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本の紹介「分類思考の世界」

「分類思考の世界 なぜヒトは万物を「種」に分けるのか」三中信宏著、講談社現代新書、2009年9月、ISBN978-4-06-288014-5、840円+税


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【六車恭子 20100226】【公開用】
●「分類思考の世界」三中信宏著、講談社現代新書

 著者は「生物系統学」の研究者で、いわゆる分類学徒のように専門の生き物を追いかける日々からはほど遠いだろうか。「系統樹思考の世界」につぐ本書はウィリ・へニック学会の年次大会に参加し続けたここ10年来の著者の思念にとりついた、その「種」にまつわる問題に真っ向から挑んだ著者ならではの思考の回路が明文化された意欲作だ。
 この世界を理解するには時空的な変化を切り取る「タテ思考(系統樹思考)」とある時空平面での「断面図」のパターンを論ずる「ヨコ思考(分類思考)」が要石である、とする著者がくりだす系統樹や家系図という「滅びしものたちの墓石譜」ともとれる生物学者たちの知的格闘史がある高みからのぞめる構造をしている。分類するは人の常・・・「分類する者」たちが魅力的に語られた、もう一つの遺跡めぐりともとれる書である。

 お薦め度:★★★★  対象:哲学的思考に興味を持つ人

【和田岳 20091216】
●「分類思考の世界」三中信宏著、講談社現代新書

 「系統樹思考の世界」に続く、系統学者たる著者の講談社現代新書第2弾。前作が系統樹思考のススメだったのに対して、こちらではヒトはどうしても分類思考に陥ってしまうんだよな〜、という内容。著者の考えや発見を紹介する本というよりは、種に分けたがるヒトの傾向、それにともなう色々な問題を紹介した一冊。
 あとがきに言い訳的に書かれているが、「種問題」を解決するのが本書の目的ではない。それを期待して読んだ向きには不満かもしれない。でも、メタファー、メトニミー、心理的本質主義。形而上学から認知心理学までくり出して「種問題」を説明してくれる本書は、とても勉強になる一冊。ただ、これを楽しく読むにはそれなりの予備知識が必要。そして、わかりやすい”答え”がないのが、ベストセラーにならない所以か。

 お薦め度:★★★  対象:種とは何かという問題に興味のある人、あるいは、えっ種に何か問題があるの?と思った人

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