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本の紹介「地磁気逆転と「チバニアン」」

「地磁気逆転と「チバニアン」 地球の磁場は、なぜ逆転するのか」菅沼悠介著、講談社ブルーバックス、2020年3月、ISBN978-4-06-519243-6、1100円+税

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【中条武司 20200826】【公開用】
●「地磁気逆転と「チバニアン」」菅沼悠介著、講談社ブルーバックス

 はじめて日本初の名前が地質時代に刻まれる「チバニアン」。「チバニアン」の時代を決めるには、地磁気の逆転が地層に残されている必要があった。「チバニアン」申請チームの中心人物であった著者が、地磁気とその逆転を主軸として、「チバニアン」が決定した経緯を語る。地磁気が反転する理由は未だ十分にわかったとは言えないけれど、地質の記録から地磁気が逆転する時にはどのようなことが起こるのか、どのような過程を経て逆転するのかは大分明らかになってきた様子。そして、近代になっての観測以来、ずっと減少してきている地磁気強度は、次の地磁気逆転につながるのか。とはいえ、全7章のうち、「チバニアン」申請に関する部分は第7章だけ。「チバニアン」を期待して買った人には物足りないかも。

 お薦め度:★★★  対象:地磁気で何がわかるのという人
【西村寿雄 20200619】
●「地磁気逆転と「チバニアン」」菅沼悠介著、講談社ブルーバックス

 「チバニアン」とは、千葉県にある中期更新世の地層名です。この地層が国際的な標準地層名として認定されるまで日本の地質学者が奮闘した記録が出てきます。初めは、「地磁気の話」、「地磁気逆転の発見」、「変動する地磁気」などの話があって「地磁気逆転のなぞは解けるのか」といよいよ本題に入っていきます。日本の地質学者は、千葉県の川原に出ている厚い海底の地層に以前から目を付けていました。この地層にある物質の分析やミランコビッチの気候変動、間に挟まっている火山灰のジルコン粒の分析、地磁気の変動記録などから、この千葉の地層が「前期―中期更新世境界の模試地」として国際的に認められました。それでの研究過程がくわしく語られています。

 お薦め度:★★★  対象:「チバニアン」認定までの道のりをくわしく知りたい人
【萩野哲 20200708】
●「地磁気逆転と「チバニアン」」菅沼悠介著、講談社ブルーバックス

 地球は大きな磁石である。どうして磁石になるのか?難しいけれど、外核の対流が原動力になっているらしいし、現在でも完全に解明されてもいないらしい。しかも、過去の溶岩に記録された残留磁化の測定結果により、地磁気は何回も逆転していたことが分かっている。逆転などが起こった正確な年代を測定するためには、@地磁気逆転が記録されており、Aミランコビッチ理論に基づく年代決定が可能であり、B火山灰を含む地層の存在が必要不可欠らしいが、松山-ブルン境界について、まさに千葉セクションがこれにピッタリと該当し、紆余曲折を経て、この時代を代表するGSSP(国際境界模式層断面とポイント)として認定されるに至った。これが地磁気逆転とチバニアンとの関係だ。…逆転が起こった時、生物にどのような影響があるのか、個人的にはとても気になる。地磁気を頼りに渡りをする鳥たちはどうなるのか?頻繁に起こった逆転でその都度、生物の大絶滅が起こった証拠はない。しかし、例えば、ネアンデルタール人の絶滅時期と一致する逆転もあったようで、彼らが紫外線に対して感受性が高かったのではとの推測もあるようだ。

 お薦め度:★★★  対象:地学に対する興味をさらに深く掘り下げたい人
【森住奈穂 20200827】
●「地磁気逆転と「チバニアン」」菅沼悠介著、講談社ブルーバックス

 著者は「チバニアン」誕生に向けての研究を取りまとめ、申請する論文執筆責任者を務めた。ただし本書のメインは地磁気。一般読者向けと謳っているだけあって、磁石の発見に始まる歴史から最新技術や研究トピックまで説明してくれていて、理解しやすくとても読みやすい。過去何度も繰り返された地磁気逆転。現代は地磁気の強さが低下し続けている傾向とのこと。果たしてこれは前兆なのか。過去10万年間でもっとも地磁気強度が低い時期だったとされる約4万1000年前のラシャン・エクスカーションではオゾン層が破壊され、結果紫外線濃度が急激に増加、ネアンデルタール人が絶滅した理由ともされる。地磁気逆転はいったい私たちの世界にどのような影響を及ぼすのだろう。興味は尽きない。

 お薦め度:★★★★  対象:ダイナミックな地球科学史に触れてみたいひと
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