博物館では「学芸員」と呼ばれる人たちが働いています。
学芸員は博物館で来館者が見学する展示の企画・作成だけでなく、標本の収集・管理や標本等を用いた研究を行っています。
とはいえ、博物館を支えている学芸員が具体的にどのような仕事を行っているのかはあまり知られていません。
この特別展では、博物館が取り扱う「標本」に着目し、学芸員が標本をどのように収集・管理し、研究を行い、社会に伝えているかを紹介します。
展示を通して学芸員のお仕事を知ることで、博物館により興味が湧くことを期待しています。
また、同特別展の会場内で、毎年博物館本館で開催している「ジュニア自由研究・標本ギャラリー」を同時開催します。
観覧料
大人500円、高校生・大学生 300円
※本館(常設展)とのセット券は、大人 700円、高校生・大学生 400円。
※中学生以下、障がい者手帳など持参者(介護者1名を含む)、大阪市内在住の65歳以上の方は無料(要証明)。30人以上の団体割引あり。
※本館(常設展)、長居植物園への入場は別途料金が必要です(セット券を除く)。
※ただし関西文化の日(11月15日、16日)は無料。
オンラインチケットはこちらから(e-tixのサイトに移動します)
オンラインチケットはセット券のみです。特別展のみをご覧になる方は会場でお求めください。

期間フリーパス
大人 1000円、高校生・大学生 600円
期間内フリーパスをご購入の方に「見つけたら教えて!博物館の害虫」カード全8種1セットを差し上げています(限定100セット)。
割引券
大人・高大生の観覧料が100円引きになる割引券はこちらから↓
開催期間
令和7年11月1日(土)〜令和8年2月1日(日)
開館時間
9:30~16:30(入館は16:00まで)
休館日
月曜日(ただし、月曜日が休日の場合はその翌平日)
年末年始(12月28日〜1月5日)
主催
後援
大阪府教育委員会、大阪市教育委員会
会場
大阪市立自然史博物館 ネイチャーホール(花と緑と自然の情報センター2階)
〒546-0034 大阪市東住吉区長居公園1-23
TEL:06-6697-6221 FAX:06-6697-6225
HP:https://www.omnh.jp/
1.はじめに:学芸員のおしごと
2.まずは「集めよう」
博物館学芸員の重要な仕事の一つに、「標本の収集」があります。
「標本」とは何か、標本収集の意義とは何か、どのようなものを、どのようにして集めるのかを紹介します。
主な展示
・昆虫、植物、魚、哺乳類、無脊椎動物、化石、岩石など様々な種類の標本[1-5]
ケンサキイカの液浸標本[2]
そのまま乾燥させて保存するのが難しい生き物は、エタノールなどの薬品に浸けて保存します。
これを液浸標本といいます。
保存液に浸ける前に、ホルマリンなどの薬品でタンパク質を変性させ、形態の保存性をよくする処理をすることもあります。
写真は大阪湾産のケンサキイカの液浸標本です。
地学標本(アンモナイト化石)[3]
化石の標本は、化石の周りについている砂や泥などを削り取ることで(この作業をクリーニングといいます)、化石の本体だけをきれいに取り出して標本にします。
写真は和泉山脈に分布する和泉層群から見つかったアンモナイト化石、ネオフィロセラス・ヘトナイエンゼ(Neophylloceras hetonaiense)です。
・乾燥標本、液浸標本など、対象によって変わる標本の保管方法
・分野によって異なる標本収集のための採集調査道具
・図書や図鑑およびそなど の原図、過去の文献資料など、実物標本以外の博物館で収集を行っているもの[5]
堀勝氏の蔵書[5]
戦前の貴重な図鑑類を多く含むほか、堀氏が監修、執筆した自然科学の教育普及書も含む。
関西の各地の植物目録等も多く含まれているが、発行部数も少なく当館でも所蔵していないものが多く含まれる。
3.新しく博物館に来た標本
