自然史関係の本の紹介(2005年下半期分)
【★★★:絶対にお勧め、★★:けっこうお勧め、★:読んでみてもいい、☆:勧めません】
●「アリ!?ずかん」山口進写真・文・すがわらけいこ絵、アリス館、2005年9月、ISBN4-7520-0273-6、2000円+税
2005/12/14 ★★
写真と絵を使って、アリの生態のさまざまな側面を紹介した絵本。クロオオアリをはじめ、登場するのは日本各地で普通に見られるアリたち。内容は、アリの形態とカーストを紹介した後、結婚飛行からコロニー創設、巣の中の様子と採食行動。さらには、奴隷狩り、アブラムシとの関係、巣に居候する動物たち、アリによる種子散布などなど、主なトピックを一通り取り上げている。
出てくるのが、多くの場所で身近に見つかるアリたちなので、この本を読んでから実際に観察に行くとおもしろいだろう。結婚飛行に飛んだ後のアリは、けっこう街灯の下に集まっていたりする。そんな観察のポイントも紹介したらよかったかも。
アブラムシのところに向かうアリの腹は小さくて、帰ってくるアリの腹がパンパンに膨れている写真がよかった。今度よーく見てみよっと。
●「鳥たちの旅 渡り鳥の衛星追跡」樋口広芳著、NHKブックス、2005年9月、ISBN4-14-091038-0、1160円+税
2005/11/3 ★★
副題にあるとおり、15年ほどかけて行ってきた衛星追跡による渡り鳥の研究の成果を紹介した本。衛星で追跡して初めてわかった新事実が満載。
前半では衛星追跡の仕組みの説明を交えつつ、鳥の渡りを衛星を使って追跡した成果が紹介される。その後、中継地の自然の紹介、夏鳥の減少の話題を紹介した後、話は再び衛星追跡へ。データをもう少し分析した内容を簡単に紹介して、あとは研究の苦労話と自慢話。
移動の経路が紹介されるのは、マナヅル、タンチョウ、アネハヅル、ソデグロヅルといったツル類、コハクチョウとオオハクチョウ、ホウロクシギ、オジロワシ、そしてサシバとハチクマ。その具体的なコースや中継地点、渡りにかかる日数などがわかったとは言え、ツルやハクチョウの渡りは直線的で単純。それに引き替え、途中で引き返してくるホウロクシギはおもしろいし、何よりも圧巻はハチクマ。なんせ、日本発、東アジア一周旅行のようなコース取り。サシバに引っ付いて琉球列島からフィリピンを経由した方が早いのに。と、思わずハチクマに助言してあげたくなる。
大金が必要らしいが、楽しそうな研究。ただ、発信器の重量制限のせいで、衛星追跡が可能なのは大型の鳥のみ。ヒヨドリサイズの鳥でできるようになれば、いいのにな〜。
●「やあ出会えたね! クモ」今森光彦著、アリス館、2005年4月、ISBN4-7520-0303-1、1400円+税
2005/10/27 ★
コガネグモを題材に、捕食、造網、産卵、孵化とさまざまなテーマについて、きれいな写真と、短い文章で紹介している。クモの足先が糸をつかんでいるシーンや、産卵シーンの写真が気に入った。子どもに読み聞かせすれば、クモの暮らしのさまざまな側面を紹介できるお得な本。でも、興味を持った子どもに、さらに尋ねられても困りそうだが…。
●「葉っぱの不思議な力」鷲谷いづみ文・埴沙萠写真、山と渓谷社、2005年6月、ISBN4-635-06339-9、1600円+税
2005/10/26 ★
タイトルからすると、植物の葉っぱの話題が盛りだくさんと思うかもしれない。しかし、中身は、植物の形や生存戦略の話が広く取り上げられている。
「1.植物の形とつくり」では、葉っぱだけでなく根や茎・幹を含めて、植物の形がどのように決まっているかを解説。適度な光を求めて植物の形が決まってくるという話が軸になっている。形が決まるだけでなく、葉の向きを変えるなどして、葉で受ける光量を調節する話も出てくる。「2.植物の生存戦略」では、光量、乾燥、かく乱、食植性の昆虫や哺乳類などに対処すべく、植物が葉っぱや形をいかに変えて対処しているかが説明される。「3.葉っぱの観察」は、葉っぱの簡単な観察・実験ガイド。
