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本の紹介「アンティキテラ」
「アンティキテラ 古代ギリシャのコンピュータ」ジョー・マーチャント著、文藝春秋、ISBN978-4-16-371430-1、2009年5月、1900円+税
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【西村寿雄 20111025】【公開用】
●「アンティキテラ」ジョー・マーチャント著、文藝春秋
1901年、ギリシヤの小さな島アンティキテラ沖合に沈んでいた難破船から貴重な彫刻や壺とともに、奇妙な機械が見つかった。いくつもの歯車の断片をのぞかせるその機械、はたしてギリシヤの人たちは何に使っていたのだろうか。時計か計算機か天体運行機か、1900年代の科学者の謎解きが続く。やがて、X線技術などから、その機械がより複雑な歯車の組み合わせであることが浮かび上がってきた。複雑なカレンダー・コンピューターか、「食」を予測する機械か。ついにその謎が解き明かされる。古代ギリシヤの崇高な天文学も浮かび上がる。2000年も前の機械の謎が解き明かされるまでの、考古学的、技術的推理が壮大なドラマで描かれている。人間の叡智が堪能できる推理科学読み物である。
お薦め度:★★★★ 対象:古代文明と謎解きに関心のあるみなさん
【六車恭子 20110701】
●「アンティキテラ」ジョー・マーチャント著、文藝春秋
1901年ギリシャの小さな島の沖あいから引き上げられた難破船の積み荷の奥から奇怪な機械が姿を現した。収集物の彫像や壷からそれらは2000年も前のものであることだけは確かだった。不完全なこの手のひらに乗るアンティキテラの機械の破片ははたして何だったのか?古代ギリシャの知が実現していた高みが現代の科学に挑んだ挑戦の100年の謎解きの歴史がここにある。説明の着かないものは人々を惹きつけてやまないものだ。ブロンズの精巧な歯車がくみ合わさった機械を当初「星を捉える道具」と見立てた。放射性炭素年代測定法で紀元前260年〜180年に、考古学の見地を加味すると、船は紀元前70年から60年にしぼられてゆく。クラークが「カレンダー・コンピュータ」といい、ライトは「天体運行儀」と表現し、フリースは「食を予測する機械」と捉えた。最先端の技術を駆使して、アンティキテラの起源を探ることはそのまま人類の科学技術の起源をたどることだった。そして古代ギリシャ人の天界と行き来した日々を心に刻むひとときにもなりえた。
お薦め度:★★★★ 対象:埋蔵品探しに興味のある人
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