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本の紹介「調査されるという迷惑」
「調査されるという迷惑 フィールドに出る前に読んでおく本」宮本常一・安渓遊地著、みずのわ出版、2008年4月、ISBN978-4-944173-54-9、1000円+税
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【和田岳 20081226】【公開用】
●「調査されるという迷惑」宮本常一・安渓遊地著、みずのわ出版
偉そうにやってきては、好き勝手に振る舞い、あげくは勝手に物を持ち帰って返さない。研究者の中には、こんな非常識な奴がいるらしい。こうした研究者の振る舞いによって、地域が受ける迷惑を宮本常一は調査地被害と名付けた。宮本に敬意を払いつつ、安渓が調査地被害の実情や、自らの調査地、西表島の人々とのつきあいを語った一冊。
人を人と思わない言動に問題があるのは当たり前ではある。が、どんなに注意しても、調査自体が地元の人に迷惑を与える事はある。どう折り合えばいいのかは難しい問題だが、少なくとも意識しておく必要はある。生物学の研究をする場合でも、単なる自然観察であっても、フィールドに出る前には読んでおいた方がいいかもしれない。
お薦め度:★★★ 対象:アウトドア派の人なら誰でも
【高田みちよ 20090127】
●「調査されるという迷惑」宮本常一・安渓遊地著、みずのわ出版
調査、フィールド、と聞くと生き物調査しか思い浮かびませんでしたが、この場合の調査は人文系。田舎や離島の暮らし、風習など民俗的なことをその地域の人に聞き取ったり、古い書物を借りたりする調査が中心らしい。調査に来る「学者さん」が偉そうに上から目線で、土地の人を追及するように聞き取りをしたり、借りて帰った文献を返さなかったり、調査結果を報告しなかったり、ということが横行しているらしい。
事例を読むと、確かにそうゆうことは往々にして起こってそうだなぁ、ということが書き連ねてあるが、それは「調査」そのものがどうこうという問題ではなく、調査するほうの常識や倫理の問題なんじゃないか?と思う。
お薦め度:★★ 対象:他人とのお付き合いに気をつけないといけない人
【瀧端真理子 20081225】
●「調査されるという迷惑」宮本常一・安渓遊地著、みずのわ出版
フィールド・ワークに出る前に学んでおくべきテキストとして編まれたブックレット。宮本による「調査地被害−される側のさまざまな迷惑」(1972)を巻頭に再録、続いて安渓が、(文化)人類学の立場から調査倫理について、自己の体験と思いを綴っている。
「誰しも体はひとつしかないし、人生は一回きり。とても、それだけの責任がとれない場合があることをよく自覚して、簡単には『濃いかかわり』の側に踏み切らないぞ、と自分に言い聞かせておくくらいでちょうどいいのです」という安渓の言葉は、フィールド・ワークの心得を端的に語っている。さて、お礼状書かなきゃ・・・。
お薦め度:★★★ 対象:これからフィールド・ワークを学ぶ人のために
【中条武司 20081223】
●「調査されるという迷惑」宮本常一・安渓遊地著、みずのわ出版
宮本氏からフィールドワークの教えを受けた安渓氏が、自身のフィールドワークにおける地元の人との関わりを清濁含め述べている。そして、私たちはフィールドでどのように地元の人と関わらなければならないのかを問いかけている。
フィールドワークをするものとして、自分はこれまで何かを地元にしてきたのか、研究成果の還元とはどういうことか。その答えは簡単には出ないが、とりあえず自分のこれまでの無責任さに暗鬱たる気分になる。
お薦め度:★★★ 対象:自分が住む地域以外の人と話す機会のある人
【六車恭子 20090227】
●「調査されるという迷惑」宮本常一・安渓遊地著、みずのわ出版
「地域の文化や暮らしの智恵を学ぶために、実際に地域に出かけ、地元の方々を先生として地域を教科書に五感のすべてを駆使して学ぶフィールド・ワーク」の極意を伝える本が出た。いやむしろ調査者の覚悟を促す本と言えるかもしれない。世に調査報告書は数知れず、調査データが生かされることがありうるのか、そのことを再調査したことが世に出ることも稀である。戦前戦後の日本を行脚して失われた日本をその著にとどめた「歩く巨人」宮本常一の晩年の思いを直接継いだ著者ならではの苦渋と汗の結晶のような地元の声がぎっしり詰まっているのだ。フィールドで学んだことを実践することはおそらく著者のように、はみ出していくスタイルを生きることになるのだろう。仕事も私生活も一生懸命!をにじませた本である。
お薦め度:★★★ 対象:フィールドワーカーを自認するすべての人々
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