この全身骨格は20年前,自然史博物館の調査隊が,岐阜県の熊石洞という洞穴から掘り出した標本をもとに組み立てたものです.熊石洞は,盆踊りで有名な郡上八幡にあります.
オオツノジカの特徴は,なんといっても大きな角と大きな体です.この標本では,肩の高さ1.8m,体長(頭胴長)2.6mあります.熊石洞の標本をはじめ日本のオオツノジカは,ヤベオオツノジカという種類です.外国には別の種類のオオツノジカがいました.ヨーロッパのオオツノジカの中には,角がとても大きくて,左右の巾が3.5mもあるものまで見付かっています.これでは速く走れなかったのではないでしょうか.
熊石洞のオオツノジカが生きていたのは,約18,000年前で,最後の氷期の中でも一番寒かった時期です.そのころの大阪の様子は今とはずい分違ったものでした.大阪湾は干上がっていて広い平野(古大阪平野)になっていました.その平野とまわりの山々をおおていたのは,ナラやカバなどの落葉広葉樹に針葉樹のまじったまばらな林と草原でした.そしてオオツノジカやナウマンゾウの群が,ゆうゆうと歩きまわっていたことでしょう.