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本の紹介「僕には鳥の言葉がわかる」
「僕には鳥の言葉がわかる」鈴木俊貴著、小学館、2025年1月、ISBN978-4-09-389184-4、1700円+税
【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
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【坂田洋乃 20250424】
●「僕には鳥の言葉がわかる」鈴木俊貴著、小学館
シジュウカラが「言葉」を話し、「文」を作ることを世界で初めて科学的に証明した著者によるエッセイ。著者は学生時代、カラ類の鳥が餌を見つけると群れの仲間を呼び寄せていることを発見する。一見利他的に見える行動も、膨大な観察と実験を通して、実は捕食者から効率的に身を守る生存戦略のひとつであると気づく。その後、研究対象を特に多彩な鳴き声を持つシジュウカラに絞り、親鳥が「言葉」を使って雛にヘビの存在を知らせたり、警戒して集まるよう仲間に呼びかけることをユニークな実験で次々と立証していく。研究は世界で高く評価され、やがて「動物言語学」という新たな学問分野の立ち上げにまで発展。著者がこの研究テーマに出会ったことが、運命的にすら思えてくる。読みやすい文体で、シジュウカラの言葉のヒミツとともに、観察→仮定→実験を繰り返して結果を導く研究者の生態も分かるとても楽しい本。最後に実際の鳴き声を聴けるQRコードが付いているのも嬉しい。
お薦め度:★★★★ 対象:動物が何を話しているか想像したことがある人
【里井敬 20250423】
●「僕には鳥の言葉がわかる」鈴木俊貴著、小学館
シジュウカラの「ヂヂヂヂ・・」は集まれ。ヤマガラの「ニーニー」もコガラの「ディ^ディー」も集まれ。カラ類の鳥はお互いの集まれに反応して種を超えて集合する。初めに集合をかけた鳥が見つけた餌をみんなで啄み、タカやヘビなどの天敵をみんなで警戒する。「ジャージャー」はヘビでその声を聴くと、まだ巣立ち前だったヒナまで巣から飛び出す。「ヒヒヒ」はタカ。ヘビの時とは違ってヒナは巣の奥でひそんでる。シジュウカラは2語文も作る。「ピーツビ・ヂヂヂヂ」は警戒して集まれ。
人間だけが言葉を持つ特別な存在ではない。生物進化の中で言語もゆっくり変化してきた。『動物言語学』が1歩をふみだした。
お薦め度:★★★★ 対象:鳥のおしゃべりに興味のある人
【冨永則子 20250422】
●「僕には鳥の言葉がわかる」鈴木俊貴著、小学館
「僕には鳥の言葉がわかる!」いきなりそんなことを言われたら『はぁ?!このヒト、なに言いだすの?大丈夫?』って思いませんか? でも、鈴木さんには分かるんです。何だったら、私達でも分かるようになるんですよ。
鈴木さんの主な研究対象はシジュウカラ。街中でも見かける身近な鳥だ。鈴木さんはシジュウカラの行動を観察しているうちに、シジュウカラは鳴き声を“言葉”として理解しているのではないかと感じ、以来、18年間も観察と考察を積み重ね、シジュウカラには言葉だけではなく、文法やジェスチャーまであることを解明していく。ごく普通の双眼鏡とレコーダー、そこに、ちょっとしたアイデアで進められてきた研究成果は、世界中から注目され、称賛され、とうとう『動物言語学』という新しい学問分野を世界で初めて立ち上げるまでになった。
本文中のイラストも、ご本人による。国際的な学会の発表でも使われ好評を得ているイラストは、かわいくて分かりやすい。
お薦め度:★★★★ 対象:鳥好きさんはもちろん、どなたにも!
【西村寿雄 20250420】
●「僕には鳥の言葉がわかる」鈴木俊貴著、小学館
鳥好きの著者がついに野鳥の鳴き声を鳥の「ことば」であると気付き、その過程を論文にまで仕上げていった様子がドキュメンタリー風に書かれている。野鳥の鳴き声はだいたい決まって聞こえるが、とりわけシジュウカラは「ジャージャー」とか「ヂヂヂヂ」などいくつもの違った鳴き声を出すのはよく知られている。そこに著者は注目し、シジュウカラは意思を伝える「言葉」として鳴きかわしていることを〈実験〉を通じて明らかにしていった。その過程が具体的に語られていて楽しく読める。ウグイスも何かしゃべっているのかな。
お薦め度:★★★★ 対象:鳥の言葉に興味ある子どもから大人
【萩野哲 20250415】
●「僕には鳥の言葉がわかる」鈴木俊貴著、小学館
古代から現代まで、言葉を持つのはヒトだけだと決めつけられていたが、著者はシジュウカラたちに言葉があることを発見した!発端はこれらの鳥が餌を見つけた時に仲間を呼ぶ鳴き声を見つけ、混群を形成したこと。一見利他的に見えるが、捕食者から効率よく自らを守る結果となっている。そして、捕食者の違いによって警戒する鳴き声の違いがあることに気付いた。それは捕食者によって異なる対応を取る必要があるからだ。また、混群を形成する鳥の種類によって警戒声も違うのに、鳥たちはそれを理解している。2語ながら、文章も作ることができる。すごい大発見!(特別付録QRコードで鳴き声が試聴できる)。
お薦め度:★★★★ 対象:井の中の蛙人間
【和田岳 20250424】
●「僕には鳥の言葉がわかる」鈴木俊貴著、小学館
シジュウカラの言葉の研究で、いまやとても有名な著者の最初の一般向け単著。学生時代や研究のエピソードを交えつつ、著者がカラ類の言葉を解き明かしていく課程が、順に描かれる。
カラ類の「集まれ!」の声、ヘビの存在を知らせて巣にいるヒナに飛びださせる声を野外実験で解明。ヘビの存在を知らせる警戒声を、見間違い実験で証明。そして、ルー語実験や「ぼく・ドラえもん」実験による文法の存在を証明。
鳥が会話していること、ある程度鳥を観察している多くの人は気付いている。それを科学的に実証しようとした著者は希有な存在。そして、その証明のためのトリッキーとも言えるアイデアは、著者の優秀さを端的に示していると思う。テクノロジーではなく、アイデアで問題に取り組んでいくところが格好いい。膨大な量のフィールドワークと野外実験もスゴイ。
お薦め度:★★★★ 対象:鳥の言葉が気になる人
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