フィールドノート6
石垣のイヌノフグリ
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イヌフノグリはオオバコ科(古い分類体系ではゴマノハグサ科)の越年草で、かつては普通にあったそうですが、今ではすっかり減ってしまって、なかなかお目にかかれない植物です。このイヌノフグリ、石垣っぽい場所に生えると言われますが、2014年3月末に滋賀の某所で見たイヌノフグリは、確かに石垣の隙間に生えていました。
- 三浦励一(2003)京都大学周辺におけるイヌノフグリの分布とアリによる種子散布.雑草研究 48(3):140-142.(論文へのリンク).
- 高倉耕一(2011)石垣に登ったイヌノフグリ:外来種の繁殖干渉による在来草本の形質分化・置換.日本生態学会第58回全国大会要旨.(要旨へのリンク).
- Takakura K (2013) Two-Way but Asymmetrical Reproductive Interference between an Invasive Veronica Species and a Native Congener. American Journal of Plant Sciences 4(3):534-542. (論文へのリンク).
- 岡本素治(1987)石垣の好きな植物.Nature Study 33(4):2-3.
石垣の隙間に生えるイヌノフグリ.
花は咲いていませんでしたが、すぐわきに敷いてある砂利の中にも。
砂利の隙間から生えるイヌノフグリ.
周りの花壇や路傍には近縁な外来植物のフラサバソウやオオイヌノフグリが生えていて、ここまできれいに細かい生育地が違うと「お見事!」と唸ってしまいました。
すぐわきの花壇に生えるフラサバソウ.
すぐ近くの路傍に生えるオオイヌノフグリ.
観察した自生地ではフラサバソウとオオイヌノフグリも微妙に生育適地が違いそうでした。
京都市の京都大学周辺でも、イヌノフグリは石垣周りに多いそうです(三浦 2003)。 2014年にうちの博物館で開催した「ネコと見つける都市の自然」でも、大阪市内で石垣周りに生えるイヌノフグリを紹介しました。 高倉(2011)の学会講演によると瀬戸内海の島嶼部ではイヌノフグリが石垣ではなく路傍に生えているそうです。 在来植物のイヌノフグリは外来植物のオオイヌノフグリから繁殖干渉を受けるという研究もあり(Takakura 2013)、繁殖干渉が生育特性に影響しているんじゃないか?なんてことも疑われています。もしそれが本当なら、外来植物のオオイヌノフグリが在来植物のイヌノフグリを石垣に追いやったということになります。 身近な植物でもなかなか奥が深い。
「イヌノフグリは石垣の植物」っていうのは最近言われ出したことかと思っていましたが、実は僕の前々任者の岡本さんが博物館の友の会会誌 Nature Study の1987年4月号で「石垣の好きな植物」としてイヌノフグリを紹介しています。イヌノフグリは石垣が好きと最初に言いだした人は誰なんでしょうか?暇なときに文献を調べてみたいと思います。
【引用文献】
2015年1月23日 横川昌史
Last update was 23. January. 2015
Copyright(c)2012 Masashi Yokogawa All Rights Reserved.
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