普通の留鳥。おもに海岸に生息し、繁殖するとされるが、繁殖の確認例は多くない。近年、河内長野市や豊能町など内陸部での繁殖例が増えている。また冬期には、その他の内陸でもしばしば観察されている。今後さらに内陸部に繁殖分布が拡大する可能性がある。
全長23cm程度。昆虫などの動物や果実を採食する。一般には海岸部に生息するとされるが、非繁殖期を中心に内陸部での記録も多い。昆虫やトカゲ、カニなどの小動物を捕食する。繁殖期は3月〜6月頃で、岩や建築物のすき間で営巣する。オオルリに似た美しい声で囀る。
イソヒヨドリは日本では一般に海岸部の鳥で、非繁殖期に内陸部での記録があっても、繁殖は海岸に近い場所でもっぱら記録されている。巣場所には、電柱や建物の隙間などおもに人造構造物が利用される。近畿地方での内陸での越冬例としては、京都府の鴨川・天ヶ瀬ダムや滋賀県の琵琶湖などが知られている。
ところが、比較的近年、おそらく1990年代以降になって、近畿地方における内陸部での繁殖例が増えている。イソヒヨドリの食物はムクドリとさほど違いなく、人造建造物に巣をかける点も似ている。将来、ムクドリのようにイソヒヨドリが市街地で普通に繁殖するようになる可能性もあり、今後の動向が注目される。
私自身が確認した情報(【和田】と表示)を中心に、大阪市立自然史博物館へ寄せられた情報(【博物館】と表示)、和田個人が聞いた情報(【個人情報】と表示)、文献情報(【文献】と表示)を基に作製しました。
文献リスト
1.佐野正幸(1984)一庫ダムのイソヒヨドリ.むくどり通信(52): 7.
2.(財)日本野鳥の会大阪支部(1987)大阪府鳥類目録.
3.岡山速俊(1987)川の中流におけるイソヒヨドリの繁殖例.Urban Birds 4(4): 81-82.
4.飯田政治(1994)大阪の鳥.むくどり通信(113): 8.
5.喜納幹雄・嶺井千夏・伊澤雅子(1996)琉大構内におけるイソヒヨドリMonticola solitariusの繁殖行動−ヒナ分けについて−.1996年度日本鳥学会大会講演要旨集:104.
博物館や和田個人に情報を寄せて下さったのは次の方々です。
上田恵介氏、江崎保男氏、大西敏一氏、熊代直生氏、佐藤雅史氏、中村進氏、西中美穂氏、藤田俊児氏、藤田美智子氏、宮川氏
※生息確認と囀りともに、4月から7月に限る。
【大阪府】
●豊能町光風台:能勢電鉄光風台駅前
1999.4.14 マンションの上で囀る【個人情報(宮川)】
●箕面市:阪急箕面駅の近く
1979年頃 囀る【個人情報(上田恵介)】
●摂津市
1997年 繁殖?【個人情報】
●大阪市住之江区:南港野鳥園
1996年 展望塔の屋根裏で繁殖【個人情報(大西敏一)】
●河内長野市:河内長野駅
1997年 繁殖期に生息【個人情報】
●高石市高砂
1986-1987年 ヒナのいる巣を確認【文献2】
●忠岡町新浜3丁目:南大阪湾岸北部処理場
1999.5.28 囀る【博物館】
●岸和田市地蔵浜町:岸和田漁港
1999.6.10 囀る、巣らしきすき間に出入り【博物館】
●岸和田市池尻町:久米田池
1998年 囀る【個人情報(西中美穂)】
●貝塚市:二色の浜海水浴場
1999.7.15 雄1羽確認【博物館】
●田尻町:田尻漁港
1994.5.29 巣らしき場所に盛んに餌を運ぶ【文献4】
●岬町多奈川谷川:大阪府立水産試験場
1999.5.16 囀り、巣らしき場所に出入り【博物館】
【大阪府以外の内陸】
●兵庫県川西市一庫:一庫ダム
1984.5.12 つがいを観察【文献1】
●兵庫県川西市東多田
1980年代後半? 囀る【個人情報(佐藤雅史)】
●兵庫県宝塚市中山五月台5-2-14
1996.5.1 囀る【個人情報(藤田俊児)】
1999.4.9 囀る【個人情報(藤田美智子)】
●兵庫県宝塚市武庫川町1番地:武庫川左岸
1999.4.14 商業ビルに雄1羽【個人情報(藤田美智子)】
●兵庫県三田市弥生ヶ丘
1995年頃-1998年 ビルで繁殖【個人情報(江崎保男)】
1999.4.10 博物館の前で囀る【和田】
2000.4.8 博物館の前で囀る【和田】
●兵庫県神戸市北区藤原台
1998年 団地で囀る【個人情報(江崎保男)】
1999年5月 藤原台小学校で観察【個人情報(江崎保男)】
●奈良県王寺町:JR三郷駅付近
1999.3.20 雄1羽囀る【個人情報(熊代直生)】
●和歌山県粉河町粉河
1999.5.9 雄1羽囀る【個人情報(中村進)】
●和歌山県粉河町粉河中学校
1998.5.17 校舎にある換気扇のフードの中の巣に出入り【個人情報(中村進)】
●和歌山県龍神村
年代不明(1970年以降) 【個人情報】
●福岡県北九州市:紫川中流
1987.6.7 巣内の大きなヒナを確認【文献3】
●沖縄県中頭郡西原町千原1:琉球大学構内
1993-1996年 ヒナが巣立つ【文献5】