【萩野哲 20180809】【公開用】
●「蜂と蟻に刺されてみた」ジャスティン・O・シュミット著、白揚社
著者は昆虫毒の科学的性質の専門家であり、その責任の一環?か、あらゆる刺針昆虫に積極的に刺されている。第1〜5章では、彼女らはなぜ刺すようになったか、痛い成分は何かといった、刺針昆虫のバックグラウンド知識が解説されている。第6〜11章では主要な刺針昆虫の生活と著者の関わりが語られる。そして最後に付録として、「毒針をもつ昆虫に刺されたときの痛さ一覧」が付いている。痛さの最高レベルは「4」。この表の何よりも興味深いのは「刺されたときの感じ」の表現で、例えば、“うっかり落とした銀のスプーンが、足の親指の爪を直撃し、跳び上がってしまったときくらいの痛さ”という感じで、これらのような表現の面白さがイグ・ノーベル賞受賞の主要因になったに違いない。不幸にして何かの虫に刺された場合は思い出そう。
お薦め度:★★★★ 対象:蜂などに刺されるのはまっぴらだが、刺されたらどんな感じか知りたい人
【和田岳 20180817】
●「蜂と蟻に刺されてみた」ジャスティン・O・シュミット著、白揚社
タイトルを見たら、アリやハチに刺されて喜ぶ変なおっさんの話かと思うけど、さにあらず。刺針を持った昆虫(ハチやアリの一部)を、刺された時の痛さを切り口に、その生態や進化を真面目に紹介した本。
単なる産卵管だったものが、狩りや防御に使う刺針に変わっていったこと。社会性昆虫の進化には、その変化が不可欠であったという著者の仮説。刺された時の痛みを評価する「シュミット指数」を作った経過などが紹介された後、いろんなハチやアリに刺されたときの事が、その生態や刺された時のエピソードとともに紹介される。日本で話題になっているヒアリなんて全然小物。昆虫最強の毒を誇るシュウカクアリ、痛くてのたうち回るオオベッコウバチ、そして、一番痛いサシハリアリ。
近縁な種でも、社会性の種に刺されると痛くて、単独性の種に刺されてもあまり痛くない。という仮説を身をもって実験している様子は、真面目な研究なんだろうけど、やっぱり変なおっさんかも。
お薦め度:★★★ 対象:ハチやヒアリに刺されたら死んじゃうかも!と、びびってる人