博物館でには学芸員によるって収集された標本の収集に加え、プロ・アマチュア問わず研究者や市民等から標本の寄贈を受け、博物館のコレクションとして加わった標本ものが多くあります。
2022年以降に当館で収集・寄贈された標本を展示し、その標本の意義と博物館での資料収集活動について紹介します。
主な展示
・2021年に大阪湾に漂着したニタリクジラの骨格標本[6]
ニタリクジラの頭骨[6]
浅い大阪湾にも、大型クジラがしばしば迷い込んできます。
自然史博物館ではできるかぎりその標本化をおこなっています。
標本にすることで、クジラの研究が行われ、その保護に活かす上で貴重な情報が得られます。
写真は2021年(令和3年)7月に、死体が大阪湾をただよっていたニタリクジラを、堺の埋立地に陸揚げして解体したのちに、自然史博物館に運んで、骨格標本に仕上げたものです。
縦3m、幅1.5m。
・林 靖彦氏(日本甲虫学会)によって収集された、多くのハネカクシ科のタイプ標本(新種を記載する際に用いた基準の標本)を含む日本産・海外産甲虫コレクション[7]
ハネカクシ科を中心に研究された林靖彦氏の約7万点の甲虫コレクション[7]
林 靖彦氏はハネカクシ科を中心とする甲虫の分類学的な研究に取り組んできたアマチュア研究者です。
日本甲虫学会や当館の標本同定会などでも多くの貢献をされてきた氏のコレクションは、2024年(令和6年)に自然史博物館に寄贈されました。
約7万点にのぼるコレクションには、貴重なハネカクシ科甲虫のタイプ標本(新種を記載する際に用いた基準の標本)を多く含んでいます。
タイプ標本には赤いラベルがつけられており、その重要度を示しています。
これまでの、そして今後のハネカクシ科の研究を支える一大コレクションです。
・角野康郎氏(神戸大学名誉教授)によって収集された日本産の水草約30,000点のコレクションの一部
・佐藤隆春氏(当館外来研究員)によって収集された中新世火山岩類を中心とした岩石コレクション
4.標本を「守る」
標本は適正な温度・湿度管理、保存処理、整理作業を行わないと、その標本が損なわれて、利用できない状態になります。
標本を守り、永劫的に活用していくためには、学芸員による日頃からの標本管理が必要です。
標本を管理する収蔵庫とはどのような場所か、そして標本を利活用するためにどのような管理が行われているかを紹介します。
主な展示
・ジオラマ風に収蔵庫とはどのような場所かを紹介
・標本害虫などの収蔵庫の大敵[8]
昆虫や動物の標本を食べてしまうカツオブシムシの幼虫[8]
収蔵庫では、標本を食べる虫や、カビが大きな問題になります。
小さな虫や目に見えないカビでも、放っておくと標本はボロボロになってしまいます。
こうした被害を防ぐために、博物館ではIPM(総合的有害生物管理)という考えに基づいて、温度や湿度を調整したり、こまめに掃除したりして、虫やカビが発生しにくい環境をととのえ、標本を守っています。
・標本の保存・保管方法
・標本管理の問題点
5.標本を「調べる」
標本はただ収蔵庫に保管されるだけのものではなく、多くの人に利活用されることでその価値が高まります。
収蔵庫に保管されている標本はどのように活用されるのかを、標本を活用した様々な研究を紹介し、研究資料としての標本の意義を考えます。
主な展示
・分類学における標本の意味
・地域自然史研究と標本の意味[9]
ヤチスギランのさく葉標本[9]
標本は、その時、その場所で、その生き物が暮らしていたというゆるぎない証拠です。
あとからでもきちんと同定ができる、という点で標本に勝るものはありません。
写真は大阪府産ヤチスギランのさく葉標本。
現在は大阪府下では見られません。
大阪北部で採集されたこの古い標本が、確かに大阪にヤチスギランが生育していた証拠となっています。
・自然史博物館学芸員以外によって研究活用された標本
6.みんなに「見せる」
学芸員の仕事でもっともわかりやすいのは展示の企画・作成です。
博物館の展示はどのように作られるのか、そして展示を作る際に学芸員が注意している点などを紹介します。