我々が目にする植物の形に、どのような意味があるのか、それを考えるきっかけを与えてくれるという意味では、けっこうお薦めかもしれない。写真もなかなか美しく、ワレモコウの葉のギザギザの先に水滴が並んでいる写真などは、とても印象的。
あとがきによると、“葉っぱの「しごと」は、動くことのできない植物が、変化しがちな環境に対処するために進化で身につけた驚くべき工夫にみちています。それは不思議な力というしかありません”というわけでタイトルが決まったそうな。気持ちは分かるけど、本の中で説明されている情報を求めている人が手に取るタイトルになっているかというと、かなり疑問。
●「さかなのじかん」ともながたろ絵・なかのひろみ・まつざわせいじ文、アリス館、2005年4月、ISBN4-7520-0294-9、1400円+税
2005/10/24 ★★
絵本●すいぞくかんの3巻目。多少デフォルメされたかわいい魚50種登場。昼と夜、性別、年齢で魚の模様がどう違うか、魚の一生、四季の暮らし、卵の産み方を、趣向をこらして楽しく紹介してくれる。巻末には、魚のいろんな話題を盛り込んだ「ギョギョ魚タイムス」もついている。
とにかく趣向がおもしろい。同じ魚たちを登場させて、夜の様子を紹介した次の見開きに昼の様子をと並べてみせる。種類によって昼に寝たり、夜に寝たり。昼と夜で模様が変わる魚すらある。魚の回遊などの一生の動きは、旅行会社の提案する旅行プランになぞらえて「うおナビ」として紹介。クロマグロ様ご一行向けの「泳ぎの達人をめざす旅」のコメントに曰く“鉄人なみの体が必要です。ふつうのお客様には、けっしておすすめしません。”
絵本と銘打っているが、必ずしも子ども向けではない。むしろ絵本好き、魚好きの大人向けかと思う。ページの隅々、帯の返しにまで趣向が凝らしてあるので、じっくりとながめて、じっくり楽しめる。
●「個体発生は進化を繰り返すのか」倉谷滋著、岩波科学ライブラリー、2005年7月、ISBN4-00-007448-2、1200円+税
2005/9/30 ★
。
●「ミミズのいる地球 大陸移動の生き証人」中村方子著、中公新書、1996年4月、ISBN4-12-101298-4、660円+税
2005/9/19 ☆
そもそも「はじめに」の内容から引っかかる。著者がつとめる多摩丘陵の大学では、かつては構内外で34種見られた野鳥が、スズメとカラス以外ほとんど姿を消してしまったのだとか。原因は著者がいうには、水場をつぶし、サクラの木に殺虫剤をまいたからだとか。確かに、そんなことをしたら鳥は減るだろうとは思うが、スズメとカラス以外ほとんどいなくなるとは思えない。自分がたまたま見ていた水場がなくなったってくらいなんではないのか? ともかく、そして話はレイチェル・カーソンの「沈黙の春」に。ミミズあんまり関係ないな〜。
その後は、著者とミミズとの関わりを中心に、脈絡なく話が続く。第1章「にわのミミズ」は、本当に脈絡がわからない。第2章「動物学的にみたミミズ」は、ミミズの形態と採集法を簡単に紹介。この本で唯一少し役立つ章。第3章「ミミズの生態学」は、ミミズの生態学を紹介しているものの概論ですらなく、ミミズの摂食活動とその人への影響といった程度。第4章「ミミズを追って」は、世界各地へ著者がミミズ採集に行く話。著者の研究の進め方は、とてもプロのミミズ研究者とは思えない。趣味でミミズを研究していただけなのか? 第5章「ミミズをあなどるなかれ」は、ようやく副題の大陸移動っぽい話がでるが、他人の研究を軽く紹介してるだけ。
