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本の紹介「ドングリの木はなぜイモムシ、ケムシだらけなのか?」
「ドングリの木はなぜイモムシ、ケムシだらけなのか?」寺本憲之著、サンライズ出版、2008年11月、ISBN978-4-88325-374-6、1800円+税
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【和田岳 20090227】【公開用】
●「ドングリの木はなぜイモムシ、ケムシだらけなのか?」寺本憲之著、サンライズ出版
ドングリの木にはものすごく多くの種類のガの幼虫がつくらしい。日本で記録されている約6000種のガの約1割もが、ドングリの木につくらしい。こう聞くと、ドングリの林に行くのをためらう人も多いんじゃなかろうか。ケムシ嫌いにはインパクトの大きな話題だが、異食性種分化というガの進化の話になれば、少しは冷静に読み進めることができるだろう。
ドングリの木とケムシの関係に興味のない人には、第1章と第2章がお勧め。滋賀県を中心に養蚕業の歴史が紹介され、カイコ(家蚕)とヤママユ(天蚕)についても詳しい。タイトルにひかれて本を手に取った者にとっては、あまり興味がないのだけれど…。
お薦め度:★★ 対象:ドングリの好きな人
【加納康嗣 20081024】
●「ドングリの木はなぜイモムシ、ケムシだらけなのか?」寺本憲之著、サンライズ出版
鱗翅目昆虫とブナ科植物の密接な関係を多食性の天蚕の観察を通じて解き明かしていく。グラフ等が煩雑でわかりにくく、最初の約3分の1は滋賀県長浜地方の養蚕業や天蚕業の歴史が語られる。滋賀県の地理学は本の題名と違和感がありなじみにくい。テーマが絞られていないことが読者には倦怠感を与える。ただし、鱗翅目昆虫やブナ科に関心のあるものには昆虫の進化を知る上で良いテキストである。
お薦め度:★★ 対象:昆虫と植物との関係に関心のある方
【萩野哲 20090224】
●「ドングリの木はなぜイモムシ、ケムシだらけなのか?」寺本憲之著、サンライズ出版
著者は餌(ドングリの木=ブナ科植物の葉)をめぐって天蚕と競合する虫たちの調査を通じてその種類の多さに気付き、なぜ?という疑問をいだいた。昆虫の食性には1種または1属の植物だけを食べる単食性や、相互に類縁関係のない多くの属の植物を食べる多食性のものがある。著者はブナ科植物を食べる鱗翅目の食性を精査した上で、単食性と多食性のどちらが有利か考察し、このような食性の違いを昆虫の種分化の大きな要因と位置付け、多食性から単食性への進化が起こった(異食性種分化)と推定するに至った。大変興味深い内容であるが、もしそうなら、近縁の植物を餌とする近縁の昆虫の例は多いのだろうか?別の群の植物に食性が転換する時は別の機構が働くのだろうか?等々疑問は尽きない。
お薦め度:★★★ 対象:進化への興味が尽きない人
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