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本の紹介「アユの話」
「アユの話」宮地伝三郎著、岩波新書、1960年6月、ISBN4-00-416097-9、480円+税
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【六車恭子 20050317】【公開用】
●「アユの話」宮地伝三郎著、岩波新書
なんといっても川魚の王は今も昔もアユである。川の中流域で”なわばり”社会を営むアユは一生の内に海と川を行き来し、両側回遊性を持つ。古今の文献や絵画に描かれたアユにまつわる文化誌に始まり、「アユ苗」放流にまつわる川の包容力をはかる「生息可能密度」を明らかにする、生態学の終局目標にむけての10年の研究の成果をまとめたものだ。
アユの成長は食物の全量ではなくアユの社会制度にあることを発見していく道程は説得力がある。農業に較べて遅れている水産業の未来はこの解きあかされた「アユの生活史」の詳細が一里塚になるだろう。
お薦め度:★★★★ 対象:生態学をめざす人々に
【和田岳 20050319】【公開用】
●「アユの話」宮地伝三郎著、岩波新書
ほとんど半世紀も前に、京都大学の動物生態研究室が取り組んだアユについての研究成果を紹介しています。川にいったい何匹のアユがすめるのか? それを、アユが食べる藻類の量や、なわばりを持つアユの社会から考えていきます。
瀬でなわばりを持ったり、淵で群れになったりして暮らしているアユ。なわばりによって、アユの成長が保障されている一方で、個体数が多くなりすぎると、なわばりが崩壊してみたり。ダイナミックに変わるアユの社会構造が描き出されます。大昔に行われた研究だが、その内容は決して古くなっていません。
琵琶湖のコアユを日本各地に放流することは、河川生態系を考える上で問題が多いと思うが、この本ではとっても肯定的。今読むと、そこがとても気になるところ。
お薦め度:★★★ 対象:生態学を勉強したい人
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