たとえば寄主のカマキリを鳥に食べさせて移動しようとしている〜を受けているため、というようなことはないのでしょうか?
【山西学芸員の答え】
秋に宿主から這い出したハリガネムシの成虫は、水中で冬を越し、4〜7月頃に産卵します。産卵に先立ち、交尾が行われます。産卵を終えた成虫は死を迎えます。
卵は1ヶ月前後で孵化します。幼生は数10ミクロンの大きさで、水底を這い回りますが、乾燥には大変弱いものです。宿主は直翅類や甲虫類がほとんどです。感染経路は、水辺に来た宿主の摂餌や吸水の機会に直接消化管に取り込まれる場合と、ユスリカなどの水生小昆虫の体内にいったん入ったのちに宿主に食われるという、間接的な場合とが知られています。
うまく宿主に入った幼虫は、数ヶ月をかけて成長し、秋には宿主から脱出する準備を整えます。
成虫は、水中で生活しなければならないので、宿主が水に浸った時などに、それを感知して脱出することができるようです。また、降雨時に多数の成虫が観察された例もあります。外国では、寄生を受けた甲虫が進んで水辺を訪れるという報告例もあるようです。
以上は、中山書店発行の「動物系統分類学 4 袋形動物」の線形虫類の章(井上巌著)に拠ります。
魚に寄生するというのは、従来の知見にはないと思います。
●1999/10/25
神戸市のT.K.さんからの質問
ブタクサハムシは関東地方から急速に分布を広げているようですが、最近はどこまで採集の記録がありますか。また、ブタクサを食べる昆虫は他にもいますか。よろしくお願いします。
【初宿学芸員の答え】
ブタクサハムシの生息が、近畿と関東以外で、分布として正式に記録が報告されているのは、
●加藤敦史・吉道俊一1999.ブタクサハムシ四国に侵入.月刊むし9月号(343):
44.
●鈴木邦雄・堀卓央・中村大樹・佐藤謙治1999.ブタクサハムシ富山県に侵入.月刊むし9月号(343):
44-45.
●奥村正美1999.福岡・山口の両県でブタクサハムシ発生.月刊むし11月号(345):
46.
ということで、富山県、福岡県、山口県と四国です。この他に未発表と思いますが、四国には高知以外の3県からの具体的な報告は聞いています。福岡県ではすでに広範囲で発生している(調査中)とのことです。
近畿では大阪を中心に現在も分布を拡大しているようです.詳しくは、当館ホームページの学芸員のページの一つ「しやけのドイツ箱」をご覧下さい。
関東でも栃木以北の情報はありませんし、新潟あたりでも見つかったという話もありません。名古屋方面には入ったといううわさを聞いているだけで、確かなものはありません。このように、日本全体での分布状況はよくわかっていないのが現状です。北米では同じ種類がカナダまで分布しています。北海道あたりでも、生息する能力が十分にあるといわれています。
ブタクサには茎にもぐる蛾(スギヒメハマキという種類)がいますが、同じように葉っぱを食べる種類は知りません。広食性の種類が食べる可能性は大いにあると思いますが、食痕が顕著なのはブタクサハムシだけのように思われました。
●1999/10/24
尼崎市の長谷川納さんからの質問
どじょう飼育に関する資料が、欲しいのです。養殖に関する資料もしくは、本があれば紹介をお願いします。
【波戸岡学芸員の答え】
養殖関係はほとんど知りません、以下のものくらいでしょうか。
・養魚講座5 ヘラブナ・ドジョウ・スッポン他、大島康雄(監)、1969年、緑書房、ISBN
4-89531-004-3、2,718円(税別)
・ドジョウ(特産シリーズ16)、渡辺恵三著、1979年、農山魚村文化協会、ISBN
4-540-79062-5、874円(税別)
・ドジョウ(新特産シリーズ)、牧野博著、1996年、農山魚村文化協会、ISBN 4-540-95127-0、1,457円(税別)
実際にみていませんので、どれをお奨めしたらいいかわかりません。いずれも絶版にはなっていないようですが、購入は書店での注文になるとおもいます。
●1999/10/23
松原市の泰地泉帆さんからの質問
最近松原市の西除川でコサギやアオサギと見られる渡り鳥を見かけます。どこからいつごろ来てどこへいつごろ帰るのか、また都会ではどんなものを食べてどこに住んでいるのか教えて下さい。
【和田学芸員の答え】
大阪では、コサギやアオサギは渡り鳥ではなく、一年中いて繁殖もしています。近くで言うと、松原市上田6丁目の樋野ヶ池や堺市野尻町の大津池に、ゴイサギ・コサギ・アオサギの集団繁殖地があります。繁殖期は3月から8月くらいです。西除川には、食物を採りにやってきていると思います。食物は魚など水辺の動物です。
繁殖期には巣場所を中心に食物を採りに行きますが、繁殖期が終わるともっと散らばってあちこちで見かけるようになります。そのせいで最近西除川に現れるようになったのかも知れません。繁殖期以外の時期も、寝るときは何羽かが樹に集まって寝るようです。
西除川では冬になると、ヒドリガモやオナガガモといったカモ類が見られます。これは本当に北から渡ってくる冬鳥です。正確にはどこから渡ってくるのかはわかりませんが、シベリアの東部からアラスカあたりで繁殖しているのではないかと思います。こういったカモ達は、草の実や水生昆虫などを食べています。
●1999/10/19
千葉県の安達まゆみさんと長谷川裕子さんからの質問
蚊は普段いったい何処にいるんですか?
