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本の紹介「ビールの自然誌」
「ビールの自然誌」ロブ・デサール&イアン・タッターソル著、勁草書房、2020年1月、ISBN978-4-326-75056-6、2200円+税
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【萩野哲 20240131】【公開用】
●「ビールの自然誌」ロブ・デサール&イアン・タッターソル著、勁草書房
食べ物や飲み物の紹介本は通常、それらの業界や愛好家が書いていることが多いが、本書の2人の著者、翻訳者の1人、それに解説者は系統進化生物学者である点、異色である。ビールの歴史、原料、作り方、これを感知する五感、ビール腹を含む効果、そしてビールの系統樹に至って本書の独特さを知るだろう。それでも彼らがビール大好きなのが間違いないのは、各章の最初のページに紹介されている銘柄の解説からも明らかである。純粋令をほぼ忠実に守ったドイツのビールの多様性が低いのもよく理解できた。楽しんで飲もう(違った→読もう)じゃないか!もちろん、エールとラガーの違いぐらいは覚えよう。
お薦め度:★★★ 対象:もちろんビール好き
【里井敬 20240425】
●「ビールの自然誌」ロブ・デサール&イアン・タッターソル著、勁草書房
エジプトでビールは経済と衛生からうまれた。古代ローマではワインは天上の甘露と、ビールはひどい味で貧民の飲み物と言われた。
ビールを作っているのは水・大麦・酵母・ホップである。酵母はビール、パン、ワイン共に同じ科のサッカロミセス・セレヴィシェという種であるが、清酒用、ワイン用、パン用の酵母が初めて発酵に使われてから、別々に保たれてきた。中でもビールは製法から利用可能な栄養が豊富な「幸せ」な時期が長く、その間無性生殖をしていて、生殖能力を失った家畜化された菌種が多い。ビールを作る水はあとから色々足していけるから軟水が良いらしい。
アルコールの代謝に関係するADHやALDHはビタミンAの代謝からの流用である。アジア人に多いALDH2変異型はアルコールですぐに顔が赤くなる遺伝子で、CYP2EIはアルコールですぐほろ酔いになる遺伝子である。これらの遺伝子があるとアルコール忌避になるのでアルコール依存症になりにくい。
ビールと五感、ビールの未来など色々な話題が書かれている。
お薦め度:★★★ 対象:ビール好きの人
【中条武司 20240425】
●「ビールの自然誌」ロブ・デサール&イアン・タッターソル著、勁草書房
この本はビールが好きな人しか面白くない。飲み会で最初に何となくビールを頼む人ではなく、完全にビールが好きな人。
と、前置きを述べたところで、ビールの歴史からその製法、材料ごとの味そして化学的な性質、ビールの進化とその分類(生物学の分類方法に基づいている!)、そして未来のビールがどうなるかを大真面目に述べた本。IPA(インディアペールエール)の由来って、インドに運んでいたからついた名前だとは知らなかった。著者らは大手のビール製造会社が嫌いなようで、クラフトビールの復権とその多様性に期待しているのがよくわかる。この本を読むと、多少値段が高くても飲み会ではクラフトビールを頼もうかという気分になる。
お薦め度:★★★ 対象:ビール好きな人
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