総じて言えば、副題に惹かれて読み出した人を、おおいに裏切る内容だろう。
●「日本の動物はいつどこからきたのか 動物地理学の挑戦」京都大学総合博物館編、岩波科学ライブラリー、2005年8月、ISBN4-00-007449-0、1200円+税
2005/9/16 ★
京都大学の研究者13名が、現在の日本の動物相がどのように成立してきたかというお題をもらい、それぞれ自由に自分の研究を紹介している。題材は、両生爬虫類、哺乳類、魚類、昆虫、二枚貝と幅広い。京都大学総合博物館が2005年秋に同じタイトルの企画展を開催したが、それのタイアップ企画らしい。
5〜10ページずつと、とにかく一つ一つの話題が短すぎる。イントロの後、図を数枚紹介して、すぐにまとめって感じ。それぞれの研究のごく一部を簡単に紹介したに留まっていて、とっても物足りない。聞く所によると、展示は同じ図を並べた程度とか。まあ、展示ならそれでもいいけど、本にするならもう少し中身を盛り込んで欲しいところ。さらに扱っている分野が(手持ちのスタッフだけで賄っているので仕方ないとは言え)偏りすぎ。
とはいうものの、個々の研究の多くはとても興味深い内容。惜しむらくは総合討論がないこと。各分類群についての話をただ並べるのではなく、全体として日本の動物相の成立についての考察をしたらよかったのに。イントロとまとめの章はあるものの、動物地理学の紹介に終始してしまっている。
●「生きものは昼夜をよむ 光周性のふしぎ」沼田英治著、岩波ジュニア新書、2000年6月、ISBN4-00-500352-4、700円+税
2005/9/16 ★★
著者は、大学院生時代から就職してまで一貫して昆虫の光周性を研究してきた。この本では、自らの研究の歴史と成果を織り交ぜながら、光周性研究の歴史と現状をわかりやすく解説し、残された課題についてもふれられている。
光周性なんて現象は古くから知られているので、もう研究すべき事なんて残ってない。かと思いきや、光周性という現象は驚くほど奥深く、まだまだ色々と研究すべきテーマが残っていることに驚かされる。すでに長い研究の歴史のあるテーマを研究する際、どのように取り組んでいくべきかということ知る上でも参考になるだろう。
昆虫の特定部位の移植実験といえば、高校の生物の時間なんかに出てきたアラタ体がどうしたこうしたが思い出される。あれのお陰で、生理学はすっかり嫌いになったが、この本を読んで、昆虫の声楽的な研究もおもしろいな〜、と思った。学校の授業が、いかに科学嫌い増やすのに効果的かを、確認した気分。
「おわりに」にこんな一文がある。“…ジュニア新書のような本は、功なり名を遂げた年配の先生が…、若い人たちにしみじみと語って聞かせるものだろうと思っていました。”そうか、それで岩波ジュニア新書って、はずれがやたらと多いんだ、と納得。
というわけで、色んな事を考えさせてくれる素晴らしい一冊。
●「素数ゼミの謎」吉村仁著・石森愛彦絵、文芸春秋、2005年7月、ISBN4-16-367230-3、1429円+税
2005/9/2 ★
著者がAmerican Naturalist誌に発表した内容を、可愛い絵を付けて、やさしく(?)説明した本。素数ゼミの暮らしがどんなもんなのかは、よくわかる。でも、やはりモデル部分は、絵を多用したって難しいものは難しい。
素数ゼミに13年ゼミと17年ゼミがいるのは知ってたけど、13年ゼミと17年ゼミそれぞれの中に、出る年の違う複数の個体群を含んでいるとは知らなかった。そして、地域ごとにそれぞれの個体群が住み分けてるんだね〜。捕食者からのエスケープという意味では当たり前かも知れないけれど、不思議な気がする。遺伝的に交流の余地がないんだったら、いくつもの種として考えるべきなのかな?
