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本の紹介「あたらし島のオードリー」
「あたらし島のオードリー」川上和人文・箕輪義隆絵、アリス館、2024年10月、ISBN978-4-7520-1116-3、1600円+税
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【森住奈穂 20250214】【公開用】
●「あたらし島のオードリー」川上和人文・箕輪義隆絵、アリス館
小笠原諸島は西之島生まれのカツオドリの女の子、オードリー。ある日、近くの海で噴火が始まった!相次ぐ環境の変化にめげることなく、巣作り、抱卵を始めるものの、幾度もの噴火によって島は火山灰におおいつくされ、生きものはまるでいなくなってしまった。でもオードリーたちは、再びあたらし島で巣作りを始める。自然のなかで海鳥が果たす役割が余すところなく描かれており、絵もとても美しい。何よりドラマチック!西之島研究のワクワク感も伝わってくる。
お薦め度:★★★★ 対象:西之島に注目しているひと
【里井敬 20250213】
●「あたらし島のオードリー」川上和人文・箕輪義隆絵、アリス館
海の中の小さい島の近くで、火山の噴火がありました。けむりがもくもく出て、「あたらし島」ができました。あたらし島は成長して小さい島とくっつきました。かつおどりのオードリーは幼なじみのガステルと、あたらし島で巣を作って卵を産みます。しかし台風が来て巣も卵もひなもみんな流されてしまいます。波打ち際に流された死んだひなたちは小さな虫のえさになりました。そのあとも何度も巣を作りますが、ふたたび溶岩が流れ、小さな島も覆われてしまいました。何度も巣は嵐により水に沈みましたが、あたらし島に残った鳥たちが巣を作りました。うまく育つこともあればうまくいかないこともありました。鳥たちはたくさん糞をし、鳥や魚の死骸も養分になり、いつのまにか緑が広がっています。100年後、春になるとオードリーに似たカツオドリが巣を作り始めました。
西の島をモデルにした、破壊と再生の物語です。まだまだ破壊と再生は続きます。
お薦め度:★★★ 対象:火山の島の再生に興味がある人
【西本由佳 20250209】
●「あたらし島のオードリー」川上和人文・箕輪義隆絵、アリス館
太平洋に浮かぶ小さな西之島が、近くにできた島にのみこまれ、生きもののいない新しい島になった。昔の西之島で暮らしてきて、新しい島でも暮らしていくことにした海鳥たちの話。海鳥たちは陸の環境に頼らず、逆に、フンや落とした魚、ときにはその死によって、海からの栄養を陸に持ち込む。そうした栄養を使って、様々な生きものが新しい島に土壌や植生をつくっていく。できたばかりの島がこれから成長していく様子を見守りたい。
お薦め度:★★★ 対象:『たくさんのふしぎ』が好きなら。自然の営みについて理解を深めたい人、海鳥や西之島について知りたい人
【和田岳 20241219】
●「あたらし島のオードリー」川上和人文・箕輪義隆絵、アリス館
西之島でうまれたカツオドリのメス、オードリー。西之島で再び噴火が起きて、2年経って、かつての営巣地の大部分が溶岩の下に。一部に残った“残され島”でカツオドリたちは営巣をはじめるが、台風がやってきて、再び噴火が起きて、繁殖に失敗。しかし、再びカツオドリたちは、西之島に戻ってきて、営巣を試みる。
西之島で繁殖していた海鳥、カツオドリの営巣場所選択と巣づくり、海鳥による島間の種子散布。随所に情報が盛りだくさんで、詳細を読み取るという楽しみがある。
うしろの4ページに、絵本を離れて2013年以降の西之島で起きたことが丁寧に紹介されている。裏表紙の見返しには、2013年から2020年の西之島の島の形の変化が図示されている。とても勉強になるし面白い。
お薦め度:★★★ 対象:海鳥あるいは新しい島の生態系に興味がある人
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