友の会読書サークルBooks

本の紹介「地底 地球深部探求の歴史」

「地底 地球深部探求の歴史」デイビッド・ホワイトハウス著、築地書館、2015年12月、ISBN978-4-8067-1505-4、2700円+税

【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。
[トップページ][本の紹介][会合の記録]

【森住奈穂 20190620】【公開用】
●「地底 地球深部探求の歴史」デイビッド・ホワイトハウス著、築地書館

 地球内部はどうなっているのか?どのようなところなのか?ジュール・ヴェルヌの『地底旅行』から150年。本書は科学をナビゲーターにした現代の地底旅行の趣きで、著者は天文学者でもある。そのためただ地底に潜って行くのではなく、惑星誕生から地球の最後までが同時に描かれていて、壮大な物語となっている。足下にありながら人間がたどり着くことのできぬ場所、地底。そこは遠い宇宙とつながっている。鉱脈や火山、地震などによって細々と垣間見えるのみだった地底に、科学は少しずつ近づき始めた。地球深部の圧力を再現できる高圧発生装置(ピーナッツバターがダイアモンドに!)や地震観測ネットワークが大活躍している。液体鉄?町ほどの幅がある単体の結晶?核は本当に不思議だし、地磁気の謎も深まる。何よりいま、私たちが存在していることが奇跡に思える!地底だけに奥が深い。おあとがよろしいようで。

 お薦め度:★★★  対象:地球に人類未踏の地は残っていないと思っているひと
【中条武司 20190828】
●「地底 地球深部探求の歴史」デイビッド・ホワイトハウス著、築地書館

 ジュール・ヴェルヌの「地底旅行」の感化された著者が、現在の科学的知識を元に実際に地底旅行ができればという目線で、地球の深部に潜っていく。実際に地球を掘る、地震や核実験までを使って地球内部を探る、地球の内部を知るために地球外の隕石を調べるなんて、何ともワクワクする内容。液体の内核の粘性ってほとんどなくてさらさらって初めて知った。触れないけど触りたい。
 しかし、図や写真が少ないのはどうにかならなかったのか。図が十分にあれば中学生でも読むことができる内容になっただろうに、とても残念。

 お薦め度:★★★  対象:宇宙よりも到達できない場所に興味のある人
【西村寿雄 20190618】
●「地底 地球深部探求の歴史」デイビッド・ホワイトハウス著、築地書館

 ジュール・ヴェルヌの『地底旅行』を引き合いに出しながら、現代版〈地底旅行〉を試みた一冊。地球内部の謎解きに取り組む地球科学者の研究成果を取り入れながら地球内部の姿を読み物風に描いている。地球内部の研究には、皮肉にも巨大地震が支えになっている。現代版〈地底旅行〉の圧巻は何といっても外核と内核の姿だ。外核は液体鉄とニッケルが渦巻く世界で地磁気を引き起こしている場所で、その地磁気のおかげで私たちも無事に生きておられる。ここでは地磁気を研究してきた科学者の話もくわしい。転じて内核は超高圧の固体世界で鉄原子の結晶構造の謎解きも書かれている。内核と外核の境界には鉄の結晶が樹枝状に成長する〈結晶の森〉があるという。どんな世界だろうか。地球の最期まで予測して〈物語〉は終わっている。

 お薦め度:★★★★  対象:現代版<地底旅行>を楽しみたい人
【萩野哲 20190619】
●「地底 地球深部探求の歴史」デイビッド・ホワイトハウス著、築地書館

 副題に「地球深部探求の歴史」とあるように、地球の内部がどのような構造なのか、古い過去から最新の成果まで様々な研究結果を紹介しながら解説されている。地球の表面から地殻、上部マントル、下部マントル、外核、内核と約6000kmのお話である。地殻や上部マントルのお話の本は多いが、本書では下部マントル、外核および内核に力点が置かれているようだ。これらの構造の解明に巨大地震の“貢献”が大きい。そして未解決の問題も残されている。天文学者である著者がこの本を書いた動機もそこにあったのだろう。他の惑星などとの比較から、地球のユニークさをあらためて感じることができる。
 ジュール・ベルヌはじめ、地球内部が空洞であるとの説が多数あったのも興味深い。文章も平易そうで、翻訳もよいのだろう。ただ、16ページもの口絵があるにはあるが、本文中に一切の図表を欠くため、内容の理解を難しくしているように思う 。

 お薦め度:★★★  対象:地球の内部構造およびそれらの探求の歴史をいろんな角度から知りたい人
[トップページ][本の紹介][会合の記録]