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本の紹介「地球を突き動かす超巨大火山」
「地球を突き動かす超巨大火山 新しい「地球学」入門」佐野貴司著、講談社ブルーバックス、2015年7月、ISBN978-4-06-257925-4、900円+税
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【萩野哲 20151224】【公開用】
●「地球を突き動かす超巨大火山」佐野貴司著、講談社ブルーバックス
100以上の火山がある日本では毎年どこかで火山の噴火が起きており、大きなニュースとなっている。でも、遠い昔にはそれらをはるかに凌ぐ、地球規模でのマントル大循環由来の超巨大な火山がいくつ(108?)もあったことがわかってきた。本書では、まずマントルは液体ではなく溶解したマグマはごく一部であることをおさらいし、そのマグマができる場所は@中央海嶺、A沈み込み帯およびBホットスポットの3つであることが丁寧に解説されている。しかし、Aの説明は複雑、難解、わからん!? ああ自分には地学系はついていけんと認識されるに至った(わかる人にはわかると思います)。そして、肝心の超巨大火山(=大規模火成区、LIP)の成因は?実はまだよくわかっていないんだって!? なあーんだ。
お薦め度:★★ 対象:地学系大好きな人、あるいは未解決の科学的課題の研究課程が好きな人
【中条武司 20151223】
●「地球を突き動かす超巨大火山」佐野貴司著、講談社ブルーバックス
日本の面積以上の巨大な火山が深海底やインドやシベリア、エチオピアなどに分布している。近年、その巨大さと分布している場所ゆえに謎に包まれていた超巨大火山(LIP)の実態が徐々に明らかになってきている。火山の成因論だけでなく、マントルプルームの上昇と大陸分裂、生物の大量絶滅など、地球の歴史の大きな事件とLIPとの関わりが小さくないようだ。日本にもあるみかぶ帯がLIPの残骸だとは知らなかった。
と、あらすじを述べるととても壮大な話のようだが、読んでいてわくわく感に欠けるのは何でだろうか。全編の1/4を占めるマグマ成因論の話はここまでいるのかなあと思うし、科学的に壮大なトピックでもさらっと流されていることも多い。船上や僻地での調査の苦労やおもしろさも書かれていない。切り口を変えればもっとおもしろい本になると思うのに。
お薦め度:★★ 対象:巨大火山にロマンを感じる人
【西村寿雄 20151217】
●「地球を突き動かす超巨大火山」佐野貴司著、講談社ブルーバックス
壮大な地球火山の話である。大断層帯や構造線、プレート移動をも取り込む大地球システム論が展開されている。著者の論によると、日本列島全体を取り込むような広範囲な〈超巨大火山〉の跡が世界で44も見つかっているという。日本近海のシャッキー海台、南シナ海のオントンジャワ海台やインドのデカン高原などが地図で紹介されている。いずれも膨大な溶岩を噴出し、海底火山や地上火山を形つくってきた。LIPと呼ばれている地下の大規模なマグマの動きは、かつてウェゲナーが唱えた大陸移動や、大陸の離合集散のもとにもなっているという。著者はさらに論をすすめ、かつての生物大量絶滅の原因も、この超巨大火山噴火による噴出物によるのではと予測し、隕石衝突説に疑問を投じる。地球研究の醍醐味が伝わってくる。
お薦め度:★★★ 対象:地球科学に関心のある人
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