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本の紹介「朝日連峰の狩人」

「朝日連峰の狩人」志田忠儀・西澤信雄著、山と渓谷社、1991年9月、ISBN4-635-17054-3、1456円+税


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【瀧端真理子 20031123】
●「朝日連峰の狩人」志田忠儀・西澤信雄著、山と渓谷社

 小学校5年のころからイタチワナを仕掛け、15歳からクマ狩りをしてきた志田忠儀さん。大正5年に山形県の大井沢に生まれ、ゼンマイ採り、釣り、キノコ採り、猟で暮らしてきた志田さんの生きざまを、朝日鉱泉を再興した関西生まれの西澤さんが聞き書きしてまとめた貴重な記録。
 出稼ぎにも行かず、寒河江ダムの工事へも行かず、テンを捕れば、農家の皮屋が先に買おうと夜通し歩いてやってくる・・・・。「結局、クマ狩りそのものが重労働なさ」「ここで充分の生活していた人が出て行ってかえって大変だという話も時々聞くしね」「他の人みたいに、死体だから背負うのはだめだとかいうこともない。」遭難救助にまつわる話も含め、キツネ、タヌキ、ウサギ、イタチ、ノスリ、さまざまな動物たちと狩人の出会いが4メートルの積雪の中、静かに語られていく。

 お薦め度:★★★★  対象:自然と人とのかかわりに関心を持つ人

【六車恭子 20040423】
●「朝日連峰の狩人」志田忠儀・西澤信雄著、山と渓谷社

 みちのく朝日連峰、その山懐、大井沢に生まれ、戦時下の出兵の7年間以外は山を離れたことがないという志田さんの狩人としての生の語りが魅力的だ。
 山歩きは小学2年生から、クマ狩りは15歳から、昭和23年ころから朝日連峰の案内人となり、昭和45年からは自ら旅館も開業する、山の大自然を友にした半世紀の移り変わりがここにはある。4月の薪切り、半ばはクマ撃ち、山菜採り、夏は釣り、秋のキノコ採り、四季とともに生活する楽しみが満載だ。「ワナをかけるのにいい場所は財産みたいなもの」「冬眠から覚めたばかりのクマの胆は大きい」「ウサギ汁もクマ汁もガラごと煮るのがうまい」「ワナを仕掛けるのは雪の降っている日がいい」「秋のアナグマは牛肉よりうまい」「一年中山の中にいたので山のことを覚えてしまった」達人の語りだ。そして大型林道建設でブナ林が消える反対運動の旗頭としての戦いはあまりにも有名。聞き手は朝日鉱泉の主人、西澤信雄氏。

 お薦め度:★★★  対象:聞く耳を持ちえる人ならだれでも

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