イトヨのオスのだましによる卵捕食の回避(32.6MB, 00:02:08)撮影日:2005/05/28 撮影場所:福井県大野市糸魚町 本願清水 | |||
種類 イトヨ(淡水型) Gasterosteus aculeatus (freshwater type) キーワード | |||
田上優希・田上雅文 (Yuki TANOUE, Masafumi TANOUE) 2005/11/11登録 |
動物界 >脊索動物門 >硬骨魚綱 >トゲウオ目 >トゲウオ科 >イトヨ属 >
イトヨのメスや同所的にすむアブラハヤの放浪集団は、イトヨのオスが守っている卵を食べてしまうことがあります。本願清水のイトヨは個体数密度が高く、卵捕食の頻度が比較的高いといわれています。そのため、営巣中のオスは様々な回避策をとる必要があります。
画面の手前でイトヨのオスが巣を作って卵を守っており、ファンニングをしていますが、イトヨのメスやアブラハヤの放浪集団が近づき、ファンニングを中断します。その後、画面の後方でイトヨのメスによる何かの摂食(卵捕食?)が起こり、これを横取りしようと周囲のイトヨのメスやアブラハヤが集まってきます(31〜38秒後)。その様子を見た営巣中のオスは、集団に入り込み、集団を引き連れ、体を横に向ける産卵誘導の姿勢をとります(45秒後と54秒後の2回・2回目はスロー再生あり)。この姿勢につられた集団は、オスが口先で示した場所に集まってしまい、その隙にオスは集団から素早く離れます。この後、オスは巣に戻りましたが、ファンニングはせず、さかんに周囲の砂を口に含んで巣に運び込む行動をとりました。映像はここまでですが、砂運びは3分程度継続し、その後ようやくファンニングを再開しました。
これらの行動が実際に卵捕食を免れる効果をもつのかどうかは厳密には不明ですが、放浪集団に対して産卵誘導の姿勢をとることは、集団が自分の巣に近づくまでの時間を稼いだり、彼らの意識を巣からそらす効果があるのかもしれません。興味深いのは、異種であるアブラハヤまでもが産卵誘導につられている点です。また、巣に砂を運び込む行動は、卵の存在を砂によって視覚的に隠したり、巣作りの最中のふりをすることで巣にはまだ卵がないと思わせる、などの効果があるのかもしれません。(解説文作成:石田 惣/福井市自然史博物館)
(この映像は福井市自然史博物館友の会「イトヨの教材映像撮影プロジェクト」により制作されたものです・http://www.nature.museum.city.fukui.fukui.jp/friends/itoyo/)
(データ番号:momo051103ga07b)