友の会読書サークルBooks

本の紹介「富士山はいつ噴火するのか?」

「富士山はいつ噴火するのか? 火山のしくみとその不思議」萬年一剛著、ちくまプリマー新書、2022年7月、ISBN978-4-480-68432-5、840円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。
[トップページ][本の紹介][会合の記録]

【中条武司 20221015】【公開用】
●「富士山はいつ噴火するのか?」萬年一剛著、ちくまプリマー新書

 富士山の噴火を扱った本は多く、その中には過度に恐怖や危機感を煽ったりするものも少なくない。著者の萬年氏は、神奈川県で箱根火山の観測や噴火予測の業務に携わりながら、近年公表された富士山のハザードマップ作りにも関わった方である。実際に富士山をはじめとする火山防災に関わっている著者だからか、一般的な噴火のプロセスや噴火予測、シミュレーションなどについて多くの紙面が割かれる。実際に具体的な富士山の話が出るのは全6章のうち後半の2章分だけ。それでも読みやすい文章で、火山噴火のプロセスがよくわかる。ししおどし、5歳児の気まぐれ、ネコパンチといった火山噴火とは関係なさそうなモデルを使って噴火間隔について語ったり、マスコミと出版社の食いつき方の違いから防災意識について愚痴ったり?と結構何でもありな感じで進みながらも、最後はきちんと富士山(火山)の防災について述べている。

 お薦め度:★★★★  対象:火山噴火予測や火山防災について知りたい人
【西村寿雄 20221011】
●「富士山はいつ噴火するのか?」萬年一剛著、ちくまプリマー新書

 富士山は日本の他の火山と違って伊豆-小笠原弧が本州に衝突して出来た火山で玄武岩質の火山だ。富士山噴火はしばしば東南海地震と関連ずけられるが、あまり関連はないらしい。富士山噴火については昔から人々に注目されていて竹取物語などにも関連した記述があり〈不死の薬を燃やした山〉から「ふじの山」と名付けられたとか。さて、表題にもある富士山の次の噴火はいつなのか、マグマの満杯の時と説く。それが、著者独自のダイヤグラムから2330年頃と予想している。後半は噴火による現代社会での被害についてくわしく書かかれている。全体にまどろっこしい面もあるが読みやすい。

 お薦め度:★★★  対象:富士山噴火が気になる人
【萩野哲 20221008】
●「富士山はいつ噴火するのか?」萬年一剛著、ちくまプリマー新書

 富士山はいつ噴火するのか、というタイトルに対応する回答は第4章に記されている。階段ダイアグラムで、要因が複雑になるほど予測が難しいことがわかる。第5章は主にハザードマップの話。今後富士山は中央火口より側火口から噴火すると考えられており、それらを入力したシミュレーションの結果ではかなりの広範囲に溶岩が流れるらしい。過剰見積もりかな?との記述もあるが、事後に“想定外だった”なんて聞きたくない。もし今富士山が噴火したら、あらゆる交通手段がマヒし、物流が滞り、直ちに店頭から物が消えるだろう。飲料水も確保できないだろう。避難も難しいかもしれない。大規模降灰に対する備蓄、スローライフなど、社会基盤に頼らない余裕を持つことが必要であろう。

 お薦め度:★★★  対象:富士山に限らず、防災を真剣に考えたい人
【和田岳 20221016】
●「富士山はいつ噴火するのか?」萬年一剛著、ちくまプリマー新書

 火山研究者が、火山について解説し、噴火予測の難しさを言い訳し、ハザードマップをどう考えるかを紹介し、火山灰の問題に警鐘を鳴らす。
 最初に2章は基礎知識。火山の大きさなどを通じて、富士山の特別さが判る構成。第3章では富士山の過去の噴火の様子が語られ、第4章で、いよいよ富士山はいつ噴火するのかの話。予測のベースは、階段ダイアグラム。ししおどしの例えが判りやすい。まあ予測できるのは、2330年までになんらかの噴火がありそう、ってところまでなんだけど。正確にいつ噴火するかは予測できないから、もし噴火した時の対策を考えておこう、という流れでハザードマップと火山灰対策の話。
 数式は使わず、グラフは時間軸に対する隆起量・噴火量などのダイアグラムのみ。あとは図と文章で、やさしく解説してくれる。門外漢にも、とても読みやすい。

 お薦め度:★★★  対象:近所の火山の噴火が気になる人
[トップページ][本の紹介][会合の記録]