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本の紹介「葉っぱの不思議な力」

「葉っぱの不思議な力」鷲谷いづみ文・埴沙萠写真、山と渓谷社、2005年6月、ISBN4-635-06339-9、1600円+税


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【瀧端真理子 20051027】【公開用】
●「葉っぱの不思議な力」鷲谷いづみ文・埴沙萠写真、山と渓谷社

 プロの手による美しい植物写真の数々。気になる写真のキャプションを読んでみる。例えば、「逆らわずに耐える」。おなじみの、水遣りをさぼって枯れてしまったベゴニア。でも、捨てるのはちょっと待って。水をやって数日たつと、元気な姿を取り戻すんだって。使いきれない光を避けるには、葉をしおれさせてしまうのも、一案とのこと。
 こんなふうに、この本は初めから通読するのではなく、気になった写真→キャプション→本文、と読み進んでいくのがおすすめ。モジュールや、シュートなど、気になる説明が、素人にはわかりづらい。本文は参考書タッチ、あるいは園芸書のノリで書いてもらった方が使いやすそう。
 さりげなく挿入されている、サボテン・多肉植物の写真にうっとりしながら、コーヒーを飲もう。

 お薦め度:★★  対象:植物写真を楽しみたい人

【西村寿雄 20051213】
●「葉っぱの不思議な力」鷲谷いづみ文・埴沙萠写真、山と渓谷社

 植物をあくまでも動的な〈生き物〉としてとらえる鷲谷いずみさんの文章がおもしろい。的確な証拠となる埴さんの美しい写真が生きている。
 しょせん、葉っぱは〈光を求め有機物を作る工場〉である。美しい紅葉は「樹木それぞれの損得勘定のちがい」という。葉を落とすにはそれなりの〈役割〉をしてかららしい。葉っぱはまた、虫たちに食べられないための巧妙な〈戦略〉も持つ。葉っぱは意外と〈動的な生き物〉であることが実感させられる。

 お薦め度:★★★  対象:中学生以上

【六車恭子 20051027】
●「葉っぱの不思議な力」鷲谷いづみ文・埴沙萠写真、山と渓谷社

 「地球は葉っぱで生きている!」この帯文はいいえて妙だ。
 光を求め資源を巡る競争が今の植物の多様性を生み出した。限られた場所で光と向きあう戦術が彼らの姿型を練り上げたようだ。寒い冬はロゼッタ状に葉を拡げるもの、茎への投資をへらして他に寄り掛かって葉を広げるもの、上をめざし、あるいは横に拡がり、枝や葉のつけ方は成長した時の光環境を反映している。
 植物の作る毒を無毒化するスペシャリストが現れるかと思えば、傭兵を雇って撃退するものあり、生き延びるためのしのぎを削る戦場は不思議な力に満ちあふれている。コンパクトに纏められた各章と写真のコラヴォレイションが楽しめる。

 お薦め度:★★★  対象:葉っぱの不思議に気づき始めた高校生から

【村山涼二 20051023】
●「葉っぱの不思議な力」鷲谷いづみ文・埴沙萠写真、山と渓谷社

 生きもの(私たち人間も)すべてが、葉っぱの稼ぎ(光合成)で生きている。葉の形とつき方で、効果的に光を受ける。強すぎる光には、葉を光の来る方向に平行に傾けて弱くする(クズ)。厳しい環境に耐え、自然選択により生きる(コマクサ)。虫に食べられないための工夫。物理的(トゲ・毛)、化学的(毒)、花外密腺から密を出してアリを雇う。なかには、虫を食べるしたたか者(モウセンゴケ)も居る。役目を終えた葉っぱは、土壌動物・菌類・カビなどに分解され、又、葉っぱを育てる栄養となる。「葉っぱの不思議な力」を、判りやすい言葉と、美しい写真で教えてくれる。

 お薦め度:★★★★  対象:小学高学年から広く一般向き

【和田岳 20051026】
●「葉っぱの不思議な力」鷲谷いづみ文・埴沙萠写真、山と渓谷社

 タイトルからすると、植物の葉っぱの話ばかりと思うかもしれないが、実際は植物の形や生存戦略の話が広く取り上げられる。
 「1.植物の形とつくり」では、葉っぱだけでなく根や茎・幹を含めて、植物の形がどのように決まっているかを解説。形が決まるだけでなく、葉の向きを変えるなどして、葉で受ける光量を調節する話も出てくる。「2.植物の生存戦略」では、光量、乾燥、かく乱、食植性の昆虫や哺乳類などに対処すべく、植物が葉っぱや形をいかに変えて対処しているかが説明される。「3.葉っぱの観察」は、葉っぱの簡単な観察・実験ガイド。
 我々が目にする植物の形に、どのような意味があるのか、それを考えるきっかけを与えてくれる。写真もなかなか美しい。

 お薦め度:★★  対象:植物の形にどんな意味があるか知りたい人

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