友の会読書サークルBooks
本の紹介「知性はどこに生まれるか」
「知性はどこに生まれるか ダーウィンとアフォーダンス」佐々木正人著、講談社現代新書、1996年12月、ISBN4-06-149335-3、680円+税
【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。
[トップページ][本の紹介][会合の記録]
【西川裕子 20030928】【公開用】
●「知性はどこに生まれるか」佐々木正人著、講談社現代新書
「歩く」には足という歩けるシステムと同時に 固い地面という歩ける状態が必要であり、これら2つの要因によって「歩く」という行動は規定されている。
この、行動と環境の複雑な相互作用が「アフォーダンス」である。
ダーウィンは多くの観察をもとに理論では説明できない生物の生活を垣間見ていた。 この本は言う。ダーウィンの見たものこそが、アフォーダンスで成立している
ありのままの世界なのだ、と。
アフォーダンスはとても面白い視点だと思う。 この本で取り上げているダーウィンの観察と、 結びつける必然性はあまり無いような気もするが、
色々な分野で使うと新しい視野が広がるのではないだろうか。
お薦め度:★★★ 対象:ダイナミックに物事を捉えたい人間向き
【金井一史 20030928】
●「知性はどこに生まれるか」佐々木正人著、講談社現代新書
歩く為には何が必要なのでしょうか? 多くの方はこう問われると首をかしげるこ とだと思います。ここでの答えは「地面」です。この本では、環境(前例の地面)が
あるからこそ、様々な行動(歩く)が生まれるというスタンスで書かれています。
もし、周囲の状況が変われば全ての行動は変わってきます。寒ければ人は無意識に 服の襟元を引き締めます。これを行った理由、寒い外の空気が入ってきたら嫌だから
襟口を狭くしよう、と考えて行動する人はまずいないでしょう。この様な行動が生き 物全般に言えることであると、様々な観察例を参照して説明してくれています。これ
によってある程度、常識に疑問符が付くのかもしれません。
お薦め度:★★ 対象:新しいこと好きな方
【瀧端真理子 20030607】
●「知性はどこに生まれるか」佐々木正人著、講談社現代新書
ギブソンは、アフォーダンスを「環境が動物に提供するもの、用意したり備えたりするもの」と定義した。動物の行為はアフォーダンスを利用することで可能になり、アフォーダンスを利用することで進化してきた、と考えるのである。ギブソンは、地面や床への定位・視る・聴く・味わい嗅ぐ・接触の5つの知覚のための身体組織について考察した。例えば、手に持ったはさみで紙の固さを知るように、接触のシステムは皮膚という境界をこえて、毛やつめや道具の先まで広がっている。人間の皮膚と環境との境界は、その輪郭が不明瞭である。
生きものに起こる変化は他のものとの複雑な関係の織物の中で起こる。筆者は本書では、ダーウィンの知見をアフォーダンス理論に結び付けて説明している。ダーウィンは植物の幼根の動きを観察し、根はオリジナルな旋回と、接触をさけること、の二つの動きを複合させた結果、地中のもっとも接触の弱いところ、やわらかいところに押し入っていくことになる、と考えた。例えば、モグラはトンネルを探しているわけではない。モグラは掘りながら、土の中に潜在している「やわらかさのつながり」を発見している。植物にも動物にもあるはじまりの「ありのままの運動」、そしてその後たどらざるを得ない変化の運命。
アフォーダンスは、個体が知覚することでありながら、個体の群れにとってのリアルであり、個体を「越えている」。本書は「主観的―客観的の二分法の範囲を越えている」アフォーダンス理論の入門書である。
お薦め度:★★★ 対象:あたらしいものの考え方に興味のある人
【六車恭子 20030622】
●「知性はどこに生まれるか」佐々木正人著、講談社現代新書
著者はかってジェームス・ギブソン(1904〜1976)によって提唱された世界のとらまえ方、新しい認知の理論として「アフォーダンス理論」を21世紀にあらゆるジャンルを越えて花開かせようとしているギブソニアンの第一人者である。
「アフォーダンス」とはafford(与える、提供する)、affordance(環境が動物に提供するもの、用意したり備えたりするもの)から由来する。この世に生まれて動物も植物も等しくある「ブルート・ファクツ(ありのままの運動)」、すなわち「はじまり」が「まわり」に出会って一刻も絶えることなく「変化」していく過程にあるのだ。「生きものに起こる変化は他のものとの複雑な関係の織物の中で起こる」のだ。それは長い時間をかけて探し当てた発見の道筋でもある。
この理論がダーウィンの「変化をともなう由来」から深く啓示を得たことが「珊瑚礁」の章や「ミミズ」や「モグラ」の生態に鮮やかに解き明かされており興味深い。
お薦め度:★★★ 対象:当たり前の世界からダンスは始ることを予感しているアーティストたちに
【和田岳 20030821】
●「知性はどこに生まれるか」佐々木正人著、講談社現代新書
ジェームス・ギブソンが提唱したアフォーダンス理論を、著者の理解というフィルターを通じて紹介した本。アフォーダンスとは、「環境が動物に提供するもの」。動物は環境を利用して生活しており、同じ環境でも動物によって違う意味があるということになる。動物の立場から環境を見直してみようという主張に近い。心理学分野での話のためか、知覚の問題がくわしく紹介される。タイトルにある知性の問題はあまりふれられない。
お薦め度:★★ 対象:“新しい心理学”に興味のある人
[トップページ][本の紹介][会合の記録]