友の会読書サークルBooks

本の紹介「深海問答」

「光る石 北海道石 新鉱物Hokkaidoiteはっけん記」田中陵二著、福音館書店たくさんのふしぎ2024年8月号、2024年8月、736円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。
[トップページ][本の紹介][会合の記録]

【冨永則子 20241024】【公開用】
●「光る石 北海道石」田中陵二著、福音館書店たくさんのふしぎ2024年8月号

 ウクライナやアメリカ、ロシアなど世界でも数か所でしか見つかっていないカルパチア石かもしれない石が北海道でみつかる。それを調べるうちに、カルパチア石とは違う石をみつけ、その石の正体をつきとめるために紫外線で光るオパールを調べると、その中に同じものを発見する。見つけた石が新鉱物であることを発表するまでの顛末記。
 鉱物の99%が無機物だが1%だけ炭素を含む有機鉱物がある。新鉱物として発見された石も、その1%にあたる有機鉱物だった。有機化学を専門にする著者が専門を活かし新鉱物であることを証明していく。子どもの頃からの石好きで、鉱物学や地質学の知識があるだけでなく、有機化学の専門家であるからこその新発見であった。あなたも余力があれば、二つの違う専門を学び、それを結びつけることで、それぞれの価値がより一層増すだろう。

 お薦め度:★★★  対象:新鉱物や新種発見に興味のある人に
【里井敬 20241024】
●「光る石 北海道石」田中陵二著、福音館書店たくさんのふしぎ2024年8月号

 北海道石(hokkaidouite)発見の物語です。石の種類は動物や植物に比べて、とても少ない。90種類ほどの元素の組み合わせでできているからだ。そんな無機物からできている石の中に有機鉱物を含む石が見つかった。そんなカルパチア石という。それと似た石が北海道でも見つかった。
 カルパチア石は紫外線を当てるとひかりだします。北海道で初めに見つかった石は僅かな量しかなかったので、その近くの紫外線で光る不思議なオパールを採取して調べた。オパールの産地で夜紫外線を当てると、さまざまな色に光り輝きました。研究室で調べてみると、カルパチア石とは異なる石であることが分かり、北海道石(hokkaidouite)と名付けました。北海道石の産地はアイヌ民族やヒグマに守られていましたが、多くの人が採りに行くとすぐなくなってしまうので、町が保護してくれることになりました。

 お薦め度:★★★  対象:石に興味がある人
【中条武司 20241024】
●「光る石 北海道石」田中陵二著、福音館書店たくさんのふしぎ2024年8月号

 今から1年ほど前にネットを賑わせた、紫外線を当てると七色に光るオパール。その中に含まれる新鉱物・北海道石の発見と命名されるまでが紹介されている。有機物(炭素)を含み、蛍光するめずらしいカルパチア石という鉱物があるという情報から分析がはじまり、その副産物として未知の鉱物(のちの北海道石)が見つかる顛末が紹介される。蛍光する鉱物の写真はきれいだけど、内容は「小学校3年生以上」にしては少し難しくないか?

 お薦め度:★★  対象:新鉱物の命名のストーリーを知りたい人、もしくは蛍光する鉱物の写真を見たい人
【西村寿雄 20241021】
●「光る石 北海道石」田中陵二著、福音館書店たくさんのふしぎ2024年8月号

 ブラックライト(紫外線の出るライト)を紙、プラスティックなどにあてると美しく光る。石でもブラックライトを当てると美しく光る石がある。ある石にはブラックライトを当てると光り出す鉱物がある。鉱物は普通無機質だが、地下の高温の中では炭素と水素で出来た有機物がわずかに含まれている鉱物もある。その鉱物を含んだ石は「カルパチア石」といわていてブラックライトに光る。分析技術の進んだ今、そうした有機物を含んだ石(新鉱物)が次々と発見されている。後半は、そうした新鉱物を含んだ「北海道石」を求めて、北海道愛別町まで見つけにいった話が中心になっている。

 お薦め度:★★★  対象:鉱物マニア
【西本由佳 20241021】
●「光る石 北海道石」田中陵二著、福音館書店たくさんのふしぎ2024年8月号

 2022年に新種の鉱物として報告された北海道石の発見記。森の奥で夜中に紫外線ライトをあてると、いろいろないろに光る岩肌。表紙にもなっている写真はきれいだけど、その場所で見る景色は格別だろう。幸いそこは国立公園で、文化財としても保護されることになった。北海道の自然の豊かさを感じさせてくれる本。

 お薦め度:★★★  対象:光る石を見てみたい人
【和田岳 20241024】
●「光る石 北海道石」田中陵二著、福音館書店たくさんのふしぎ2024年8月号

 著者は有機化学の研究者で、子どもの頃からの石好き。知り合いが紫外線を当てると光る石を見つけた。カルパチア石だ。というので分析したところ、カルパチア石と一緒に謎の光る石も発見。おそらく新鉱物。ということで研究に取り組む。  その鉱物のサンプルを増やすために北海道へ採集。新鉱物Hokkaidoiteとして記載。その出来方を考え、模式標本を博物館に入れ、お披露目して、産地の保存にも動く。鉱物の記載というものの流れがよく判る一冊になっている。  その後、日本各地に紫外線を当てると光る石があることが明らかになってきていて、今後研究を進めていくという宣言で締めくくり。蛍光を発する鉱物は、有機物を含んだ有機鉱物というものなんだそう。著者の専門にピッタリだったのは幸運だったのかも。  産地で、夜に紫外線をあてて撮影したという表紙画像が、びっくりするくらい美しい。

 お薦め度:★★★  対象:鉱物研究の一端を知りたい人
[トップページ][本の紹介][会合の記録]