友の会読書サークルBooks
本の紹介「足環をつけた鳥が教えてくれること」
「足環をつけた鳥が教えてくれること」山階鳥類研究所著、山と渓谷社、2024年11月、ISBN978-4-635-23019-3、1800円+税
【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
[トップページ][本の紹介][会合の記録]
【西本由佳 20250420】【公開用】
●「足環をつけた鳥が教えてくれること」山階鳥類研究所著、山と渓谷社
鳥類標識調査の歴史と、どうやって行われるか、どんなことが分かるか、1トピック見開き2pほどの文と図表でわかりやすく解説してくれる本。捕獲した鳥に足環をつけ、次にその鳥がいつどこで見られるか。そういう単純な事実をつなぎ合わせていくことで、鳥たちの行くところ、通るところ、移動距離、寿命などがわかる。そこから、どんな鳥が減っているか増えているか、その原因は何か、鳥たちが暮らしていくのにどんな場所が重要かを考えることができ、国境を越えて移動する鳥たちの保護を話し合うことができる。人には鳥の個体を識別することはできないし、自分の周りの鳥がどうしているか、なんとなくしかわからない。個体を識別し、データを積み重ねていくことが鳥たちを守ることにつながっていく。
お薦め度:★★★ 対象:足環って何のためにしているの?という人に
【里井敬 20250423】
●「足環をつけた鳥が教えてくれること」山階鳥類研究所著、山と渓谷社
そっくりな見かけの鳥に足環をつけることによりいろいろな事が分かります。渡り鳥の渡りのルートから東京と福岡のユリカモメの繁殖地が違う事や、毎年来るツバメは同じかどうか等。ツバメの寿命は成鳥でも2・3年なので、同じ鳥やつがいが帰ってくることは少ないです。小鳥は短命なものが多いが、海鳥は長く、大型のオオミズナギドリで36年以上、野生のコアホウドリで72才以上の記録もあります。絶滅危惧種のトキなどの積極的な保全管理にも、個体識別が役立っています。標識調査がデンマークで始まって125年。戦争で中断しましたが日本で100年です。鳥の性別、年齢による行動の違いや、そこにどんな鳥がいるかを知ることにも有効です。そのために鳥類に標識する調査員(バンダー)には専門性と、かすみ網の操作を含めた技術が必要です。
お薦め度:★★★ 対象:鳥の標識調査に興味がある人と鳥を見るのが好きな人
【冨永則子 20250422】
●「足環をつけた鳥が教えてくれること」山階鳥類研究所著、山と渓谷社
1924年6月30日、黒田家の鴨場近くの森で、ゴイサギの雛100羽にアルミニウム製の足環をつける調査が行われた。『我国に於て此種の調査は之れを以て始めてとする』と宣言された試みから、日本の標識調査の歴史が始まった。本著は、その100周年を記念して、鳥類標識調査の歩みと成果についてまとめてみようという意図を持って出版された。
標識調査で分かること。渡り鳥の経路、鳥の寿命、鳥たちに迫っている脅威などなど、4ページに一つのテーマがまとめられていて読みやすい。標識調査が100年の間に積み上げてきた歴史や最前線の研究成果まで幅広く取り上げられている。
世界的にみると、足環を“リング”と呼ぶか、“バンド”と呼ぶかによって、調査者のことは“リンガー”あるいは“バンダー”という呼び方になるそうだ。日本では足環は“リング”と呼び、調査者のことは“バンダー”と呼ぶ。なんとも日本的だなぁと妙に納得してしまった。
お薦め度:★★★ 対象:鳥の暮らしに興味がある人に
【和田岳 20250423】
●「足環をつけた鳥が教えてくれること」山階鳥類研究所著、山と渓谷社
山階鳥類研究所所属の14名が、それぞれ得意な話題を分担して書いている。若手が中心な中で、最年長の方もけっこういっぱい書いている。
内容は、鳥類標識調査とそこから明らかになったことが軸、そしてそれは必然的に山階鳥類研究所の歴史と活動の紹介になっている。第1章は渡りの調査、第2章は寿命の話。鳥類標識調査の成果がモリモリ。第3章は、鳥に迫る危機の話。ここでも鳥類標識調査に絡めようとするので、かなり偏った内容になっている。カシラダカの減少と、ツバメの渡りのタイミングの変化は分かりやすいけど、トキとアホウドリの話はちょっと違う気がする。第4章は、標識調査で判ることの話なのだけど、渡りと寿命の話はすでに紹介したので、性別・年齢、隠蔽種、共通感染症など、鳥を手にして判ることを紹介。
鳥に詳しい人でも、どこかしら勉強になる内容。
お薦め度:★★★ 対象:鳥が好きだけど、鳥類標識調査のことはあまり知らない人
【萩野哲 20250415】
●「足環をつけた鳥が教えてくれること」山階鳥類研究所著、山と渓谷社
鳥に足環を装着する試みは日本では1924年に始まったので、100年経過したことになる。目的は鳥類の個体識別、移動距離、生存期間、増減など、様々な情報を得ることである。標識調査は、捕獲許可を持つ調査員(バンダー)が主にかすみ網で捕獲した野鳥に環境省が提供する金属足輪などを装着し、種名、性別、年齢などを記録した後、速やかに放鳥する手順で行われる。1961年から2022年までに651万超に標識放鳥され、4万超が回収されたそうだ。この調査の結果、各種鳥類の渡りのルートや越冬地の発見、台風を予測する能力の発見などが成果としてあがっている。調査の際の種名や性別、年齢査定などの苦労さも伝わってくる。
他種である鳥類の保護を行おうという人類の行いは優れた英知である。その反面、多大な命の危険があるとはいえ、国境も自由に越えることができる鳥類と比較して、歪んだ国際情勢などでそんなこともできない人類は何と愚かな存在だろうか、と書いてあるような気がする。
お薦め度:★★★ 対象:具体的な鳥類の標識調査とその成果を知りたい人
[トップページ][本の紹介][会合の記録]