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本の紹介「0.1mmのタイムマシン」

「0.1ミリのタイムマシン 地球の過去と未来が化石から見えてくる」須藤斎著、くもん出版、2008年11月、ISBN978-4-7743-1436-5、1400円+税


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【中条武司 20090610】【公開用】
●「0.1ミリのタイムマシン」須藤斎著、くもん出版

 きれいな幾何学模様からできている珪藻化石。珪藻化石は環境指標や時代決定に非常に有効なだけでなく、突き詰めていくと地球の歴史も紐解く事ができる。著者は普通の珪藻化石だけでなく、“特徴がない”とされる休眠胞子の分類にも手を出し、その数の変化から地球全体の海洋循環まで話は広がる。さらに世界初の北極海での深海掘削への参加と、著者のフィールドはどんどん広がっていく。
 対象読者は小学生高学年から中学生くらいを想定しているのだろうか。しかし、大人が読んでも内容に不足はない。化石といえば恐竜やアンモナイトという大型化石ばかりがもてはやされるが、研究の醍醐味はみための派手さだけではないと実感させられる。

 お薦め度:★★★★  対象:地球の歴史やなぞに迫りたい人

【西村寿雄 20090209】
●「0.1ミリのタイムマシン」須藤斎著、くもん出版

 この本は、珪藻の化石研究物語である。
 著者は、不可解な形をもった珪藻に目を付ける。ふつう珪藻は、中心部に細かな網目模様を見せる。しかし珪藻の中にはいくつか、ほぼ丸い輪だけが見えて中の模様はぼんやりとしか見えない珪藻がある。その珪藻がどうやらある地層の中に大量にまじっていることに著者は気づいた。それは、じつは栄養がなくなった状態の珪藻だった。このような珪藻は〈休眠胞子〉で、著者は〈お休みケイソウ〉と名付けて注目した。この本は、この〈お休みケイソウ〉の研究物語でもある。著者は、まず、光学顕微鏡と電子顕微鏡を駆使して一つ一つ〈お休みケイソウ〉の特徴を調べていく。なかなか根気のいる作業だ。やがて、〈お休みケイソウ〉の研究成果を携えて北極海の掘削航海に参加する。北極海海底地層の研究から地球のなぞ解きに研究の巾を広げていく。著者の研究物語でもある。

 お薦め度:★★★  対象:ミクロな化石好きの人

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