また、標本や展示のデジタル化についても紹介します。
主な展示
・展示用の標本と研究用の標本の違い[10-11]
展示用に組み立てた骨格標本を交連骨格標本と呼びます。
つなげた部分が見えなかったりするので、あまり研究に適しません。
そこで研究用には、バラバラのまま箱詰めして保存します。
写真はアカウミガメの交連骨格標本と[10]、組み上げられていないバラバラの骨格標本[11]です。
・視覚障害者に展示を理解してもらうための3Dプリンターによる触察用地形模型[12-13]
触察用地形模型
展示品の多くが展示ケースに収められているため、博物館は視覚に障害のある人には利用しづらい施設です。
実物や模型などの触ることができる展示品を増やす、展示を理解するための補助的な模型を作成するなどの合理的配慮が求められます。
微細なもの、巨大なもの、遠くにあるもの、稀少なものなど、実物に触って形を理解することが難しい場合は、触察用の模型を作る必要があります。
近年は安価で高性能な3Dプリンターが出回り、触察用の模型を自作することが可能になりました。
写真は、地理院地図の3Dデータを元に作成した高知県室戸岬周辺の地形模型[12]、北海道の羊蹄山から洞爺湖、有珠山周辺の地形模型[13]です。
・デジタル化された標本・展示
7.博物館をとびだして
自然史博物館の活動は、博物館での標本収集や展示だけにとどまるものだけではなく、野外での観察会や友の会活動、同好の人たちが集まるサークル活動など、その活動の輪はさらに広がっていきます。
市民と共に進む自然史博物館の活動を紹介します。
主な展示
・博物館の普及教育活動
・自然史博物館友の会とサークル活動
・大和川水系の自然環境調査・プロジェクトYをはじめとした市民科学による地域自然史の解明[14]
市民科学による地域自然史の解明[14]
科学研究で、特にそのデータの収集で市民の協力を得る手法を市民科学といいます。
生き物の分布調査では市民科学が大きな力を発揮します。
短期間で広い範囲の情報収集を実現できるとともに、調査に関する知識や意義を社会に広く普及できるという効果があります。
写真は自然史博物館で現在行っている市民科学による大和川水系調査プロジェクトYによる魚班の調査風景。
・自然災害によって被災した標本のレスキュー活動
8.学芸員が伝えたいこと
標本の収集や保管、展示、普及教育を通じて学芸員が伝えたいものは何なのでしょうか。
標本を未来に残す意味と博物館の存在意義を示し、この展示会のまとめとします。
ジュニア自由研究・標本ギャラリー
小・中学生、高校生の自由研究の成果を紹介する「ジュニア自由研究・標本ギャラリー」を、自然史博物館ネイチャーホールにおいて特別展「学芸員のおしごと−集める・調べる・伝える−」と同時開催します。
自然史博物館では、小・中学生、高校生の自由研究の方法や標本作りの個別相談に対応し、応援しています。
その成果である小・中学生、高校生の作った生き物や岩石・化石の標本、および生物・地学分野の自由研究を募集し、展示します。
応募した観察ノートやポスターなどの自由研究の成果や標本には、それぞれ学芸員からのコメントも添えて展示します。
特別展講演会
国内外の博物館で最先端の活動している研究者をお招きして、博物館活動を多面的に見る講演会を開催します。
「自然史研究に大きく役立つ博物館標本のDNA」【終了しました・ライブ配信の録画はこちら】
講演では、標本DNAがもたらした革新的な自然史研究について紹介します。
ネット配信:インターネットに接続することができる方
「世界の博物館で働くということ―イギリス・ザンビア・カリブ海の現場から」
本講演では、イギリス、ザンビア、カリブ海のセントクリストファー・ネービスという3つの国での勤務経験をもとに、それぞれの博物館実務の特徴や日本との違いを紹介します。
