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本の紹介「分類という思想」

「分類という思想」池田清彦著、新潮選書、1992年11月、ISBN4-10-600429-1、1100円+税


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【瀧端真理子 20031228】
●「分類という思想」池田清彦著、新潮選書

 分岐分類学派への批判を中心に、生物分類の歴史と現代分類学の流れを大局的に見渡した本。現代分類学は、著者によれば、表形学(数量分類学)、進化分類学(総合分類学)、分岐分類学に分けられる。著者はこれらの現代分類学の欠点を指摘した上で、新しい分類学を構築するための模索を行っている。
 著者は客観的分類群は、時間を捨象した同一性によってコードされるべきであり、種より上位にこうした同一性を持つ不変の分類群を想定すべきことを主張している。分岐分類学は、歴史(分岐順序)のみに従って分類体系を主張する。しかし、新しい高次分類群を生み出す重要な分岐と、単なる種レベルの分岐は、分岐が起こる順序には全く関係がないし、系統を推定するために用いる最節約原理も確率的な確かさを保障するに過ぎず、ある系列の生物の構造上の大変革前後の分岐関係を正しく導きだすものではない、というのが著者の主張である。
 難解な分類の話を、一般向けに興味深く語ろうとする意欲作だが、一般人にとって、ここで語られる論理構成の当否を判断しつつ読むのは、かなり疲れる作業ではないだろうか。

 お薦め度:★★★  対象:分類学の見取り図を知りたい人

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