第2展示室 > 哺乳類の時代
A.第三紀の植物


第三紀は被子植物が発展した時代であるが、メタセコイアやスイショウなどのような、スギ科の裸子植物も栄えた。
古第三紀始新世には、暖かな気候のもとで、亜熱帯や暖温帯の植物が、北海道にまで分布した。当時の森をつくっていた木は、日本列島各地に石炭となって残っている。
新第三紀中新世の初めには、冷涼な気候がふたたび訪れ、冷温帯の落葉広葉樹がふえた。大海進のあった中新世のなかごろには、西南日本の海岸にも亜熱帯のマングローブ林ができたと考えられるが、山地の植生としては冷温帯植物が優勢だった。おそらく、夏はあんまり暑くなく冬が暖かな気候だったためであろう。
鮮新世になって気候がしだいに寒くなっていくにつれて、第三紀に栄えた植物は次々と絶滅していった。


●瀬戸陶土層の植物化石(中新世)

名古屋の北方にある瀬戸市や多治見市では、せとものの原料になる木節粘土を採掘している。この粘土にはたくさんの化石が含まれているが、オオミツバマツ、ヌマセコイヤ、アスナロビシなどの絶滅種が非常に多い。

●辰巳峠の植物化石

岡山県と鳥取県の県境に近い辰巳峠から産出する、中新世の終わりごろの植物化石。ブナのなかまやナラ類、ケヤキ、シナノキなど温帯の種類が多い。植物化石といっしょに、昆虫の化石がたくさんみつかる。

●白川峠の植物化石

神戸市の北部、白川峠付近には、中新世の神戸層群が分布しており、凝灰質の地層からは、たくさんの植物化石が産出する。ときにはシュロが立ったままの状態で発見されることもある。メタセコイアやフウなど日本から消滅した種類と共に、ブナ科やカエデ科など、温帯の植物が多い。

●前期中新世の植物化石

温帯の落葉広葉樹が分布を広げた時代で、気候は冷涼だったと推定される。長崎県佐世保炭田の佐世保層群相浦ノ浦層から産出する相ノ浦化石群と、秋田県阿仁合炭田の夾炭層から産出する阿仁合植物化石群によって代表される。いずれも冷温帯植物を主に含み、とくに後者には温暖帯要素は含まれない。