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本の紹介「DEEP LIFE 海底下生命圏」
「DEEP LIFE 海底下生命圏 生命存在の限界はどこにあるのか」稲垣史生著、講談社ブルーバックス、2023年5月、ISBN978-4-06-531933-8、1100円+税
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【中条武司 20231015】【公開用】
●「DEEP LIFE 海底下生命圏」稲垣史生著、講談社ブルーバックス
表に暮らす私たちにとっては、地面の下の生き物といえばミミズやモグラなどせいぜい地下1mまでに暮らす生き物のこと。しかし、本書の扱う地下生命圏とは地下数百メートル、場合によっては地下数キロまでおよぶ。内容は副題にあるように「生命存在の限界はどこにあるのか」をテーマに進んでいく。地下に暮らす生物の栄養源は、暮らす隙間はあるのか、どこまで熱には耐えられるのかなど、調べるべきことは山とあるし、その結論はまだまだでていない。一方で、数千万年休眠状態で、かつプレートの沈み込みでやがて朽ちゆく状態にあるものを「生命の活動」うんぬんで語っていいのかと思ったり、どれだけの確率でその生命が再活動できるのかなどとも思ったり。生命の限界とは何ぞやと哲学的な?問いが思い浮かぶのである。
お薦め度:★★★ 対象:「生命の限界とは」に興味のある人
【里井敬 20231026】
●「DEEP LIFE 海底下生命圏」稲垣史生著、講談社ブルーバックス
海底下では深さ1200〜1500m・温度範囲は40℃〜50℃。そのあたりから急激に細胞密度が低下する。海底の有機物も酸素もわずかしか存在しない所で、好気性微生物が余計なものにエネルギーを使わずに1億年以上も生命機能を維持し続けている。
室戸沖の海底下の調査では、水深4776mの海底面の温度は1.7℃。海底下190〜400m・30〜50℃の区間では深くなると好冷菌や常温菌の細胞密度は徐々に低くなる。それより深い所は好熱菌の世界になり、1021〜1180m・110〜120℃では細胞数が増加する。海底下1200mより深い所の微生物は得られるエネルギーのほぼ全てを細胞機能の修復とバイオマスの維持に費やしている。
地球の海洋堆積物の最大87.1%は生命が居住可能な領域である。海底下の微生物はバクテリアが優勢と考えられていたが、アーキア(古細菌)が地球全体では37.3%になる。
全生物の共通の祖先からバクテリア(細菌)とアーキアが分岐し、その後アーキアから真核生物に分岐し、ある環境下でミトコンドリアの祖先となるようなバクテリアの細胞を取り込んだと考えられる。
お薦め度:★★★ 対象:極限条件に棲む生命に興味のある人
【萩野哲 20230801】
●「DEEP LIFE 海底下生命圏」稲垣史生著、講談社ブルーバックス
かつて高温(または低温)、高圧かつエネルギー源のない条件で到底生存できないと思われていた海底下にも生命がいる。著者は海底下に暮らす微生物たちは「長期生存のスペシャリストたち」、「表層世界に匹敵する多様性を持つ」という。生態応答や代謝機能にユニークな性質を持ち、今後元素循環など様々な分野にその長生きの秘訣が応用できる時が来るかもしれない。しかし別の角度から見ると、個人的には理解不足ながら、ただ単に過酷な環境に耐性がある生物たちが(思ったより多様であったものの)、カラッカラの状態で何とか異化作用を駆使して長期間生き残っていただけであるように感じた。もしそうなら、分裂の機会もない生物に進化なんかあるのだろうか?著者たち研究者は機器や分析法の技術的な能力の向上により、単に限界ハビタブルゾーンを更新したに過ぎず、もし同様のレベルで表層世界を調べたら、多様性や潜在能力では限界生物は到底敵わないのではないだろうか?などと妄想してしまう。著者曰く、ロマンがなくなるとおしまいなんだけど。
お薦め度:★★★ 対象:極限生物に関心がある人
【和田岳 20230817】
●「DEEP LIFE 海底下生命圏」稲垣史生著、講談社ブルーバックス
海底の地下には広大な生命圏がある。海底下の生命圏の存在は、1950年代から知られていたが、1990年代以降、国家レベルでも注目されるようになり、2000年代以降、日本も参入。地球深部探査船「ちきゅう」などを擁する日本は、世界的にも最先端の成果をあげてきている。著者は、その日本の地球微生物学研究に初期から参加してきた一人。
2002年の世界初の海底下生命圏掘削調査にはじまり、2016年までの数回の生命圏掘削調査が順に紹介され、次々と新たな事実が明らかになっていく。わくわくする展開なのだけど、ろくに説明されない専門用語が頻出して、けっこう難しい。そして、根本的なナゾは、すべて解かれないまま。マントルにも生命はいるのかな? どうやって繁殖してるんだろう?
お薦め度:★★★ 対象:海底の下にも生命がいるってことを知らない人、海底下生命圏の研究の最深状況を知りたい人
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