物理学用語や数式の並ぶ‘地学の教科書’のイメージを一新する著作。どのページにも、その内容に沿った現場の地形写真が掲載され、地学の専門用語もおそらく可能な限り解説されている。‘地形を見る目’を養うために必要な事象をひとつづつ、まるで世界を旅しながら学んでゆけるような感覚が、楽しい。
お薦め度:★★★ 対象:地学好きな人ひろく一般
豊富な白黒写真とイラストで、さまざまな地形の見方を紹介してくれる本。「知るほどに、地球表面はバイオコントロール下にあるとの思いが強まっている」とあとがきに書かれているが、石灰藻が岩盤表面に付着しているために、激しい波が打ち寄せても軟岩のベンチが破壊されずに保存されていることなど、思いがけない着眼点を教えてくれる。ヨシの根が絡み合って出来た蘆州の防波構造など、風景をただ風景として見るだけでなく自然界の仕組みとして語れることの魅力が伝わってくる。砂山を使った実験は、子ども時代の「理科する喜び」を彷彿とさせてくれる。
文章の書き方や各章の事例をどう関連づけて読ませるかなど、もっと工夫してほしい本だが、視野を広げるのに役立つ1冊と言えよう。
お薦め度:★★ 対象:自然観察をはじめたい人
これが地形だと表紙のグランドキャニオンの写真が言っている様に感じた。
地球が誕生して以来、地殻変動そしてロックコントロール、デブリコントロールそしてバイオコントロールによってつくり出された地形の数々を見せてもらった。
「地形を見る目」は、秀麗な富士山もデブリコントロール斜面の集合体である岩粉と岩屑の山として見ることになった。
お薦め度:★★ 対象:フィールドを楽しむ人に
様々な地形がどのようなことに支配されてできているか、「ロックコントロール」「デブリコントロール」「バイオコントロール」の視点から、具体的な事例(富士山やグランドキャニオン、鬼の洗濯板など)を出しながらその地形の成因を紹介している。また、各部分に砂山を使った実験を示して実際の地形と比較しているが、これが非常に納得しやすい。「崖があるだけでは滝はできない」「テトラポットは海岸を浸食する」「カタツムリが泥をつくる」などなど、目からうろこな事柄もいっぱい。山や川・海に行ったときに地形を見る目が変わるはず。
ただし、私の思う大きな問題点が3つ。1.地形用語は比較的丁寧に説明しているにも関わらず、それに関連にした地質用語の説明が不十分。三重会合点、アイソスタシーなど。特に後者は内容に関係するだけに、もう少し説明を。2.「〜を明らかにしよう」「〜の理解を深めよう」などと締めくくっている文章が多いのだけど、それ以下がまったくない。読者に自分で勉強(研究)しろと言ってるのか、まだ研究途上なのか。私も含め素人にはわからない。3.2とも関係するが、日本語が読みにくい部分がある。
これらの問題点とは別に、間違いが一点。文中に「水深が増せば岸を打つ波も高くなる」(P.74)とありますが、これは明らかに間違い。波の高さは風速、吹走距離、吹走時間などに主に関係しており、水深とはほとんど関係ありません(まったくないわけではない)。また岸に立つ波は、砕波するまでは水深が浅いほど高くなる。正しくは、湖が広くなる→吹走距離・時間が長くなる→波が高くなる→底が浸食される→水深が増す、です。というわけで、あえて辛口評価。
お薦め度:★★ 対象:地形がどのようにできるか興味のある人.高校生以上
地形の成り立ちを、ロックコントロール、デブリコントロール、バイオコントロールの三つの見方と、比較と時間の二つの目で見抜こう!という本。海外と日本の地形が大量に紹介され、その成り立ちが紹介される。
地形の種類やその成り立ちに関する知識は仕入れられるが、岩石や地質に関する知識に乏しい者には意味不明な部分が多い。他の本で地形学や地質学などについての勉強してから読んだ方がよさそう。
お薦め度:★★ 対象:地形学や地質学の知識を備えた大学生以上、又は地形についての蘊蓄を蓄積したい人