2002年11月と2003年2月採水のリン酸イオン(PO4-)濃度
リン酸イオンは,合成洗剤中に含まれており,生活排水の中から検出される事が多い成分です.現在ではリン酸が入っていない洗剤も徐々に普及しており,その流出濃度は低くなってきていますが,し尿処理排水にも含まれるために,人為的汚染を示す指標ともなってます. 11月の調査では検出されない個所が全採水地点の半数ほどあり,検出されても濃度は低くそれほど河川水を汚染はしていないと思われます.しかし,2月の結果では検出個所数も増え,特に高田川上流で10ppmを上回る濃度が検出されました.

2002年11月と2003年2月採水の塩化物イオン(Cl-)濃度
塩化物イオンは生活排水中に尿や汗として含まれることもあり,人為的汚染状況を示す目安となることがあります.海からも人口密集地からも遠い奈良県側の上流部には,検出されないところもありました.2003年2月には,東除川下流部で300ppm程度の比較

的高い濃度が検出されました.奈良県側は11月よりも検出個所は少なくなり,それぞれの濃度も低くなることがわかりました.
2002年11月と2003年2月採水の硝酸イオン(NO3-)濃度
硝酸イオンは一般に農業用肥料に含まれていることが知られています.2002年11月の結果では大阪側の大和川本流で全域に渡り3~4ppm程度検出されました.また大和川支流では,東除川で10ppm前後と比較的高い濃度で検出されました.旧大和川水系に属する長瀬川で最も高く18ppm検出されました.そして,奈良県側では竜田川上流で10ppm程度を示す他は,濃度は5ppm以下で検出されました.2003年2月の結果では,高い濃度で検出される箇

所は11月と似ていますが,全体に検出箇所数が増え,個々の濃度が高くなっています.東除川においては16~17ppm検出されました.最も高い濃度を示したのは11月と同じく長瀬川で,濃度は20ppm検出されました.
 東除川と長瀬川の周囲には住宅・工場が多く,農地が少ないことから,これらの硝酸イオンは農地以外からの供給が考えられます.
2002年11月と2003年3月採水の硫酸イオン(SO42-)濃度
硫酸イオンは,一般に石油・石炭の燃焼から発生する硫酸塩が雨に溶けこみ,地上や河川へと流れ込むもの,あるいは工場や家庭排水に含まれ,河川へ流れ込むものがあります.11月の結果では多くの個所で検出されており,各濃度も比較的高くなっています.濃度は周辺に工場が多く分布する旧大和川水系の平野川の100ppmが最大となっています.また奈良県側では検出個所数も大 阪よりも少なく,それぞれの濃度もそれ程高くはありませんでした.2月の結果もこれと同様に平野川及び長瀬川といった工場地帯での濃度が目立って高くなっています.これらの結果から,硫酸イオンは工場や家庭からの排水が主な原因になっていると思われます.