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本の紹介「ハダカデバネズミ」
「ハダカデバネズミ 女王・兵隊・ふとん係」吉田重人・岡ノ谷一夫著、岩波科学ライブラリー、2008年11月、ISBN978-4-00-007491-9、1500円+税
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【加納康嗣 20081024】【公開用】
●「ハダカデバネズミ」吉田重人・岡ノ谷一夫著、岩波科学ライブラリー
ヤマアラシやカピバラ、モルモットの遠い親戚で、出っ歯、皺くちゃの裸、アフリカ(ケニア、エチオピア、ソマリア)の地下トンネルで暮らす真社会性のネズミ、奇妙奇天烈な珍獣である。40年近く生きる女王もネズミとしては常識はずれ。女王に交尾を強制される2−3頭の王様、トンネルに侵入する唯一の天敵ヘビに身を捧げる兵隊デバ、食料集め・トンネル掘り・子どもの敷き布団を勤める働きデバと、4階級制があり、個体間にも序列がある。さらに複雑な音声信号を持っているとは驚きである。音声コミュニケーションを多用するデバの脳の聴覚構造の研究を通じて、ヒトの言語進化の一端を解き明かすべく、今研究が行われている。好奇心をそそられて、一気に読み進む。
お薦め度:★★★★ 対象:動物が大好きな人
【萩野哲 20081223】
●「ハダカデバネズミ」吉田重人・岡ノ谷一夫著、岩波科学ライブラリー
「何ちゅうキモイやっちゃ」と、最初その存在を知ったときに思った。が、本書が発刊されたと知り、怖いもの見たさと変な動物好きのため、買ってしまった。変な動物という意味では、“デバ”は際立っている。哺乳類のくせに真社会性で、女王の君臨する群に数頭の王と多数の兵隊および働きデバが従い、総延長数キロメートルの地下道を掘って生活している。働きデバの中には“肉ブトン係り”もいる。そして、何よりも複雑な音声コミュニケーションをとっており、著者の関心もここにある。岩波書店のHPでその声を聴くことができるが、著者でもまだ1回しか聴いていないデバの歌は「キモイ」最初の印象を十分に払拭するものである。
お薦め度:★★★ 対象:変な動物が好きな人
【和田岳 20090226】
●「ハダカデバネズミ」吉田重人・岡ノ谷一夫著、岩波科学ライブラリー
ハダカデバネズミという変わった名前の変わった動物を紹介した本。同時に、ハダカデバネズミに取り付かれた変わった研究室の変わった研究者たちを紹介した本でもある。
ハダカデバネズミは、真社会性の哺乳類として、その筋では古くからよく知られていたが、その実態を日本語で詳しく紹介したのは、この本がはじめて。驚くほど長生きで、布団係など不思議なカーストを持つデバたち。そう、著者たちはハダカデバネズミを、愛情を込めてデバと呼ぶのだ。変な人達。
デバを日本へ連れてくる経緯、飼育のこぼれ話と、エピソードが満載。真社会性を持ち、ヴォーカルコミュニケーションが発達しているハダカデバネズミ、という真面目な話に興味がなくても、デバで右往左往する研究者たちのエピソードだけで楽しい。一度、実物を見てみたいところ。そんなあなたには、公開している施設の紹介も載っている。
お薦め度:★★★★ 対象:へんないきものに興味のある人
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