平成16年2月26日
大阪市立自然史博物館
06-6697-6222
担当者:学芸課 波戸岡清峰はとおかきよたか



大阪市立自然史博物館特別展
「いきもの図鑑 牧野四子吉の世界」展を開催



牧野四子吉の生物画  大阪市立自然史博物館では平成16年4月10日(土)より5月30日(日)まで、花と緑と自然の情報センター2階のネイチャーホールにおいて、特別展「いきもの図鑑 牧野四子吉の世界」展を開催します。

牧野四子吉(1900〜1987)まきの よねきちは生物を対象とした精緻な画風の20世紀の画家です。3万点を超える挿絵を図鑑や事典・辞典に著したことで知られ、そのような挿絵を「生物生態画」(資料1上)という独立した分野にまで高めた功績が高く評価されています。挿絵が使われた書籍類は教科書なども含めると100冊を超え、私たちは子どもの頃から今日に至るまでに知らず知らずのうちに四子吉の絵に接してきているはずです。
平成13年に京都百万遍の思文閣しぶんかく美術館が初めて牧野四子吉をとりあげて絵画展を開催し、好評を博しました。平成15年5月からは、出展作品をあらためて選定しなおし、規模を拡大して全国巡回が開始され、大阪市立自然史博物館が2番目の会場となります。当館には100万点を越す生物標本が収蔵されていますが、その中から四子吉の原画のモチーフに関連する標本を出品するなどの独自性を加え、より充実した展覧会となっています。
大阪市立自然史博物館では、平成13年に優れた植物研究者であると同時に優れた植物画家としても有名な牧野富太郎の植物画展を開催し、好評を博しました。四子吉は、富太郎にも勝るとも劣らない優れた画家です。富太郎の植物画は、学術研究用のためのものでしたが、四子吉は植物画や学術用の絵にとどまらず、すべての生物を命あるものとして描きました。四子吉の「生物生態画」にはどこかで見たことのあるような親しみと懐かしさを感じさせられ、同時に、実物への想像力やロマンを掻きたてられるのはこのためです。また、今回の展示では「牧野四子吉の生涯」のコーナーを設け、画家かつ文化人としての感動的な生き様を知っていただくことができます。
人々の「自然離れ」が憂慮されている現在、本展覧会は、子どもたちや一般市民が動植物に関心を抱くきっかけとなることが大いに期待され、また、自然・美術の愛好家や読書家など、多くの方にご覧頂きたいと思います。
なお、関連行事として、平成16年5月1日(土)午後3時から4時30分まで自然史博物館集会室において、自然史講座「牧野四子吉と魚類画」を開催します。


1.展示の名称:いきもの図鑑 牧野四子吉まきのよねきちの世界
2.主   催:大阪市立自然史博物館・大阪市教育委員会・朝日新聞社
  協   力:思文閣美術館、(有)アトリエ・まきの
3. 会   場:大阪市立自然史博物館 花と緑と自然の情報センター2階 ネイチャーホール
        〒546-0034大阪市東住吉区長居公園1-23(長居公園内)
         TEL 06-6697-6221 FAX 06-6697-6225
4. 会   期:平成16年4月10日(土)〜5月30日(日)
5. 入 場 料:大人800円 高校生・大学生600円(30人以上団体割引あり)
        ※本館入館料(300円)とセットの場合は、同600円、400円
        ※前売りは同600円、400円
        ※中学生以下、障害者手帳などをお持ちの方、市内在住の65
         歳以上の方は証明証(ツルのマークの健康手帳、または本市
         発行の敬老優待乗車証等)を提示されると無料になります。
        ※博物館本館・長居植物園への入場は別途料金が必要です。
6. 開館時間:午前9時30分から午後4時30分(入館は午後4時まで)
7. 休 館 日:月曜日(ただし祝日の場合は翌日)
8.展 示 内 容
 <牧野四子吉による生物画>
  魚類・水生生物     284点(額およびマットで44、このうち百科事典*1が9、
            淡水魚の図鑑*2が6、調査報告書*3が15)
  両生類・爬虫類     44点(額9、このうち絶滅動物は2)
  鳥類          102点(額15)
  哺乳類        198点(額32、このうちビアンキ本*4関係は6)
  昆虫類・クモ類    67点(額22、このうちファーブル本*5関係は14)
  植物         33点(額9)(資料2左上)
 岩波書店発行の広辞苑の挿図 437点(額9)(資料4)
 教科書・宮地伝三郎動物記の挿図 32点(額4)(資料1下) 
   *1 ジャポニカ万有百科大事典(1974年・小学館)
   *2 原色日本淡水魚類図鑑(1963年・保育社)(資料2右上)
   *3 関東州及満州国陸水生物調査書(1940年・関東州庁)(資料2右下)
   *4 ビアンキのこども動物記(1968〜69年・理論社)(資料2左下)
   *5 少年少女ファーブル昆虫記(1969〜88年・あかね書房)(資料1中)


<牧野四子吉の生涯>
 デッサン・童画・イタリア風景    21点(額13)
 アトリエ再現(筆、絵具、定規など) 14点
 四子吉の本             101冊(うち約20冊は、哺乳類などのコーナーで展示) 
             
<大阪市立自然史博物館所蔵の実物標本>
  魚類・水生生物 40点
  両生類・爬虫類  8点
  鳥類      10点
  昆虫類・クモ類 30点
  植物       10点

9.展示物の点数
 ・162点の額縁などに入れられた生物画・スケッチ  1,218点
 ・筆などのアトリエ関係の道具            14点
 ・本                       101冊
 ・大阪市立自然史博物館所蔵の実物標本        98点

10. 関連行事
大阪市立自然史博物館普及行事 自然史講座「牧野四子吉と魚類画」
 日  時:5月1日(土)午後3時〜4時30分
 会  場:自然史博物館 集会室
 講  師:波戸岡清峰(自然史博物館動物研究室学芸員)
 内  容:魚類を専門とする講師の作画経験や,過去の文献に見られる魚類画の比較を交えながら牧野四子吉の魚類画を紹介する

【牧野四子吉略歴】
1900 北海道函館で生まれる(父は秋田県出身の宮大工)
1915 東京旧制郁文館中学校を退学し、その後、川端絵画研究所や日本美術院研究所に入るも、画壇の閉鎖的体質になじめず日本画を離れる
1922 童話雑誌「銀の笛」編集に参画。以後、竹久夢二、サトーハチロー、林芙美子と交流しつつ“大正デモクラシー”の雰囲気の中で青春時代を過ごす
1929 京都転居。京都大学理学部動物学教室の嘱託画家として生物画の制作を始める
    制作:北隆館「昆虫図鑑」(1930)「関東州及満州国陸水生物調査書」のカゲロウ類、魚類(1940) などの挿絵
1949 東京転居。図鑑教科書用挿絵の制作が多くなる
    制作:岩波書店「広辞苑」(1955)、北隆館「原色動物大図鑑」(1956)、同「ファーブル昆虫記」(1966)、小学館「ジャポニカ大日本百科事典」(1967)などの挿絵
1974 ヨーロッパ各地を旅行しスケッチ
1987 死去(享年88歳)
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