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本の紹介「ヒト 異端のサルの1億年」

「ヒト 異端のサルの1億年」島泰三著、中公新書、2016年8月、ISBN978-4-12-102390-2、920円+税


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【萩野哲 20170609】【公開用】
●「ヒト 異端のサルの1億年」島泰三著、中公新書

 「ヒト」というタイトルになっているが、ヒトを説明するために霊長類全般についても要領よくまとめられている。ダーウィンの時代と違って、現在は霊長類の化石も多数発見されているし、地史的な理解も格段に進んでおり、定説まではいかないにしても、かなりもっともらしい説明ができる舞台が整っている。原猿類はレムリア大陸で進化してきたこと、チンパンジーは大変執念深いこと、オーストラロピテクスは骨食であったこと、巨大なハンドアックスはエレクトスがライオンと対峙するために発達したこと、ネアンデルタールからサピエンスになって脳が小さくなったのは農耕によること(環境世界の単純化と穀物食)、言語の起源はイヌとの共存によることなどなど、大変興味深い諸説が開陳されていて楽しい。

 お薦め度:★★★★  対象:霊長類およびヒトの進化に興味がある人


【和田岳 20170616】【公開用】
●「ヒト 異端のサルの1億年」島泰三著、中公新書

 著者はマダガスカルに通い、アイアイの研究で知られた霊長類学者。機会を見ては世界の類人猿に出会いに行った経験と、最新のヒトの進化についての研究成果をふまえつつ、類人猿とヒトの進化について独自の考えを開陳する。タイトルの1億年は霊長類の誕生からの時間だが、この本で扱われるのは、もっぱら類人猿進化の2000万年。
 ヒトの進化について紹介してくれる本は他にもあるが、類人猿の進化を紹介してくれる本はないので、勉強になる。初期人類の食性、二足歩行はどのように始まったのか、なぜヒトは毛のないサルなのか、言語の由来、どうしてヒトはアフリカから拡がったのか、ハンドアックスは何に使われたのか。さまざまな人類学上の大問題に対して、著者の考えが示される。既存の考え方をバッサバッサとぶった切るので、とても気持ちいい。が、あくまでも著者個人の見解であることをお忘れ無く。

 お薦め度:★★  対象:ヒトの進化についてのさまざまな意見に接したい人


【森住奈穂 20170616】
●「ヒト 異端のサルの1億年」島泰三著、中公新書

 序で著者は言う。「ここで描かれた類人猿やヒトに先行する人類の姿は、世の常識とはかけ離れたものかもしれない」。サルが生まれ、ヒトが誕生し、日本人になるまでの1億年の歴史がまとめられている。霊長類、さらに類人猿はアジア起源。アウストラロピテクスの直立二足歩行と特徴的な歯から導きだされるのは骨食。ネアンデルタールは「野生動物」であったため、氷河期を生き延びられなかった。突然変異で裸に生まれたホモ・サピエンスは、それまでの人類が見向きもしなかった魚や貝を食べることで生きのびられた。等々、ここまででもうお腹がいっぱい。最終章では言葉の起源までも語られる。刺激的な学説に入り混じる著者の主観。重い。ここはあえて気楽に、イエティはネアンデルタールの生き残りなのかな〜、など思い浮かべながら読みたいと思った。

 お薦め度:★★★  対象:刺激を求めているひと


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