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メルマガ版ジュニアのページ カミツキガメ採集記
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それは僕にとっても彼(彼女?)にとっても不運な出会いであったに違いない...その日は午後に和泉葛城山でマレーゼトラップの回収をすること以外特に予定はなかった。天気もまずまずだし、どこかに出かけなくてはもったいない。そこでふと思いついたのは高槻の鵜殿である。去年見つけたスジツトガにつくヒメバチの調査にもいい時期だ!ところが約1時間後、意気揚々と乗り込んだ鵜殿のヨシ原で出会ったのは異常に大きく、そして凶暴な「カメ」であった。
少なくとも40cmはある甲、アンバランスに大きな頭、トゲのあるしっぽ...近づけば「シューハー」と息を吐いて威嚇までする。どうやら外国産のカメのようである。ペットとして飼っていたものの手に負えなくなったから放したというところか。これは危ないとネットの柄で触ると「バシュ」と噛みついてくる。人間の指だったら簡単に引きちぎられそう。
基本的にわからない動物は(規制されているものに注意しつつ)持ち帰るというのが博物館の方針であるが、このカメはいくら何でも大きすぎる。そこで博物館に電話をかけ相談しよう思ったが、W編集長は不在。動物研でいるのはY課長代理だけだった。
松本: 「大きさは45cmくらいで、甲の後ろのほうがギザギザしてて、しっ
ぽの上にトゲトゲがあって、口あけてしゅーしゅーいってるんですけ
ど...どうしましょ?」
Y課長代理:「それ、やばいやつ違うん?」
松本: 「ほっといたら危ないですよね〜?」
Y課長代理:「危ないやろな〜」
松本: 「どうしましょ....」
Y課長代理:「もって帰れる?」
松本: 「いや...でか過ぎるんですけど...」
Y課長代理:「人の通りそうなところ?」
松本: 「散歩とか来そうですね」
Y課長代理:「危ないな〜」
松本: 「.......」
Y課長代理:「危ないな〜。放っとく訳にはいかんよな〜。」
松本: 「...何とかします。」
W編集長がいたとしても、きっと「連れて帰るように!」とか言われそうだし、警察に通報するのは面倒(どうせうちの博物館に来そうだし)なので持って帰る覚悟を決める。とりあえず写真撮影したあとで、ロープを拾ってきて縛りあげ、噛まれないように運ぶ。犬の散歩の人の視線を気にしながら...ハチの調査どころじゃなくなってしまった。あぁ!
彼(彼女)にしてもいい迷惑である.突然ひもで縛りあげられて車に載せられ、あげくに自然史博物館なんてところに連れてこられて...でも一番迷惑なのは元々の生息地(北米)から日本に連れてこられ、そして手に負えないからといって野外に放されたことだろう。元々いた生物にとっても迷惑千万なことに違いない。生き物の飼育には最後まで面倒を見る覚悟が必要なのは言うまでもない。
「飼うなら放すな。放すなら飼うな」である。
このカミツキガメ、後日の計測の結果、背甲の長さが43cm、幅が38cm。体重約22kgであることが分かった。【松本吏樹郎】