第4展示室 > 食用植物とそのふるさと
A.地中海文明を支えた植物


地中海地域の気候は、冬に雨が多くて、きびしい寒さはなく、夏は乾燥して高温という、きわだった特徴をもっている。
この地中海型気候は、たくさんの冬型一年生植物(越年生植物)をはぐくんだ。冬型一年生植物は秋に発芽し、冬には適当なしめりにめぐまれて、葉をひろげ根をはり、春、暖かく、日が長くなるとともに、急速に生長して花を咲かせる。暑く乾いた夏がやってくるころには、たねを残して枯れていく。
秋にたねをまき、春から初夏にかけて収穫する作物の祖先は、大部分はこの地中海地域の一年生の野生植物である。その代表がコムギ・ライムギ・エンバクなどのムギ類、キャベツ・ハクサイ・ダイコンなどのアブラナ科植物である。
地中海東岸地方の草原の野生植物から育てあげられたムギ類が、大河がはぐくんだ肥沃な平野に栽培されたとき、はじめて人類は古代オリエントの文明をささえるゆとりを得た。


●地中海地方(中近東を含む)で生まれた食用植物

コムギ・オオムギ・ライムギ・エンバク(以上イネ科)
キャベツ・ケール・コールラビ・カリフラワー・ブロッコリ・セイヨウアブラナ(以上アブラナ科)
セロリ・パセリ・ニンジン(以上セリ科)
ホウレンソウ・サトウダイコン(以上アカザ科)
ソラマメ・エンドウ(以上マメ科)
タマネギ・アスパラガス(以上ユリ科)
カルドン・シュンギク・レタス(以上キク科)
オリーブ(モクセイ科)
ブドウ(ブドウ科)
リンゴ・サクランボ(以上バラ科)
ザクロ(ザクロ科)
イチジク(クワ科)