あくまでも著者の考えを述べてるだけなんだけど、こういう絵本っぽいものにされると、まるでみんなが認めてる事実であるかのような誤解を与えるんじゃなかろうか? その点が少し気になった。
●「田んぼの虫の言い分 トンボ・バッタ・ハチが見た田んぼの環境の変貌」NPO法人むさしの里山研究会編、農文協、2005年3月、ISBN4-540-04258-0、1524円+税
2005/9/1 ★
3人の虫屋が、それぞれトンボ、バッタ、ハチについて、田んぼに絡めて紹介。最後に、トンボの著者が田んぼの生き物全般と、自分たちが行っている田んぼの生物多様性を守る取り組みを紹介する。
トンボ、バッタ、ハチの章の出だしは、それぞれの自己紹介。生い立ちや虫と関わることになった経緯を紹介している。その後は、田んぼの虫の話にはなる。田んぼのトンボの話はおもしろい。田んぼの一年のスケジュールに合わせられるトンボが、水田で繁栄していることがよくわかる。田んぼ生活にぴったり生活史であるカトリヤンマが減っている理由は確かに不思議。バッタと田んぼの関係は、さほど意外でもない内容。ハチと田んぼにどんな関係があるのかと思ったら、田んぼに生息するウンカなどに寄生するハチがいるって程度。ちょっと肩すかしをくった気もする。
こういった本では、各論がおもしろくて、最後のまとめの章がおざなりな事が多いが、この本は各論がいまひとつな割に、最後の章ではそれなりにバランスのとれたビジョンを示している。まだ小さな一歩にすぎないかもしれないが、農家とマチの人間の共通のニーズを探るこうした取り組みが広がる事を願いたい。
本全体としては、最後の章も含めて、「田んぼの虫屋の言い分」というべき内容かもしれない。
●「磯魚の生態学」奥野良之助著、創元新書、1971年9月、ISBN4-422-00014-4、680円
2005/9/1 ★
京都大学に学び、須磨の水族館で働き、金沢大学の教官になった著者が、若かりし頃に書いた正に磯魚と生態学についての本。著者の磯魚の生態や生態学についての想いが、さまざまな形で盛り込まれている。
不思議な構成の本ではある。第1章「けんかする魚」では、水槽で飼われているさまざまな磯魚のケンカを観察して、順位制という社会を考える。水槽の魚を仕事の合間に観察することで、研究してしまう事にいろんな意味で感心する(仕事はしてるのか?とか)。第2章「群れをつくる魚」では、一転して野外の磯魚の生活に目を向ける。驚いたことに、水槽の中の魚の行動を“不自然”と、第1章の内容をバッサリ切り捨ててしまう。第3章「磯にすむ魚」では、磯魚が生活する磯という環境を紹介する。こんなところにイントロが?という感じ。第4章「生活する魚」は、磯魚の生活を、食性を中心に紹介。第5章「適応する魚」では、磯魚の生態学的地位や適応について。
最後の第6章「二つの生態学」は、磯魚を離れて、著者の生態学論。全共闘世代の、そしてその時代の京都大学の生態学関係者である著者の書くことは、今の世代にはわかりにくい部分が多い。生態系生態学に反感を持って、種生態学を主張しているわけだが。ここでいう生態系生態学は、いま多くの人が考えるものとは違っているだろうし、種生態学って今どきは使わない。今や、IBPや可児籐吉を知らない人が多いだろうし、ミチューリンにいたっては知ってる人の方が珍しいだろう。主張はなんとなくわかるし、ほぼ同意できるが、それ以上に、そんな時代だったんだなぁ、という感が強い。
●「わたしのスズメ研究」佐野昌男著、さ・え・ら書房、2005年1月、ISBN4-378-03895-1、1400円+税
2005/9/1 ★
40年にもわたってスズメを研究してきた著者が、スズメ研究のきっかけから、最新の話題まで、自分の研究史を振り返りつつ、明らかになったことを紹介する。
スズメの繁殖生態。過疎になって、人がいなくなると集落から消えるスズメ。スズメのいる島といない島。世界のスズメ類。日本への家スズメの侵入。という具合に、話題は豊富だが、40年かけてこの程度がかという気もする。子ども向けの本を意識しているのか、調査の仕方をけっこう丁寧に説明している割に、調査結果の説明があまりなされない。データを示して、それだけで終わる場合が多いのには驚いた。漂鳥と渡り鳥の分け方、交雑個体の稔性についての説明と、不正確な部分もある。
