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本の紹介「カッコウの托卵」

「カッコウの托卵 進化論的だましのテクニック」ニック・デイヴィス著、地人書館、2016年4月、ISBN978-4-8052-0899-1、2800円+税


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【萩野哲 20161026】【公開用】
●「カッコウの托卵」ニック・デイヴィス著、地人書館

 本書は、反母性愛の象徴とも思われていたカッコウの非常に興味深い習性である「托卵」について、これ以上にないと思われるほど詳細に記述されている。まず、歴史的にだれがこのような不思議な修正を解き明かしていったのか? アリストテレスは既に托卵を知っており、種痘で有名なジェンナーもその解明に卓越した貢献をしたことなどが語られている。托卵の真実については、本物のカッコウを知らず、都会の駅で偽物の鳴き声を聞かされている者としては、それほど深く考えたことはなかったが、どのようなタイミングでどのような順序で托卵するのか? 宿主はなぜ偽の卵を見破れないのか、なぜ容貌のことなる雛を育てるのか? などなど、実に様々な疑問があり、解決したものもそうでないものも、著者は詳しく解説してくれる。そして、このような習性を持つカッコウはいかにも繁栄しそうだが実は減少している最近の事情についても触れている。このようなカッコウの托卵を解明していった人間の努力もすごい!!

 お薦め度:★★★★  対象:とにかく面白いから、誰でも読んで損はない
【西本由佳 20161023】
●「カッコウの托卵」ニック・デイヴィス著、地人書館

 生まれたばかりのカッコウの雛が「巣の縁へ上がり、最後に羽を一振りして卵を巣の外に押し出す。その様子をタヒバリの母親は無関心に眺めている」。そして、「カッコウの雛は、いまや重さがヨーロッパヨシキリの八倍ある。餌をやるために、かくも怪物じみた雛の背にとまらなければならない親は、明らかに、何か間違っていると気づくべきだ」。どうやら鳥は、一部の模様のパターンや鳴き声といった信号を頼りに生きていて、世界を人間と同じようには見ていないことがわかってくる。カッコウはその信号をたくみに利用して、宿主をだます。自分をタカに見せかけ、宿主からの攻撃をかわしたり、卵を似せたり、自分より小さな宿主から自分の体に見合った食料をせしめたりする。宿主の側もやられてばかりではなく、カッコウの目撃や卵の似具合などからカッコウに托卵されている危険性を判断し、排斥しようとする。しかしそこには、自分のではない雛にまるひとシーズンを費やす危険性の一方で、自分の子を誤って排斥する危険性がある。それをはかりにかける経済学が、カッコウの托卵を可能にしているようだ。わたしは托卵という行為を好きではないが、野外を中心とした調査の描写や、托卵あるいは進化といった事象は、それを忘れるくらい魅力的だった。

 お薦め度:★★★★  対象:野外で鳥を見るのが好きな人
【和田岳 20161028】
●「カッコウの托卵」ニック・デイヴィス著、地人書館

 著者は、教科書も書いている行動生態学の大先生。その先生の30年に及ぶ研究成果を、研究最前線と合わせて紹介。というと堅苦しそうだけど、そこは英国紳士。数百年におよぶナチュラルヒストリーの伝統を背景に、アリストテレスから20世紀初めまで、さまざま人がカッコウについて述べた内容を交えて、托卵の仕方の紹介からはじまって、格調高くカッコウが紹介されていく。
 カッコウごとに寄主が分かれていて、それぞれの卵に卵を似せている。小鳥の卵の模様は、托卵対策? 卵は見分けるのにヒナは見分けない! カッコウの雛が仮親から餌をたくさんもらうためのテクニック。と、面白い話題が盛りだくさん。
 最新の研究成果が、100年も前の先人に正確に予見されていたりと、英国ナチュラルヒストリーの底力も垣間見せてくれる。

 お薦め度:★★★★  対象:カッコウの托卵に興味があれば、あるいは鳥類研究の一端を知りたければ
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