友の会読書サークルBooks

本の紹介「ダーウィン以来」

「ダーウィン以来 進化論への招待」スティーヴン・ジェイ・グールド著、ハヤカワ文庫、1995年9月、ISBN978-4-15-050196-9、800円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。

[トップページ][本の紹介][会合の記録]


【六車恭子 20090424】【公開用】
●「ダーウィン以来」スティーヴン・ジェイ・グールド著、ハヤカワ文庫

 まずこのエッセイがアメリカ自然史博物館の広報誌に1973年4月号から掲載されはじめ、2001年1月号まで連載する野望を持ってはじめられたことへの驚きである。ダーウィンが生涯をかけて進化する世界について名づけた”this view of life"の探求へのもう一つのオマージュであり、30代の若きグールドが自身の自然観・科学観・人間観を繰り出して進化生物学者の今を表出した挑戦の集積ともとれる。
 ダーウィンが20年もの間「進化論」を封印した理由をピーグル号乗船時のフィッツロイ船長との確執から推理する手際は、作家顔負けのスリルに富み、彼の含蓄の深さ慎み深さに脱帽した次第です。古生物学への傾倒が彼の内なる領野を押しひろげたのか、単なる科学的知見の留まらず人々の視野に限りない広がりを与えてくれるエキサイティングな書である。

 お薦め度:★★★★  対象:科学本は苦手という人にも

【太田行二 20090508】
●「ダーウィン以来」スティーヴン・ジェイ・グールド著、ハヤカワ文庫

 著者は、基本的にダーウインの進化論と自然淘汰は正しいと言う。ただし、梯子を登るように、良い方向にだけ進化が続くのではなく、退化も含めて、全ての方向に変異が起こっていて、そして、自然淘汰が進化の方向を決めていると説く。更に、この本には、様々な生物学上の謎の解説が続く。例えば、カンブリア期以前には、原核性細胞のバクテリアと藍藻類という、内部構造が無いと思われている生物が、20億年以上も進化もしないままに存在していたのに、カンブリア期の初期の1000万年〜2000万年に真核性細胞が現れ、多様化して、現在につながる種が爆発的に出現している。このカンブリア期の爆発も、「ジグオイド曲線の指数関数的な部分でしかない」と解説する。同様に、様々なことが大陸移動説だけで説明できる話や、刈り込みの原理など、実に面白い話が続く。私は、続編の「パンダの親指」も読みたいと思った。

 お薦め度:★★★★  対象:生物が大好きな人

【和田岳 20081030】
●「ダーウィン以来」スティーヴン・ジェイ・グールド著、ハヤカワ文庫

 グールドは、「ナチュラル・ヒストリー・マガジン」に延々と進化にまつわるエッセイを連載し、それがまとめられてたくさんの本が出版されているが、その最初の本が本書。ダーウィンが大好きで、人種差別に反対し、社会生物学に苦言を呈してみせる。そんなグールド節が満載の一冊。ちょっととっつきにくいけど、進化理論とそれに関わる人間たちのいろんな側面を知ることができる。

 お薦め度:★★★  対象:グールドファン、あるいは進化に興味のある人

[トップページ][本の紹介][会合の記録]