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本の紹介「牛乳とタマゴの科学」
「牛乳とタマゴの科学 完全栄養食品の秘密」酒井仙吉著、講談社ブルーバックス、2013年5月、ISBN978-4-06-257814-1、900円+税
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【岩坪幸子 20140106】
●「牛乳とタマゴの科学」酒井仙吉著、講談社ブルーバックス
「完全栄養食品の秘密」という副題がこの本のすべてを語っています。牛乳とタマゴが何故完全栄養食品と呼ばれるに至ったのか、牛と鶏が家畜とされるまでの歴史やその後の人間の知恵と執念で改良を重ね、乳牛は祖先の10倍の乳を出すようになり、鶏は実に50倍のタマゴを生むようになったいきさつが細かく科学的に語られています。
特に鶏は本来の就巣性を失くされ子育てを忘れたことでタマゴを量産するようになったということには驚かされました。コンピューターによって改良が限界まで進み、経済効率のみを求めた結果、本来の姿からはかけ離れ無理がBSEを生み、生産鶏と飼料を米国に頼らざるを得ない状況になった現在、著者は乳牛と鶏の未来を危惧しています。見慣れないややこしい栄養成分がいっぱい出てきますが、我慢して読み進めるとだんだん分かるようになります。
お薦め度:★★★ 対象:食に関心のある人、酪農に興味のある人
【村山涼二 20140213】
●「牛乳とタマゴの科学」酒井仙吉著、講談社ブルーバックス
牛乳と卵は必須アミノ酸、カルシウムなど量・質共に含まれた正に完全栄養食品であることを、科学的に詳細に分かりやすく述べている。牛と鶏の、牛乳と卵の生産能力は、それぞれの祖先の、牛乳では10倍、卵では50倍に人間の努力で高められている.牛乳では初乳と常乳の成分の違い(初乳は、タンパク質・カゼイン(カルシウム・リン)免疫グロブリンが多い)、卵ではそれ自身が雛の食べ物として、生物としての巧妙な仕組みを持って居ることに感心する.卵の詳細な図解があり、洗はなければ無菌である、鈍端に気孔があるから鈍端を上に置くと良い、新鮮な卵の見分け方(気室の大きさ、比重、卵黄の動きやすさ、卵黄卵白の弾力性)など、実用的なことも科学的に示している。白い卵と赤い卵、有精卵と無精卵は栄養的に変わりない、毎日卵を食べても、コレステロールや健康に差がない、など誤った俗説も正している。
お薦め度:★★★★ 対象:牛乳を飲み卵を食べるすべての人
【和田岳 20140215】
●「牛乳とタマゴの科学」酒井仙吉著、講談社ブルーバックス
著者は、獣医系の研究者で、専門は動物育種繁殖学、研究テーマは、泌乳の開始と維持、停止機構を分子レベルで解明すること、らしい。そんな著者が、牛乳と卵について、飼育の歴史、生産の仕組み、栄養素、蘊蓄を語った一冊。
牛乳では、カゼインの働き、初乳の役割、生産量の変化。卵では、効率よく産卵させるためのニワトリの飼い方、卵が生まれる生理的メカニズム、卵の細かい構造。などなど興味深い内容も多いのだけど、気付いた限りでは、進化・分類や野生動物の行動に関わる部分には、控えめにいっても不正確な記述がしばしば混じっている。気付いていないけど、他の部分にも同様の不正確さが混じってる可能性が高いと判断せざるを得ない。とくに著者の直接の専門でない部分は怪しい。となると、普及書としては、どうかなぁ、と思う。
お薦め度:★ 対象:他人がいい加減なことを書いていても、ちゃんと見破って、その中から意味のある情報を抽出できる
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