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本の紹介「蠅たちの隠された生活」

「蠅たちの隠された生活」エリカ・マカリスター著、エクスナレッジ、2018年6月、ISBN978-4-7678-2493-2、1800円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
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【和田岳 20181026】【公開用】
●「蠅たちの隠された生活」エリカ・マカリスター著、エクスナレッジ

 大英自然史博物館の双翅目担当学芸員が、ハエやカやアブなど双翅目すべてへの愛を表明しまくる一冊。面白いネタが多く、思いつくままにどんどん投入される。そして、随所に双翅類への偏愛表明。
 第1章で幼虫の話をした後は、授粉者、分解者(ここでは植物遺体を食べる者)、糞食者、死肉食者、菜食者、菌食者、捕食者、寄生者、吸血者と、食性毎に双翅類を紹介していく。
 原油の池で暮らすセキユバエ、体長の8倍もの長さの口吻をもつツリアブモドキ、ウォンバットの糞だけを食べるトゲハネバエ科のwombat fly、オオヤスデの背に乗って移動してその糞を食べるフンコバエの一種、ノドアカハチドリをも捕食するムシヒキアブ、ラクダなど大型哺乳類の鼻腔で暮らすラクダヒツジバエ、ミツバチの体表にいて食べ物を横取りする(つまり労働寄生!)ミツバチシラミバエ等々。変わり者がいっぱい。
 チーズバエのウジにチーズを食べさせて作るカース・マルツゥ。それをウジ付きで喰うと、ハエ幼虫症にかかる恐れがあるとか。ウジが死肉を食べた時のあの臭いが体にいいから、わざわざ吸って療養するマゴットリウムとか。ヒツジバエの幼虫を自分のからだで1週間ほど飼ってみたけど、夜寝静まった時のムシャムシャ食べる音が気になって止めたとか。衝撃の話題もいろいろ。

 お薦め度:★★★★  対象:生物多様性に興味がある人
【萩野哲 20181017】
●「蠅たちの隠された生活」エリカ・マカリスター著、エクスナレッジ

 蠅や蚊などハエ目(=双翅目)に属する、一般の人々にはあまり好まれていないであろう昆虫にまつわる“楽しい”お話が、主に彼らの食物別に10章で構成されている。東アフリカではあらゆる洗濯物にアイロンをかけなければならないこと(p.54-55)や、カカオの受粉にヌカカの1種が必要なこと(p.59)も載っている。「クロバネキノコバエの翅のM1脈とM2脈がつくる曲線はなんとも魅力的」(p。206)、「誰もが好きにならずにはいられないC.emasculatorの愛くるしい顔」(p。256)など、著者のハエたちに対する愛情が全編に満ち溢れている。

 お薦め度:★★★  対象:虫好きの人、または虫好きになろうと真剣に考えている人
【森住奈穂 20181026】
●「蠅たちの隠された生活」エリカ・マカリスター著、エクスナレッジ

 著者は大英自然史博物館の双翅目のキュレーター。ハエをこよなく愛しており、のっけから注目(ひいては研究資金)が哺乳類や鳥類という動物界の花形に集中していることに憤っている。誰かに似てる?10章に分かれて紹介される魅力的なハエたち。石油を食べるセキユバエ。カカオの受粉を一手に担っているヌカカ。イエバエの顔の毛の1本1本が種を識別する基準になること。コウモリと共生し共同体が社会性に近い行動をするもの。シュモクザメさながらの眼柄をもつシュモクバエ。自らの体に寄生する線虫に虫こぶを作っもらうタマバエ。へえぇ〜の連続である。ユーモアを交えつつ、美しい写真や標本が次々と紹介されて、まるで博物館の展示ツアーに参加しているような気分になれる。

 お薦め度:★★★  対象:「ゾンビー」に参りました。この意味を知りたいひと
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