高槻市森林組合 氏原 修
1. 里山は誰が作ったのか。
里山林の多くは、地域の農林家の人々が自分たちの生活のうえで収入を得るために、農林業生産施設の一部として炭や薪を生産するために木を収穫してきた林であって、、初めからこのような雑木林を作ろうと思ってつくった林でもないし、かぶと虫やくわがたなどの昆虫のためにつくった林でもなく、従って里山林の多くは里に生活するためにつくった経済林といえる。
2. 里山は誰のものか。
里山林の多くの所有者は1.で話した目的を持った農林家自身が所有する個人所有林である。しかし地域によっては入会林のように地域の集落全体で保有する林地や社寺林、市長村有林、国有林もある。しかし今、農林家が必要としなくなった今、環境などの保全から里山を必要としているのは市民の側であって、今後は里山は市民(行政)が所有しても良いかもしれない。
(市民が求めている里山と山村の側が求めている里山とはちがう。)
3. 里山は誰が守るべきか。
里山は以前は里で暮らす農林家の人々が守ってきた。しかし2.で話したように里山を必要としているのは都市住民の側であってこの理論で行けば今後里山は市民の側が守ればよい。
(里にすむ人々には里山を守るだけの必要も力もなくなってきた。)
4. 里山はなぜ守らなければいけないのか。
里山には里にすむ人々の生活の場であった。だから里の人々が自分たちのために守ってきた。しかし時代が変わった今、里山は薪休みを作るためには毛筆用はなく、都市の人々の生活感協(水、空気、緑、野生動植物の保護、レクレーション)の場として保全しなくてはならないのではないか。
(里山は日本の森林の文化である。)
5. 里山は今後どのようになるだろうか。
(1)大部分の里山は放置されたままになるだろう。
では放置されればどうなるであろう。
・カシやシイといった常緑樹におおわれ、林の中には陽が入らない暗い森になる。
・小動物や昆虫が住めなくなる森になる。
・強い木が大きくなり弱い木がなくなり植生が常緑になる。
(2)公園林など一部の森林は守られるかもしれない。
6. 里山は今後どのように活用すべきか。
(1)市や府県といった公共団体がレクレーション活用の場として
(2)都市の人々の余暇活動の場として
(3)子供たちに自然教育の場として
(4)一部の森林については林業的に利用しても
7. 里山保全における高槻市森林組合の取り組み
今までお話しさせていただいたとおり、里山の大切さや守っていかなければいけないということは市民合意がだいたい出来つつあるのではないか。しかし現実に誰がどのように守っていくのかは非常に難しい問題である。その中で林業者に近く市民とも接点を持っている森林組合が守のが一番良いのではないか−と私は考えている。
そこで高槻市森林組合の取り組みを少し紹介してみよう。
(1)地域の概要
高槻市は、大阪と京都の中間に位置する京阪神のベッドタウンで、人口36万人の都市である。高槻市の半分は里山林で、薪や炭などの燃料の供給源として活用されてきたが、昭和40年頃から活用されなくなって開発が進み、もともと6,000haあった森林のうち1,000haあまりが住宅や道路、ゴルフ場に転用されていった。それでも、市の総面積のうち10,500ha農地、約半分の5,000haの森林が残っている。現在でも炭を焼いたり、シイタケを生産したり、素材性産業の純然たる林業で生計を立てている世帯が10世帯もある。このことは、都市の中に農山村の文化が残っているという点で高槻市の大きな特徴といえる。
(2)高槻市森林組合の概要
設立年月日 昭和16年3月31日 組合員数 868人
組合員所有森林 4,700ha 職員(現場含む)20人
年間事業量 6億5千万円
(3)高槻市森林組合の取り組み
・林業振興と森林組合の立場から
森林整備 苗木の植付−−下刈り、間伐、枝打ちなどの実施
年間400ha
・森林レクレーション事業の推進
樫田地区に45haの里山の保全と活用を目的として森林観光センターを開園(園内にはシイタケ園や炭窯、木材加工センター、薬草園などがあり、里山を保全しながら市民の利活用をはかっている。)
・薪炭林の保全と活用
有料広葉樹林業を整備するために服装林施行や苗木の植付
・森林銀行制度の活用
高槻市のおこなう森林銀行制度を活用して、組合員の森林を保全するために森林保全協定の締結
・市民参加の森づくりの支援
里山の整備を図るため市民がおこなう市民参加の森づくり事業の支援
・森林インストラクター業務
市民が里山を利用した野外活動をおこなうための手助けや森の案内業務
以上