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本の紹介「働かないアリに意義がある」

「働かないアリに意義がある」 長谷川英祐著、 メディアファクトリー新書、ISBN978-4-8401-3661-7、2010年12月、740円+税


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【和田岳 20120426】【公開用】
●「働かないアリに意義がある」 長谷川英祐著、 メディアファクトリー新書

 ビジネス書ばかり出ている新書。マスコミが喰い付きそうなタイトル。ライターが書いたいいかげんな本かと思いきや、一線の研究者が書いたアリの社会、昆虫の社会性の入門書。初歩から最新成果までを、ややこしい数式・グラフを使わずに紹介してくれる。
 アリの社会には、ある割合で働かないアリがいる。働かないアリといっても、働きたくても仕事にありつけない個体、最初から働く気のない個体。そういう個体がいると社会はどうなるのか。アリを使った個体と社会の研究は、意外なことに人間社会にも何かしら当てはまりそうで面白い。

 お薦め度:★★★  対象:個人・個体と社会の関係に興味のある人

【村山涼二 20120426】
●「働かないアリに意義がある」 長谷川英祐著、 メディアファクトリー新書

 真社会性生物(アリ、ハチ、シロアリ更にアブラムシ、ネズミ、エビ、カブトムシ、カビも真社会性生物と言われているが)に関する研究成果のやさしい解説である。アリやハチは複数の階級が協力して一つのコロニーを形成し、単独で暮らす生物にはない様々な複雑さを見せる。ハチやアリには司令塔はないにもかかわらず、コロニーは適当な労働力を必要な仕事に適切に振り向け、コロニー全体が必要とする仕事を見事に処理している。働き者と思われているアリ(人が勝手に思っているだけ?)の7割ほどが何もしていない。仕事が増えると働かないアリも働く様になる。ハチやアリには行動を起こすのに必要な刺激値の限界値「反応閾値」があり、コロニーのメンバーで「反応閾値」が違っていることが必要なときに必要な量のワーカーを動員できコロニーの維持存続に寄与している。群れのメリットやデメリットについても述べている。真社会性生物の働きを人間社会に例えた解説は理解の助けになる。

 お薦め度:★★★  対象:生物社会に関心ある方

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