あと、夏を過ぎると蚊はいなくなったようにみえるのですが、死んでしまったのですか??
【松本学芸員の答え】
カには、アカイエカのように夜行性の種と、ヒトスジシマカのように昼行性の種がいます。それぞれ活動時間になると、ヒトを含むほ乳類や鳥から吸血します。カは乾燥や高温が苦手のようで、暗く湿ったところを好みます。活動時間以外の時間はそのような暗く湿った藪や林の中などにいます。また幼虫もそのような環境の溜まり水で生活しています。
この時期はまだカに刺されることはありますが、もう少し寒くなるとカに刺されることはなくなります。これは気温の低下に伴って、カの活性が下がると同時に、冬に備えて成虫越冬する種では越冬場所へ移動し、休眠状態になること、また卵や幼虫の状態で越冬する種でも休眠状態に入って成長がとまってしまうためだと思います(普通に見られるカの多くでは1年に数世代発生を繰り返します)。
最近ではチカイエカというカ(アカイエカにちかい)が、都市部の地下鉄やビルの水たまりで発生しており、たとえ冬であってもカに刺されることがあります。
●1999/10/15
大阪の斎藤さんからの質問
体長は2cmくらいの生き物なのですが、なんという虫でしょうか? また、何を食べてるのでしょうか?
【金沢学芸員の答え】
この虫はゲジと言って、ムカデやヤスデに近い生物です。昆虫などの他の小動物を捕食します。
●1999/10/15
山口県のKFさんからの質問
家の屋根裏にイタチが住みついて困っています。追い出すよい方法はありませんか?
【和田学芸員の答え】
屋根裏に上がって、文字通り追い出すのが一つの方法です。と言っても屋根裏で走り回るのを追い出すのはなかなか大変です。もう一つの方法は、捕獲してしまうことです。イタチの捕獲には許可が要りますが、大阪府では、府庁の緑の環境整備室(あるいはその出先機関である農と緑の総合事務所)に申請すれば比較的簡単に捕獲許可が出してもらえますし(ただし雄イタチのみ)、イタチの捕獲器も貸し出してくれます。山口県でも、県庁の鳥獣行政の担当部署に問い合わせれば、わかると思います。捕獲したイタチは、たぶん雄か雌がわからないでしょうから、家から離れた場所ででも放してあげてください。
ちなみに捕獲器をかりてのイタチ捕獲の顛末記が、博物館友の会会誌Nature Studyの1999年10月号に載っています。これを読むと、捕獲器を使った捕獲には、それなりの工夫がいるようです。
なおイタチを一旦追い出したらそれで終わりではありません。油断するとまた帰ってきます。帰ってくる前に、イタチが出入りしている場所をつきとめて、二度と入ってこないようにすき間を塞ぐことが必要です。
●1999/10/6
神戸市の河田弘樹さんからの質問
神戸市灘区に、赤塚山高校という学校がありました(今は、移転して、なくなったんですが...)。その学校の、体育館の裏に、とてつもなく巨大なゲジゲジ?がいるという話を聞きました。体長は、30cmぐらいあり生徒達の間では、「赤塚虫」と呼ばれているそうです。
そんなでっかいゲジゲジ?が本当に神戸にいるのですか?
【金沢学芸員の答え】
巨大なゲジには、オオゲジという種類がいて、成体の体長が30〜45mmで、触角や脚を入れても全長80mmくらいです。30cmはいくらなんでも大きすぎます。
ゲジゲジは、図鑑などで使われている標準和名におけるゲジという種類を指す通称ですが、巷ではムカデ類、ヤスデ類を混同しているようです。ムカデ類とすると、オオムカデ類のトビズムカデが体長110〜130mmです。これまでの電話での問い合わせの経験から、実際の体長の約2倍が(うわさ話における)「尾ひれ」ですので、このゲジゲジ?らしいものが実在するとしたら、オオムカデ類の可能性があるでしょう。
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