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本の紹介「ダイナソー・ブルース」
「ダイナソー・ブルース 恐竜絶滅の謎と科学者たちの戦い」尾上哲治著、閑人堂、2020年2月、ISBN978-4-910149-00-4、2400円+税
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【中条武司 20200624】【公開用】
●「ダイナソー・ブルース」尾上哲治著、閑人堂
2010年「サイエンス」誌に発表された天体衝突による恐竜絶滅の総説、これをもって恐竜絶滅の謎に関する論争はほぼ決着を見たと思われた。が、まだまだわからない点、矛盾点が残されており、それに対する正解は得られていない。天体衝突説が発表された1980年頃から現在にいたる恐竜絶滅に関する説を一つ一つ丁寧に紹介し、それに関わる研究者たちの論争・政治・生きざま・栄光と没落が書かれていく。そして現在になってよみがえる火山噴火説、まさにミステリーのようなどんでん返しが最後まで読み手を飽きさせない。恐竜絶滅に関する様々な説を知ると同時に、科学における人間くさいドラマも楽しめる好著。しかし、自説を通すために様々な論争を仕掛ける大物研究者って怖いなあ。
お薦め度:★★★★ 対象:恐竜絶滅の謎に関わる科学者の戦いに胸躍る人
【萩野哲 20200601】
●「ダイナソー・ブルース」尾上哲治著、閑人堂
恐竜絶滅の謎はほぼすべての人にとって非常に興味深いだろう。しかし、もはや解決済みと思っていたこの謎はどうも、未だに論争中ということらしい。本書は、この謎解きを目指してきた科学者たちの物語である。攻撃的なルイス・アルヴァレス、決して自説を曲げないケラー、可哀想なマクリーン・・・。ハイエタス、シニョール・リップス効果、ストレンジラブ・オーシャン(『博士の異常な愛情』を見といてよかった)などの用語は本書を読んで知ることができた収穫だ。自説を強く主張する科学者たちも結構見落としている(あるいは実力不足の)事象が多々あるみたいだ。ブラインド・テストで被験者によって真逆の結果が出たりする。なぜ魚類は恐竜などといっしょに絶滅しなかったのかなどの疑問も残っている。何の分野でも多くの謎がある。まだ幕引きの時ではない。
お薦め度:★★★★ 対象:恐竜絶滅の謎をより深く知りたい人
【六車恭子 20200828】
●「ダイナソー・ブルース」尾上哲治著、閑人堂
恐竜絶滅の謎は少年たちの夢を掻き立てる。その謎に果敢に挑んだ科学者たちの熱と力がぎっしり詰まった一冊だ。
各学会で発表されるその論文は確かなアイデアと検証に裏付けられたものでなければならない。ここにはその都度書き換えられ、更なる精度をましたアイデアが踊り出す。リングの無い戦場なのだろう。
恐竜絶滅の謎にせまる最適地はヘリクリ一ク層だ。白亜紀の地層は氾濫源堆積物からなる。天体衝突による「イゼクタ一層」だ。この謎に挑み続けた科学者たちの成功と失墜の歴史がかたられる。
K/pg境界の天体衝突説を唯一証明したガナパシ一、それにいち早く目をつけていたルイス、ウォルタ一・アルバレス父子、チチュルブ衝突仮説から導き出したピータ一・シュルテら41名による天体衝突宣言総説が2010年に出されて決着をみる。世界は戦いの連続の集積ですこしづつ真実を獲得していくのだろうか。マットに沈んだ人にもこうして語られることで慰謝が与えられるのだろう。
お薦め度:★★★★ 対象:この地球を愛するすべての人
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