12. 18 DEC 2002 14:30~15:00

果実の色が異なるモチノキ属2種の鳥類による種子散布
辻田 香織 (京都大学 森林生物学研究室 学士過程)

 鳥類が果実を選ぶ基準として、これまで栄養、味、色、大きさ、果実中の種子の割合、熟す季節などが考えられてきた。これらのうち特に色に関しては、赤、黒、青、橙、紫、白など多様な色の果実があるなか、赤と黒の果実が鳥散布果実中に占める割合の高いことから、古くからこの2色が果実食鳥に好まれる色だとされてきた。
 しかし、果実の色において多形性をもつ自生の植物種について、その鳥類による種子散布を比較し、果実の色の違いが植物の種子散布において実際にどのような影響をもたらすかを調べた研究はあまりない。
 そこで本研究では、赤い実をつけるモチノキ科モチノキ属ウメモドキIlex serrataと、その品種で白い実をつけるシロウメモドキI.leucocarpaの2種を用い、その種子散布のされ方の比較を行っている。
 手法は、上記の2種を隣り合わせに植栽したもの6組について、定期的な果実数のカウントと直接観察から、色の異なる果実が誰によってどのように選択されなくなっていくのかを見ている。また、それらの現象を裏づける要因を考えるために、鳥の目から見たときの果実の目立ちやすさや、サイズ、果実中の種子の割合、含水率、糖分含有率など果実の特性の分析に加え、発芽率や、結実フェノロジーについても調べている。
 現在調査を行っている段階でまだデータが出揃っていないため、今回の発表では現時点までに出ている結果をお見せするのに止めさせていただくが、今のところ、1)主要な散布者はヒヨドリで、なわばり内の決まった個体がある程度頻繁に訪れるため、色よりも、学習によってその時点でよりおいしい果実がある方を選択しやすいが、2)その他の種のたまにしか採食に来ない鳥は赤色の果実を選択しやすい、という傾向があるように思われる。