スズメについて、いろんな事が書いてあるので、それなりにおもしろい。手元に1冊あれば、スズメについて何か調べたい時に便利かもしれない。
●「環境考古学への招待 発掘からわかる食・トイレ・戦争」松井章著、岩波新書、2005年1月、ISBN4-00-430930-1、740円+税
2005/8/26 ★
遺跡から出てきた動物の骨、植物の種子、寄生虫の卵、さらに土壌の分析などから、過去の人々の生活を考えるのが環境考古学(らしい)。著者は、なかでも縄文時代周辺の動物考古学が専門。縄文時代頃の食生活、トイレ、動物の家畜化の歴史などについて、自らの経験に基づいて次々と紹介している。
動物考古学の実際の作業は、動物の骨を同定したり、土壌から寄生虫卵を洗い出したり、といった具合。解明しようとする謎が人々の生活ということで、考古学の分野にはなるんだろうが、していることは生物学や古生物学にきわめて近い。とくに縄文時代人の生態となると、ほとんど古生物学で、境界は微妙。ブタなどの家畜化の話などは、生物学的にもとても興味深い。
話自体は興味深いものが多いが、次から次への脈絡なく話題が移っていく感が強い。新聞連載を加筆してまとめたというので、やむを得ないところか。また、第5章「人間の骨から何がわかるか」、第6章「遺跡保存と環境」は、中途半端に著者の留学体験や主義主張が強く織り込まれ、それまでの章と趣が違ってくる。現代に近い人が関わるとこうなるのか。あと違和感を覚えるのは、薄い根拠から大胆な推測をするところ。帯に「考古学は推理小説よりスリリング」とあるが、たしかに良くも悪くも推理小説みたいなところがある。
●「わっ、ゴキブリだ!」盛口満著、どうぶつ社、2005年6月、ISBN4-88622-330-3、1200円+税
2005/7/25 ★
タイトル通りゴキブリが満載の本。挿入されるイラストも大部分ゴキブリ関係。ゴキブリのイラストすら見たくない人は手にしない方がいいだろう。
まずはゴキブリの生態や嫌われ者ぶりを概観したのち、沖縄島で記録のあるすべてのゴキブリを一日で見つけようと言う「沖縄野ゴキ・プロジェクト」が発動される。参加者は、ゲッチョとスギモッチの二人。妙な二人が妙な事を始めたな〜、という感じ。その後、屋久島、千葉県、京都府などでのゴキブリ探索行などが描かれる。
この本を読んでも、ゴキブリについての体系だった知識は得られない。なにかを研究したり、発見した話でもない。もちろんゴキブリ好きにはならない(現に私はあいかわらずゴキブリが嫌い)。いわば、ゴキブリとの交友録。ゴキブリにもいろんな種類があるんだなぁ、とは思える。
●「チキンの骨で恐竜を作ってみよう」クリス・マクゴーワン著、青土社、1998年8月、ISBN4-7917-5652-5、2200円+税
2005/7/7 ★★
タイトルを見ると、なにやら怪しげな本に思える。が、意外にも中身はまとも。現生生物の中で恐竜の直系の子孫にあたるのは鳥類だから、鳥類の骨をベースに恐竜のミニチュア骨格模型を作成してみようという企画。具体的には、アパトサウルスの骨格模型の作り方が説明されている。
さすがに恐竜の頭骨は鳥の骨を流用できないので、胸骨を切って眼窩の穴を開けてという荒技を使うが、あとは鳥の相同の骨を多少加工する程度で恐竜ができてしまうからおもしろい。模型を作るには、各部分の骨についての知識が必要になってくる。骨やその部分の名称を含めて説明がなされる。さらに模型作成方法の間には、恐竜についての解説もいろいろとはさまれている。この本を見ながら、恐竜模型を組み上げれば、鳥と恐竜の骨格について、かなりの知識が得られるに違いない。
問題は、日本では手頃な丸ごとのチキンが、なかなかファーストフード店では手に入らないこと。むしろ肉屋で丸ごとのニワトリを注文する方がいいらしい。ただ、首の長いアパトサウルスを作るには、3羽分もいるらしいのだが…。