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本の紹介「どうしてもダムなんですか?」
「どうしてもダムなんですか? 淀川流域委員会奮闘記」古谷桂信著、岩波書店、2009年11月、ISBN978-4-00-024147-2、1700円+税
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【和田岳 20100423】【公開用】
●「どうしてもダムなんですか?」古谷桂信著、岩波書店
淀川流域委員会というのは、国が(実際には国土交通省が)設置して委員会だが、河川整備のあり方に本当に学識経験者や地域住民の意見を反映させようとした画期的なもんだったらしい。当初、国土交通省側として淀川流域委員会の設置・運営に人力していた主人公は、やがて本省の反感をかって異動させられる。公務員を退職して、一市民として再び流域委員会に戻ってきて、委員長として国土交通省に立ち向かう主人公。意のままにならない委員会に圧力をかける国家権力。質問に対してもはぐらかすばかりで都合の悪いデータを出さない役人。委員にまぎれこんでいる御用学者。それに論理で立ち向かう主人公。支える仲間達。ちょっとありきたりの設定だが、まるでドラマのよう。
役人の中にも心ある人はいる。どうしようもない御用学者もいる。市民・研究者vs役人という図式は正しくない。でもまあ、どうしようもない役人もまた少なからずいるのである。そんなとき心ある市民はどう行動すべきか? いろいろ考えさせてくれる。
お薦め度:★★★★ 対象:ダム問題や河川管理の問題に関心のある人、あるいは社会派ドラマのファン
【中条武司 20100421】
●「どうしてもダムなんですか?」古谷桂信著、岩波書店
1997年に改正した河川法に基づき、学識経験者や地域住民を含めて作られた淀川流域委員会。歴代の委員や関係者への取材を基に、その活動や理念、訴えをまとめたルポタージュ。無理なスケジュールや難題を押しつける国側。それに抵抗し、熱心に議論し、闘っていく委員会。川と流域をどう考えるかという点で、歩み寄らない両者に深い溝を感じてしまう。
もっとも、本書の中で高橋裕氏が述べているように委員の分野や地域に偏りがあった委員会であった点と、理由はどうあれほとんど片方(委員会)の言い分しか聞いていないことは留意すべきであろう。
一つ言えるのは、この本を読んだ後だと、特別展の後援から淀川河川事務所を外したくなるのはどうしたものか。
お薦め度:★★★ 対象:河川と流域の施策を考える人たちに
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