あわせて、脱植民地化――偏った歴史観を見直し、多様な声を反映する展示や教育を目指す近年の国際的な動向――や、地域社会との協働のあり方にも触れ、「学芸員とは何か?」を考えます。
ネット配信:インターネットに接続することができる方
ギャラリートーク
本特別展を担当した学芸員による展示解説を行います。
いずれも10時から30分程度
11月8日(土) 化石担当の学芸員
11月15日(土) 保存科学担当の学芸員
11月16日(日) 地層担当の学芸員
11月22日(土) 植物担当の学芸員(化石担当から変更になりました)
11月29日(土) 動物担当の学芸員
12月6日(土) 動物担当の学芸員
12月13日(土) 化石担当の学芸員(植物担当から変更になりました)
12月20日(土) 動物担当の学芸員
12月27日(土) 昆虫担当の学芸員
1月10日(土) 化石担当の学芸員
1月17日(土) 植物担当の学芸員
1月24日(土) 昆虫担当の学芸員
1月31日(土) 地層担当の学芸員
※担当は予告なく変更になる場合があります
ギャラリートーク・冬休み特別版
本特別展を担当した学芸員による展示解説に加え、普段は見ることのできない学芸員の仕事場を少しだけご案内します。
いずれも10時から30分程度
12月25日(木) 昆虫担当の学芸員
12月26日(金) 動物担当の学芸員
1月6日(火) 化石担当の学芸員
1月7日(水) 地層担当の学芸員
※担当は予告なく変更になる場合があります
子どもワークショップ(11・12月)
「はくぶつかん ハカセのおしごと」
はくぶつかんのハカセって、どんなおしごとをしているんだろう?
本をよんだり、けんきゅうしたり、パソコンをしたり?
「それだけじゃない、ほかにもいろいろあるで」とハカセ。
ハカセといっしょにてんじを見ながら、おしごとのヒミツにせまろう。
みんなの気になることや「はっけん!」をカードにして
それも「はくぶつかんの てんじ」にするよ。
12月13日(土)・14日(日)※石のハカセ
・プログラムの内容と安全確保のため、定員になり次第受付を終了します。また、途中参加はできません。
・博物館で開催されるプログラムに、高校生以上の方がお子様のつきそいでご参加の場合は、別途博物館への入館料が必要です(大人・高大生の観覧料が100円引きになる割引券はこちらから↓)。
「はくぶつかん おしごとすごろく」
てんじしつで、すごろくスタート!
「名前のついていない昆虫をみつけた!2つすすむ」
「雨でちょうさに行けない!1回やすみ」
「標本がムシにたべられた!どうしよう?」
てんじをみて、こたえをさがして、すすむんだ!
ゴールできたら、きみもハカセになれるかも?
12月6日(土)・7日(日)
・特別展で開催されるプログラムに、高校生以上の方がお子様のつきそいでご参加の場合は、別途特別展への入場料が必要です
(大人・高大生の観覧料が100円引きになる割引券はこちらから↓)。
割引券
割引チケットをダウンロードし、プリントアウトして会場にお持ちいただくか、携帯端末等でご提示いただければ、入場料が割引になります。
大人500円→400円、高校生・大学生300円→200円。
※中学生以下、障がい者手帳など持参者(介護者1名を含む)、大阪市内在住の65歳以上の方は無料(要証明)。
※本券1枚(1回の提示)につき、4名様1回限り有効。
プレスリリース
キッズマップ(見学用会場見取図)
キッズマップはたくさんのものがある会場を見て回るための見取り図です。
小学校やクラブの団体見学の際にはどうぞ遠足のしおりなどにもご活用下さい。
もちろん、見学時のメモにも。
「キッズマップ」としていますが大人の方もどうぞご活用下さい。
特別展「学芸員のおしごと −集める・調べる・伝える−」の内容がぎゅっとつまった解説書(販売価格500円)を会場およびミュージアムショップ、オンラインショップにて販売します。
オンラインショップ
博物館で働く「学芸員」とは、どんな仕事をしているのか。その概要を紹介します。