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本の紹介「地下世界をめぐる冒険」
「地下世界をめぐる冒険 闇に隠された人類史」ウィル・ハント著、亜紀書房、2020年8月、ISBN978-4-7505-1659-2、2200円+税
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【六車恭子 20210423】【公開用】
●「地下世界をめぐる冒険」ウィル・ハント著、亜紀書房
「じぶんたちには見えないもの、目が届かないもの、探知できないものの虜になった人々」達への溢れるような愛と讃歌がぎっしり詰まった一冊。
地下世界は我々人間は異邦人だ。そこを洞窟とよび、はたまた‘’薄明帯‘’‘’暗帯‘’とも名づけられる。そこは自然の幽霊屋敷であり、人間にとって恐怖の貯蔵庫だ。著者は秋庭俊の「帝都東京、隠された地下網の秘密」という文庫本に心酔し、ここにそのオマ一ジュとして闇に隠された人類史を書き上げた。マニアの青年が書き上げた地下の暗闇の中で失われた記憶がゴロゴロ音をたてて覚醒させてくれる。過去の人々が遥か彼方から送信し続けている信号を受信できる感性を呼び戻す。「私たちは神なるもの、神秘なもの、曖昧なものに触れるために暗闇にはいってゆく」
人間と地下との関係を生命起源からたどり、古代の記憶を甦らせ、柔になった私たちに鉄槌を落としてくれる快作。
お薦め度:★★★★ 対象:日常にトキメキを必要としている方
【中条武司 20210624】
●「地下世界をめぐる冒険」ウィル・ハント著、亜紀書房
世の中には一定数、地下のトンネルや暗闇に引き寄せられる人がいるそうだ。著者もその一人で、最初はニューヨークの地下トンネル、そしてパリの地下納骨堂、カッパドキア、レッドオーカーを掘るアボリジニの鉱山、石器時代の人類が洞窟に描いた壁画やレリーフなどなどをさまよい歩く。そこでの体験は、宗教的なのか超自然的なのかはわからないけど、確かにある種の人を引きつけるのだろう。村上春樹の小説でやたらとトンネルや井戸が出てくるのもそうだろう。自然史の本かと言われればちょっと悩ましいけど、かといってどんなジャンルの本か と問われれば返答に困る。タイトルにある人類史の本ともちょっと違うような気もする。
お薦め度:★★★ 対象:穴とかに入るのが好きな人
【森住奈穂 20210422】
●「地下世界をめぐる冒険」ウィル・ハント著、亜紀書房
「じぶんたちには見えないもの、目が届かないもの、探知できないものの虜になった人々」達への溢れるような愛と讃歌がぎっしり詰まった一冊。
都市探検家というものがいるらしい。ニューヨークの廃棄された地下鉄駅、下水道、放置された防空壕、パリの地下納骨堂。本書には廃墟マニアの要素も持ちつつ、地下に潜って真っ暗闇のなかで味わう五感の感覚(と、有毒ガスを吸い込んだり、迷って出られなくなるという危険を冒す感覚)に病みつきになっている人たちが登場する。もちろん著者もそのひとり。その精神世界はどんどん深みに落ちてゆき、人類が太古より神や精霊のような存在と交信してきた「場」としての地下(洞窟)へと潜ってゆく。第3章では地球深部に住む微生物が生命の源として描かれている。だから人は潜りたくなるって?私にはわからない。だけど「人はみな、心に洞窟を持っている」と言われれば、思い当たるフシがあるような、無いような。
お薦め度:★★★ 対象:ジェットコースターが好きな人(はこの感覚が好きなのかも)
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